東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続きベトナムのホーチミンからお送りしているんですけど、ちょっと駆け足で来てしまって、専門的な用語も乱発してしまったと二人で反省してたところなんですけど、この3回を振り返って、ベトナムのFMCG、まあ小売り市場をどうやって攻略していくかというところを抱えている方が、ベトナムに駐在している方はそうだと思うんですけど、その辺をわかりやすく、全体の市場から。
森辺:話がマニアックだよね(笑)
東:聞いてる人が分かるのかどうかって非常に重要ですから(笑)
森辺:やってる人は分かってくれると思うんだけど、話がマニアックでいかんなと思うんだけど。まあ、過去2、3回話してる内容は、ベトナム中心に、まあベトナムに限らずASEANの食品日用品関係の市場をどうやって獲得していくか、どうやったら勝てるんだというところがベースになってるわけですよね。我々は欧米の先進グローバル企業をさんざん調べ倒すわけじゃないですか。で、当然、日系企業の実態も調べた上で一番の大きな違いは、欧米は本社に戦略がある、日系は本社に戦略がない。欧米の本社の戦略ってどういうことかっていうと、100円、200円のものを売るっていう食品日用品のFMCGのアジアにおける商売は、いかに間口を増やすかということなわけで、導入期にさんざん彼らは間口を増やしてきたわけですよ。ですからアジアが成長している成長期に一気にアクセル踏むと、増やした間口が今度は縦に売上が伸びていくからマーケットシェアが高い。市場占有率が高いと。で、この間口っていうのは日本企業がついついフォーカスしがちな近代小売り、いわゆるMTっていうところじゃなくて、こんなところは1%も間口ないので、99%の間口を持っているGT、TTにどれだけ間口を増やすかということを先進グローバル企業は本国の本社が理解している。なので現地法人はその間口をいかに獲得するかということが、彼らの一番のミッション。間口をいかに失わないか。
東:そうすると、MT、GT、TT関係なく、フラットに見て間口数でカウントしなさいっていうことですかね。
森辺:MT、GT、TTとかはね、日本だとMTかTTかの二極論なんだけど、そんなこと言ってるのは日本企業だけで、欧米企業はそんなこと言ってないですよ。いかに間口を取るか。確かにMTの間口は1店舗あたりに売れる数は多いけれども、そもそもMTの数は市場の1%以下なので、MTだけに売ってたって儲からない。マーケットシェアは取れないっていうのをわかってるので、GT、TTを取るっていう戦略。
一方で日本企業は、とにかく導入期はMTでしょうと。そのまま箱作ってそこに駐在員送り込んで、死ぬ気で頑張れと。MTはとりあえず取るんですよ。ディストリビューター使うのか、自社でやるのかは別にして。でもそのあとのGT、TTのペネトレーションが進まない。そこで足踏みしちゃう。うまくいってる会社はGT、TTに駐在員が何年もかけて朝、車に乗って商品持って、GT、TTのおばちゃんにこれ置いてくれって何年もやってきたから市場が出来上がってる。けどそれは欧米企業に比べたらすごく属人的で、10年選手の駐在員がいない国ではその市場が作れていないわけなので。そうではなくて、それをいかに戦略的にディストリビューターを活用して網羅的に現地の人間を中心としてやっていくかっていうことが重要ですよっていう話なんですよね。
ものすごい難しいというか、単純なんですけど地道なんですよ。そんな話を延々としてきたという。だから、ひとつ僕がすごく大切だと思っているのは、この日用品食品の100円、200円の商売っていうのは、アジアではもう間口ですと。間口の数をとにかく最初の3年、導入期は増やすと。導入期に近代とか伝統とかそういう話じゃなくて、とにかく間口。で、間口を増やすって決めると、おのずとGT、TTいかないと増えないんで、そこをやっぱりやる。で、そこができたらテレビCMやってプロモーションやってもその効果が、間口が広い分、ROIが高いじゃないですか。だからそこにフォーカスしないと駄目で。
東:そうすると、間口を増やすというところをどうやってみるかっていうところが一番重要ですと。結局は間口っていうのは人口に比例しているわけですよね。フィリピンとかインドネシア見ても。
森辺:そうですね。フィリピンで7、80万間口。TTまで入れてね。ベトナムで50万間口とかって言われてますよね。インドネシアで250、260万間口って言われているので、インドは計測不能、みたいな。なのでこの間口を取っていくということですよね。で、製品戦略も当然あって、この間口を増やそうと思うと、当然GTとかTTの間口に入っていかないといけない。そうなった時に自分たちの製品がGT、TTのマーケットに合ってるのか合ってないのかってことも考えなきゃいけないんですよね。どう考えても合ってないんだとすると、そこは変えていかないといけなくて。食品日用品メーカーである限り、アジアに出るんだったら、一般大多数の人たちの購入接点となっているGT、TTの間口に合うものに変わっていけないんだったら意味ないじゃないですか。広がらないですよね。だからそこは非常に重要なんですよね。
東:じゃあそれが広がるか広がらないかっていうのをどの時点でどう判断するかみたいな話があると思うんですけど、それについてはどうですかね。
森辺:間口を広げるって1年、2年でできる話じゃなんですよ。3年、5年、10年かけて間口を広げていって、無限に間口はあるわけじゃないですか、数十万とか数百万とか。そうすると、労力と時間とお金がかかるわけですよね。そうすると、本当に間口に自分たちの商品が合ってるのか合ってないのかっていう勝算は7、2割は間口を広げる活動する前に確証を持たないと、むやみやたらに間口を広げてなんていけないですよね。
東:そうすると、戦略を立てる時点である程度、商品戦略まで含めて考えていかないといけないということですよね。
森辺:30年、40年前からネスレやユニリーバ、P&Gなんてね、シャンプーなんて使わない人にシャンプー使わせてきてるわけじゃないですか。チョコレートを一度も食べたことない人の口の中にチョコレート入れまくってきてるわけですよね。コーヒー飲まない文化のところにコーヒー根付かせてきてるわけで。彼らだってそれはやりきってるわけで、やっぱり数の原理で間口がそれだけ広がったら、飲むように変わっていくわけじゃないですか。だからそういう力は当然、計算には入れてると思うんですけどね。そこは早くからやってたっていう、まだ真っ白い状態だったから、最初のものっていうのは、とにかく今まで何もなかったわけだから手に取って口に入れるっていう先駆者メリットはありますよね。ただ今はアジアから物が溢れてきはじめているわけで、当然、製品戦略は事前にしっかり立てないと難しいっていうのはありますよね。
東:導入期っていうか参入する前に戦略を立てるとすると、間口戦略と商品戦略が合致してないといけないっていうことですよね。
森辺:そうそう。例えば分かりやすく言うと、間口に合わないものを作っている食品、例えば超高級食材みたいなものを売ってるような会社さんは、これはもう間口じゃないですよね。一つあたりの単価が100円、200円じゃなくて、1万円、2万円だとすると、もう間口戦略じゃなくてMT特化型の戦略に変わっていくわけじゃないですか。超富裕層戦略に変わっていくわけなんで、そこは違いますよね。すごく難しいところなんですけどね、それをやらずに出ちゃう会社が非常多いということですかね。
東:そしたら最後にまとめとして、今まで言ってきたことと少し重なる部分はあると思うんですけど、ベトナムの市場を取るためには、具体的にどういったことが重要かっていうのをまとめていただいて、終わりたいと思うんですけど。
森辺:ベトナムの市場を取るには、まあ他のアジアでも言えることなんですが、特にベトナムはMTの数が著しく少ないので、GT、TTの攻略が肝ですよと。つまりは間口を取る。これはASEAN戦略全体において言えることなんですけど、導入期でいかに間口数を増やして、成長期で一気にアクセルを踏んで、横に伸ばした間口を縦に売上立てるかということを全ての戦略の軸にしてもらえたら、そこに付帯して戦略がどうだ、ディストリビューション戦略がどうだということを全部そこをベースに考えられていくので、そこだけやってもらったらと思いますけどね。
東:分かりました。じゃあ、ちょっと分かりにくい部分もあったと思いますので、マニアックな部分もあったので、もし聴いてる方で分からないよ、という方はポッドキャストのメールアドレスがありますので、そちらまで。一応アナウンスしておくと、podcast@spydergrp.comまでお問い合わせいただければ、森辺が一生懸命返信しますので、ぜひお問い合わせください。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございます。