【特別対談】明治大学 経営学部 原田 将 教授と語る – ブランド価値経営とグローバル市場 その4
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この放送の要点
- 販売チャネルを担うディーラーの接客品質もブランド価値を左右する。
- レクサスは顧客の事情に寄り添う提案と長期的な関係を重視する。
- 従業員はブランドを深く理解し、顧客ごとに提案を調整する。
- 商品への誇りや自信を土台に、組織全体でブランド価値経営を続ける。
レクサスの接客とブランド価値経営について話す回です。原田将教授が、販売チャネルで顧客に寄り添う提案や長期的な関係を重視する姿勢を解説。従業員の理解と商品への誇りを土台に、組織全体で価値を高め続ける重要性を語ります。
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日も引き続き、今日で最後ですかね、明治大学の原田先生をお招きしてお話を伺っていきたいと思います。原田先生、どうぞよろしくお願いいたします。原田将先生(以下、原田):よろしくお願いします。
森辺:原田先生、すみません、前回盛り上がり過ぎて、私のこのPodcast番組史上最長の25分というとてつもない番組になって。これ、編集担当の人に怒られる。「アップロードできません、長過ぎて」って言われてしまうかもしれない。そしたら、ちょっと2個にカットになるかもしれませんけども。ありがとうございました。すみません、私が勝手に車の話で盛り上がってしまって。
先生、前回、レクサスの話、ちょっと最近、私、ソニー、トヨタ信者になってしまって、レクサスの解説をしたっていう話ちょっとしていたじゃないですか。あの辺の話をもう少し詳しく、ちょっとお聞きしたいなと思いますが、いかがでしょうか。
原田:ありがとうございます。私自身がブランド価値経営の研究の出発点が自動車産業だったんですよね。なので、自動車がやっぱり一生の中でだいたい平均6回買うらしいんですよね。やっぱり6回とも同じブランドであってほしいじゃないですか、企業側からすると。そういう中で、開発コストがどんどん上がっていると、電動化だとか、自動化だとか、安全装備とか。で、単価を上げたいと。でも、その単価に対する、要はブランドに価値が見合ってないとお客さんが選ばれないということで、まさに自動車が代表的なブランド価値を上げなきゃいけない産業じゃないのかなと思って調査している中で、レクサスは長年調査をしていたということもあって。先ほどの日経におけるNPSスコアが、レクサスがメルセデスを抜いて1位になりましたっていう記事を書いた方が私の論文を読んでくださって、私に解説を依頼してくださって、話をしたんですけども、レクサスのものづくりだとかプロダクトそのものが優れているということは当然なんですが、もう1つやっぱり重要だったのが、ディーラーにおける接客品質だったんですよね。
森辺:はいはい。すごいですよ、ディーラー。
原田:これは、1989年にレクサスがアメリカでブランドが立ち上がったときから変わらない哲学なんですけれども、高級車を買うような人たちを対象にした高級車の要件というのがあるんですよね。トヨタが調査した結果、分かったことがあるんですよね。例えば当時、89年ですと、V8で3,000cc以上であるということが高級車、アメリカ人にとって。そういう要件がある中で、1つが要はディーラーで特別扱いされることっていうのがあったと。つまり、ちゃんとお客さんの求めるものに対して、お客さんに寄り添ってパーソナライズ化したようなサービスを提供できることっていうのがやっぱり高級車ビジネスにおける重要な要件だということがあって。それを引き継いでいるので、もちろんレクサスにおけるディーラーにおける接客サービスというのは。
森辺:そういうことなんですね。
原田:やっぱり特別感というか、ちゃんとその人のパーソナルな問題に対応したような自動車の提案をすると。だから、神戸山手店だったかな、で調査したときに、例えばお客さんが来ましたと。「娘が車が欲しいと言ってるので買おうと思っている。こういう条件だけど、何かいいのがある?」って聞いたときに、もしレクサスとかトヨタにふさわしい車がなかったら、他のブランドでも紹介しますっていうことをおっしゃってたんですよね。つまり、その人にとってパーソナルな問題でベストな提案を、要はレクサスに来れば必ずしてくれるというお客さんの期待に応えたいということをおっしゃってて。これってなんかもう自分の車を売りたい以上の、要はレクサスの中における接客の哲学みたいなものがそういったところにあるんだなと思って。
森辺:なるほどね。ああ、そういうことね。はいはい。
原田:こういうのがずっと積み重なっていくと、例えば自分は今、子どもがいて、大きい車が必要だからと言って大きいSUVを買うと。でも、例えば子どもが巣立って、もう奧さんと2人だけだしってなったら、例えばもうちょっとコンパクトな、例えばスポーツカーにするだとか、ライフステージに合わせて、レクサスの中で選んでもらえるようになるためには、やっぱりそういうお客さんのことを考えた接客だとかっていうのがたぶん重要になってくるっていうかたちで。これもブランドブックとかでいろんなことが設定されてるみたいで。
森辺:そこまでやってるんだ。いや、実際にね、車のことで行くじゃないですか。
原田:はい。
森辺:買うときからもそうだったんですけど、めちゃめちゃ親切なんですよ。ちょっと語弊があるとあれなんですけど、車のディーラーさんの営業マンって結構なんかあれな感じだなって今まで思ってたんですよね。
原田:売れればいいとか。
森辺:うん。適当なことを言って、車屋と時計屋だけは信用ならんなって、不動産屋とみたいな。すみません、3業種の皆さん。そう思っていたんですよ。なんだけども、なんかちょっと宗教がかってるというか、めちゃめちゃ親身になるんですよね。何なんだろうと思ったんですけど、そういうことだったんですね、きっとね。
原田:ライフ・タイム・バリューの観点、要はビジネス的な観点からすると、要はライフ・タイム・バリューの観点で、要は6回購入するときに、できるだけ多くの回数、レクサスで買ってもらいたいと思ったら、例えば今はレクサス側からしたら、ビジネス的にはそんなにプラスじゃなかったとしても、必ず戻ってきてくれるだとか、そういうことを考えると、要は目先の利益というよりか、かなり長期的な視点でたぶん接客がされていると。
森辺:そうですよね。
原田:それを、レクサス・カレッジというのが富士にあるんですけれども、そこで職位ごとの研修があって、ディーラーの。しっかり、要は自動車についても知らないといけない。
森辺:はいはい。よく知っていますよ。
原田:めちゃめちゃ詳しくて、神戸のその担当の人は、当時ですよ、2015年ぐらいだったかな、私が調査に行ったときには、正直、安全技術に関してはレクサスはメルセデスを追いかけてますと、でも、レクサスはこういったところに、例えば自分たちの自信というか、特徴もありますだとかっていうかたちで、フェアに伝えてくれるんですよね。要は相手のブランドのこういう点はすごいですと、でも、自分たちの特徴はここなんですという。
森辺:そういう感じだったな。
原田:そうなると、こちらも、なんかね、何でもかんでも「うちが上です」って言われると、「えっ、本当に?」ってなりますけど。
森辺:そうですね、そうですね。
原田:やっぱり、うん、そういう特徴があるんだと思って納得して買えて。
森辺:そうですよね。
原田:うん。なので、これはいい。
森辺:そうですよね。
原田:うん。接客だなと思って。
森辺:接客もそうだし、接客される場のつくり方もそうなんですけどね、やっぱり営業マン1人1人にブランド価値経営みたいなものがズドーンと入っているんでしょうね。そこってすごい重要だなって、今また改めて再認識しましたけど。なるほど、そういうことだったんですね。
原田:結局、例えばプロダクトだとかテレビCMとかって、1カ所でコントロールできるじゃないですか、事前に。
森辺:はい。
原田:でも、例えば売り場のお客さんとの中で、この人にどういう提案をしたらレクサスの価値を分かってもらうかって、かなりフレキシブルじゃないといけないんですよね。
森辺:うんうん。そうですね。
原田:例えば森辺さんが行ったときに森辺さんが重要視していることと、じゃあ、仮に私がレクサスに行ったときに私が重要視してたり、私が欲しいと思うものって全然違ったりする中で、でも、レクサスらしさだとか、レクサスの良さだとかっていうのを、やっぱり伝えていかないといけない。となると、かなり自分の中で理解をした上でお客さんのそれぞれのバックグラウンドに合わせていくというカスタマイズができないといけないので、かなり高度なトレーニングをされてると思いますね。
森辺:なるほどね。いや、今までいろんなセールスマンと接しましたけど、違うなっていうのはすごく感じたので。だいたい僕が接してきたのはね、年末ぐらいになると、「3台まとめてパッケージ」みたいな、「これは従業員と役員の方にお車配って、今だったらもうこの金額で」みたいな、ドーンと押し込んでくるような、そういうのが多かったんですけど。「いや、要らないでしょ、3台も車」みたいな、「5台パッケージもあります」みたいな、「いや、だから、要らない、そんないっぱい」みたいな、そういうのが多かったんですけど、ブランドね、ディーラーさん。なんですけど、そういう感じでしたね。
原田:やっぱり長い目で見る。例えばその3台パッケージだと、そのとき3台売れるかもしれないんですけど、長いスパンで考えると、買い続けてくれるのは違うかたちのたぶん接客じゃないかなっていうふうに思いますし、それが徹底されているなっていうのが。
森辺:徹底されているんですよね。
原田:うん。
森辺:その場のあれじゃないというのが、会話してて、こっちも大人なのでね、この人が頭の中で何を考えているか、なんとなく想像つくじゃないですか。
原田:そうですね。
森辺:透けて見えるというか。そういうのが全然ないんですよね。なるほど。たぶん3台買おうとしたら止められる感じじゃないですかね、レクサスってね。
原田:うん。そうかもしれないです。
森辺:「今、本当に必要ですか」と、「なんでそんなに必要なんですか」みたいな。
原田:あと、車が好きな人も多いなっていう印象がありますね。これは別に調査したわけではないんですけれども、要は商材は何でもいいから売りたいっていう人が自動車のディーラーで接客している場合もあるなって感じる中で、レクサスの人たちって、車が好きなんだなって、自動車、要はレクサスが好きなんだなっていうのはありますね。
森辺:あと、豊田章男さんが、インスタか何かで、「何の車が欲しい?」って言われたときに、「うーん」ってちょっと考えて、「やっぱりポルシェかな」とかって言って、結構バズってる動画があって、僕はあれを見て、この社長すごいなと思って、それでトヨタ好きになってしまって、トヨタ買ったんですけど。なんか、あれ、意外に反対ですよね。だから、ポルシェ買うのかなっていうと、いや、そうじゃなくて、こんなすごいことを言う会社の車に乗りたいと思ってしまって。(笑)
原田:リバース・エンジニアリングで分解しても、要はポルシェに、何が理由か分からないけど、かなわないところがやっぱりあるらしいんですよ。要は例えばエンジンだとか剛性度とか見ても負けてないのに、でも、運転してみるとポルシェにかなわないってところがあるらしいんですよ。それが溶接なのか何なのか分からないらしいんですけど。でも、章男さん自身はドライバーじゃないですか。
森辺:レーサーですよね。
原田:マスタードライバーで、モリゾウです。だから、やっぱりあそこを追いかけるんじゃないですかね。
森辺:ね。いや、面白いな。本当に走っているみたいですね、なんかね。
原田:うん。ニュルで走りたいって思うんじゃないですか。いつか勝ちたいって。だから、ルマンでトヨタとポルシェが競っていた話で、トヨタがずっと勝っていたのに、最後エンジントラブルか何かでポルシェに抜かれたときに、なんかね、ポルシェとのやり取りもすごいなんかね、すごい良くて。お互い切磋琢磨しながら頑張っているんだけれども、それぞれリスペクトしているような感じで。でも、本当に車好きなんだなって。
森辺:そうですよね。いや、なんか、トヨタの回し者な感じのあれになってきましたけど。
原田:(笑)
森辺:今日で最後ということで、先生、いろいろお話を聞いてきましたけど、やっぱりブランド価値経営というのは小手先の話ではないと。もう企業そのものの理念とか価値観とか、そういったものから整理していかないと、ブランド価値なんていうのは企業には根付かないよと。これ、20年かかる、長くかかると言うんだけども、企業は永遠に存続することを考えると、やっぱり早く着手しないといけないっていうことなんですよね。
原田:やっぱり価値だとか文化だとか、そういうような戦略だとかには表れない、その企業の組織としての前提とたぶんブランド価値経営は関係してきていて、ずっとトヨタだとかレクサスの話を続けてしましたけど、あそこからやっぱりほかの企業にも言える内容っていうのは、自分たちが提供している商品に対して、まずは自分たちが好きであったり、自分たちが誇りに思えたり、自信を持って出せることっていうものがまず1つ重要なんじゃないのかなと思います。
森辺:そうですね。
原田:確かに、それが仮にできました。仕組みもできました。じゃあ、次の年からブランド価値が上がって業績も上がるかって言ったら、そう簡単ではないと思うんですけれども、現在今、分析中、途中なんですけれども、今、東証上場企業に対してアンケート調査を取って、ブランド価値に対する組織の重要度みたいなのを測る指標があるんですね。これ、専門的に言うと「ブランド志向度」というものがあるんですけれども、それと、財務業績の何に効くのかっていうのを調査した結果、どうもそれは売上とかではなくて、ROSだとかROAには効きそうだと。じゃあ、どういう条件のときに特にそれが効くのかってなると、要は市場の変動が高い状況の場合には、ブランド志向度が高い企業はROSへの影響がより強まるだとか、あとは競争が激しい業界、相手が模倣してきたり、プロモーションでガンガンプロモーション合戦が続くような業界の場合のときも、ブランド志向度が高いとROSへの影響がより強くなるだとかっていうことがどうも言えそうなので、やっぱり収益性を目指すような企業はこのブランド価値といったもの、ちょっと地道な努力にはなりますけれども、やり続けていくと、ROS、ROAが上がっていくのではないかなということは、私も思っております。
森辺:そうですね。どのみちブランドがないと選ばれないですよね、これから、競争がこれだけ激化してきて。
原田:だと思いますね。
森辺:何で選ぶんだっていう話になってしまいますもんね。
原田:あまりにも情報も多いですし、いろんな商品が矢継ぎ早に出てくる中で、自分は、「ほかの人はどうか分からないけど、自分はこれ好きなんだよね」って言って、やっぱり買い続けてもらえる、選ばれ続けてもらえる。ちょっと値段が高くなったとしても、「でも、自分は好きだし」って言って。
森辺:そうですよね。
原田:うん。選んでもらえるっていうことが、ビジネスを永続していくためには重要で。
森辺:そうですよね。
原田:そのためには数回前でお話させていただきましたけれども、要は横串、組織の中で横串を通して、オーケストラの指揮者みたいな人がいれば、日本企業の持っている素材はもうピカイチなものがあるので。
森辺:そうですね、そうですね。
原田:もっとグローバルなプレゼンスは上がるんじゃないかなと期待して私も研究しているって感じですね。
森辺:なるほど。その通りだと思います。先生、ありがとうございました。
原田:いえいえ。
森辺:長きにわたりというか、何回かにわたっていろんなお話を聞けて。また先生お忙しいとは思うんですけど、年に1回ぐらい、また番組のほうにも遊びに来ていただいて。YouTubeも本当は先生にも出ていただきたいなとは思っているんですけど、なかなかスタジオもなくて、変な画角で先生を出すわけにもいかないので。
原田:いえいえ。(笑)
森辺:またちょっといろいろ整いましたら、またご案内させていただきますので、ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
原田:私も議論できて楽しかったので、ぜひよろしくお願いいたします。
森辺:ありがとうございました。
原田:ありがとうございました。
森辺:それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。



