東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、森辺さんの著書の『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』という形で、KADOKAWAと中経出版から出版されている本があるんですけど、この中でハイライトとして取り扱いたいのが、132ページにある、「安易なパートナー選びは高くつく」という章があるんですけど、ここで森辺さんがおっしゃりたいことって具体的にどんなことか教えていただきたいんですけど。
森辺:戦略なきパートナー関係が非常に多い。中堅中小企業だけじゃなくて大企業もそうなんですけど、中堅中小企業の安易なパートナー選びっていうのは、何かで海外に行って地元の政府と会食をして地場企業を紹介してもらって、このA社の陳さん非常にいいから一緒にビジネスするといいよ、ということで乾杯ってやって、地元で力を持ってる、もうここしかないって言ってパートナー契約をして、一向にビジネスがうまく行かないっていうケースが本当にあって。
特にあるのが、日本語のしゃべれる外国人に会うと、その人以外いないんじゃないかと思い込んじゃうんですよね。で他の選択肢が頭から消えるんですよ。その人とやることが全てだってなってパートナーに選ぶんですけど、実はB社の王さんの方が良かったんじゃないかって後々分かったりするんですけど。選択肢の中でたまたま出会ったAさんとやる。それが安易だって言ってるんですけどね。一方で大企業の場合は、とにかく大きいところと組むわけですよ。そうすると金融機関なんかは地場の財閥系の会社を紹介するわけですよ。地元の大財閥と組んで、大きなビジネスをしよう、合弁会社作ろうっていう話になってそれがとんとん拍子に行っちゃうんですけど、結局大企業だろうが中堅中小企業だろうが、海外でパートナーを求める時にほぼ100%パートナーに何を求めてるかっていったら、その国で売ってほしいんですよね。今の時代の海外展開って。そうすると、自分たちはよく分からないし売れないから強いパートナー見つけてその人に売ってもらおうっていう発想なんですけど、この事業提携なりパートナーが本当に売れるのかっていうことを噛み砕いてブレイクダウンしないんですよ。売れるだろうっていう想定で全部物事を進めていく。で結局大企業であっても、どこどこ財閥と提携しました、向こう何年までに市場シェア何%、売上どれくらい稼ぎますってIRでブレストうつんですけど、なかなかその通りには行かないというケースが非常に多くて。それはなぜかっていうと、本当にそのパートナーと組んだ時にその数字が実現するのかどうかっていうブレイクダウンの検証がいまいち甘いんですよね。結局安易にパートナーを決めちゃってるっていう話で、本来はパートナーの選定方法っていうのはブレイクダウンしていく方法があるんですけど、それを全くやってないっていうことをこの章では書いてるんですね。
東:そうすると、パートナー選定方法を科学的にやってないっていうことだと思うんですけど、具体的にパートナーの選定のやり方が分からないから今のやり方になってしまってると思うんですけど、そもそもパートナーっていうのは具体的にどういう人たちなのかっていうことから、ちょっと違うような気がするんですが、そこら辺から教えていただきたいんですけど。
森辺:例えば、商品を売ってほしいってなってくると、大きい会社が本当に必要なのかってそうじゃないじゃないですか。しかも本当に1社でいいのかっていったらそうじゃなくて、例えばペンを売りたいっていうことはペンを売ることを主業務としているディストリビューターさんをまず集めるということがすごい重要なんですよ。ペンを売りたいのにすごく大きい財閥系の企業で当然ペン会社を子会社に持ってるから、ここと組めばその流通が取れるだろうという発想で地場の財閥と組んだりするわけなんですけど、本当にペンを流通したい時にやるべきことって、ペンのディストリビューターをリストアップするっていうことからやらないと、大きいところと組んだら売れるっていう話じゃないじゃないですか。しかも1カ国1代理店制度なんて今時非現実的な政策であるっていうことは多くの企業が気付いてると思うんですよね。1社ではカバレッジできないですから。日本でも1カ国1代理店なんて取ってないわけじゃないですか。なんで海外行って1カ国1代理店制度引くんだっていう話なんですけど、そうするとやっぱりペンを売ることを主業務としているディストリビューターを100あるんだったら100集めてそれを相対比較する中で一番自社にマッチしているところはどこなのかっていう見つけ方を絞り込んでいかないと、たまたま会ったA社がいいとかB社がいいとか、もしくはこの会社は地場の大きい財閥系の会社だからここがいいんじゃないかっていう方法だと、当然うまくいかないですよね。
東:そうすると、森辺さんがパートナーっていうのはまずディストリビューターを想定した方がいいんじゃないかっていうことですかね。
森辺:そう。パートナーの選択肢は売るんだったら財閥でもないし、大企業でもないし、ディストリビューターなんですよ。そもそもディストリビューターっていう業種にフォーカスしなさいよと。ペンを売るんだったらペンのディストリビューターだし、飲料を売るんだったら飲料のディストリビューターだし、食品を売るんだったら食品のディストリビューターだし、ディストリビューターの中からまず大前提選びなさいよってことなんです。
東:そうすると、まずはディストリビューターをリストアップしましたと。ペンでいえば、A国には100社くらいディストリビューターがいますと。その中からどうすればいいんですか?
森辺:それを縦に並べるんですよ。要は順位付けしていくっていう作業をやるんですよね。100社あるうち、さすがにうちは売上1000億の企業で1、2億の売上しかない代理店は使えないよということであれば、売上1、2億円のディストリビューターを全部選択肢から消す。そうすると100ある選択肢が50とかになるわけじゃないですか。で50になったら、今度うちが組むには自社でセールスマンが100人以上いないと駄目だと。そうすると今度はセールスマンが100人以上いないところを消す。そうすると選択肢が20くらいになる。こうやってどんどんショートリストに絞っていくんですよね。最終的に20社とか10社とかになったタイミングで訪問をして実際に会って自分たちの目で確かめていくってことをやるんですけど、その中で最適なディストリビューターを選定していくっていう。まあ絞り込むポイントの細かなプロセスがあるんですけどね、さすがにこの場で説明ができないんですけど、ちょうどこの間やった自社セミナーではその方法を具体的に詳しく説明しましたけど、そんなことをやって絞り込んでいくと。
東:そういったステップを踏まないといけませんよってことだと思うんですけど、まとめてステップを整理してお伝えいただきたいんですけど、まずパートナーっていうのは、まず優先順位としてはディストリビューターを考えるべきじゃないかと。
森辺:売りたいんだったらね。売りたいんだったら大きい企業だとか財閥だとかそんなことは関係なくて、売ることを本業にしていることが大前提ですよというのがひとつですと。でその売ることを本業としている中でも一番御社の商品を売ってくれるところ、ここに絞り込んでいかないといけない。で、絞り込む過程では、もっと簡単に言うと、スキルとマインドを見るって前に話したかもしれないけど、本当にこの人は売るスキルがあるのか、例えば人員はいるのか、実績はあるのか、売上はどのくらいなんだという、スキルの話ですよね。これを見るっていうことと、このディストリビューターの経営者のマインドがどうなんだと。要はいくらスキルがあってもやる気のない経営者が経営しているディストリビューターなんかと組んだって意味ないじゃないですか。その経営者が本当にやる気があるのかどうかっていうことを見ていかないといけない。この2つを見ていくと、最終的に自分たちに一番ふさわしいディストリビューターまで絞り込んでいけるっていうことです。
東:現地のパートナーっていうのを闇雲に探して、特に日本語がしゃべれるような人に限定せずに、きちんとしたディストリビューターをきちんとした手順で選定しないと、その国ではものは売れませんよと。
森辺:中堅中小企業の場合はね。で、大企業の場合は財閥とか地場の大手企業に固執するんではなくて、本当にあなたたちの商品が売れるのかっていうロジックをメーカーが自ら考えなさいと。その上でディストリビューターを選定していきなさいという話です。
東:今日はそろそろお時間が来たのでこの辺りにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。