東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:3月13日にあるところでクローズドの講演をやってたと思うんですけど、その内容をリスナーの皆様にもお届けできればと思ったんですけど、社名とかはなかなか言いにくいと思うので、どんなセミナーだったかをまず教えていただけると。
森辺:そうだよね、クローズドのセミナーだったから。とある大きな会社が主催しているセミナーで、六本木のグランドハイアットでやったんですけど、非常にバブリーなセミナーで基調講演で呼んでいただいて、100名くらいの方々が来て、基調講演聴いて、立食パーティして、みたいなそういうセミナーだったんですけど。今後のアジアパシフィックを中心としたグローバルビジネスの可能性ということで、アジアで勝ち抜くための条件とは、みたいなそんなお話をさせていただいたんですね。久々にバブリーで大きなステージでお話をさせてもらって気持ち良かったんですけど。スポットライトがガーンと当たる系のステージで大変気持ち良くしゃべらせていただいて、皆さん満足してたらいいなあと思ってるんですけど。またカメラマン入ってたんで、写真が出来たら僕のフェイスブックにアップしようと思ってるんですけど、そんなやつをやりました。
東:その中でグローバル競争の現実を学ぶということで、ASEANの年齢構成から市場形成まで、みたいなところをお話されてたと思うんですけど、そういうところを少しシェアさせてもらいたいと思うんですが、簡単に教えていただけないでしょうか。
森辺:参加者の方がけっこうエグゼクティブな方だったんですね。ですから現地現場のミクロな、いつも話しているようなマニアックな話というよりかは、少し大きい話をさせてもらっていたんですよ。ひとつ大きな点で言うと、日本の抱える少子高齢化の問題を背景に我々は世界に、という話じゃないですか、今ビジネスとして。中でも経済成長の著しいアジアへ、ということなわけなんですが、多くの日本の大企業がアジアに行っても高所得者層を結果として狙っているというか、そこしか狙えていない。なぜなら自分たちの商品は技術力が高くて値段も高いからと。その現実について変えていかないといけないというお話をしていて、そもそも振り返るとアジアの最大の魅力って15億人の中間層と言われる人たちですよね。それがもう間もなく23億にまで拡大していくということがアジアの最大の魅力だと思うんですが、ここをやっぱり取っていかないと、そもそもアジアに出る意味がなくて。上位の富裕層であれば先進7カ国G7を狙った方が富裕層の数的にはまだまだ全然大きいわけですよね。日本では富裕層はいるんですけど見にくいですけど、アジアだとそれが非常に見えやすくて、富裕層は機能や品質がいいというだけではなくて、そこにブランド価値を求めるわけですよね。ですから富裕層の富のレベルが圧倒的に違うわけじゃないですか。ですからブランド力がどうしても欧米に負けてしまう日本企業の場合は、なかなかそこで勝つのも難しい。だからちゃんとフォーカスするポイントを中間層に当てていきましょうと。ここをどう取るかというのがアジア最大の魅力ですよみたいな、大前提の話をしたっていうのがひとつですかね。
東:中間層を狙いなさいということなんですかね。
森辺:そうですね。いかに中間層に売れるためのマーケティング戦略を組み立てるかという。日本で売ってるものを何とか向こうで売るという発想ではなくて、中間層で売るために自社の商品をどうするかという、逆で考えなさいという話をさせてもらったんですかね。
東:そうなった時に、キーポイントとして人口ピラミッドが出てくると思うんですけど、ASEANの人口の平均年齢はどうなってるのか、簡単に教えていただけないでしょうか。
森辺:基本的にASEANって平均年齢が20代、20代後半とか。タイはけっこう大きくて34歳、フィリピンは22歳、フィリピンが一番若いんですよね。人口ピラミッドも一番きれいなんですよ。下が若年層で上が高齢者、右と左にそれぞれ男女って、数を棒グラフに横に伸ばしていくと、すごいきれいな三角形になるのがフィリピンなんですよね。日本ってどっちかっていうと逆三角形系で、高齢者が多いよと。これがどういうことかっていうと、若い人口がいないっていうことは生産年齢が少なくなるっていうことじゃないですか、将来的に。生産年齢人口っていうのは、その人たちは国のGDPに直接貢献する人たちですよね。その少ない人たちで、多いたくさんの高齢者を支えるっていうのが日本じゃないですか。一方でフィリピンは高齢者が少なくて若年層が圧倒的に多いので、真逆というそんなお話をして。国のプライオリティを決める時にこの人口の構造ってすごい重要で、フィリピンとかベトナム、バングラデシュ、インドネシア、インドみたいなところがアジアパシフィックの中では最もきれいと言われる、なおかつ人口の絶対数が多い国ですよという、そんなお話もしましたかね。
東:日本企業ってASEANの中でもフィリピンっていうとなんか一歩違うエリアで、ひとつ間を置きたくなるというか、どっちかっていうと敬遠されがちな国のひとつだと思うんですけど、森辺さんはよくフィリピンは有望なマーケットじゃないかと言われてるんですが、日本企業が少し敬遠する理由と、森辺さんが推す理由を教えていただければと思うんですけど。
森辺:今言った人口のお話がひとつですよね。将来的に人口ボーナス期が非常に長く続くわけですよ。22歳ですからね。あとフィリピンとかインドネシアもそうなんですけど、人口の絶対数が多いじゃないですか。インドネシアで2億超えてるでしょ。フィリピンで1億でしょ。人口が多いっていうのもひとつだし。
あとこの2つの国は経済を牛耳ってるのが財閥系なんですよ。いわゆる国営系じゃないんですよね。国営系が独立していって発展していく国と、財閥系が経済を握ってる国と、財閥系の進化ってとてつもなくダイナミックだし、国営より早い。そこもひとつだし、あと英語が通じるっていうのが何よりも日本企業にとってはビジネスをやりやすいし。なんでフィリピンが敬遠されているかっていうと、生産拠点としての対策が国として遅れたんですよ。だから工場が少ないじゃないですか。まあいろいろ問題もあるんですけどね、フィリピンの男は働かないとか。日本企業のアジア進出はどっちかっていうと生産拠点ベースで始まるので、生産拠点がいっぱいあるタイとか人気、みたいな。インドネシアも工場から入るから人気、みたいなそういう流れがあるわけ。ベトナムなんかまさにそうじゃないですか。なので工場で行ってないところにはなかなか行きにくいっていうのもあるんですけど、HSBCが出してる最新のデータでも、2050年ベースでフィリピンはASEANの中で最も経済規模が大きい市場という予測も出てますから、僕はフィリピンはすごく一推しなんですけどね。
東:今日は最後に森辺さんが昨日お話をされてたアジアのマーケット形成の法則というところを教えていただいて終わりたいと思うんですが。
森辺:要は参入プライオリティをどうするっていう話なんですよね。ASEANとかアジアって言ってもいろんな国があるわけじゃないですか。ですからどの国から入るべきなのっていうことを見ていく。当然目的によって違うじゃないですか。例えば消費マーケットを取っていくような会社は消費マーケットのある市場、もしくはそれがもう間もなく出来上がるようなタイミングで出て行く必要がありますよね。生産拠点で出て行きたい企業はインフラがちゃんと整って、生産拠点として成り立つようなタイミングで出て行かないと。電気が通ってないとか、週に3日休みなさいって国から言われるとか、いろんな問題があるわけですよね。インフラのような設備企業なんかはインフラがまさにこれから作られるっていうようなタイミングで出て行かないといけない。
そうすると、アジアで必ず消費市場が出来るまで4つのステップがあるんですよ。まず最初に、政府の政策解放。いわゆる外資優遇を受け入れしますよという政策転換が必ずあるんですね。これが出てすぐにインフラ事業者がドッと進出していくんですよ。そして何をやるかというと、電気ガス水道、工場インフラを整えるということをやっていく。ちょうど今でいうとカンボジアとかミャンマーとかバングラデシュとかインドとか、こういうところだと思うんですけどね。そのあとインフラが整って初めて自動車を筆頭に家電エレクトロニクス系の生産拠点がそこに形成されていくと。生産拠点が出来ると、そこでいろんなものが作られて、現地の人をいっぱい採用して、そこで作ったものが海外に輸出されていくじゃないですか。ですからその国は潤うわけですよね。儲かっていくと。そして初めて消費市場が出来ると。こういう流れで、一番分かりやすく言うと中国見てください。80年代、90年代は生産拠点だったじゃないですか。今の中国のあのとてつもないバイイングパワーっていうのは、その生産拠点としての絶対的王者の地位を築いて儲けたお金が内需の消費につながっていってるわけですよね。
ですから必ずこの4ステップを辿って消費市場っていうのは形成されていて、石油とかダイヤとか金でも出ない限り、必ずそうなんですよね。そう考えると、ミャンマーがすごいって。確かにすごいんですよ、カンボジアがすごいって確かにすごいんですけど、ミャンマーの前にインドネシアとかフィリピンの方が先にプライオリティを置くべきでしょ、ベトナムが次でしょ、とかっていう判断が出来ますよ、という法則のお話ですかね。
東:分かりました。じゃあマーケットの法則をもう一回4段階を教えていただいて、終わりたいと思うんですけど。
森辺:まず政府の政策転換があると。外資優遇をしますと。これが出来るとインフラの整備をするためにいろんなインフラ事業者が参入していくと。インフラが出来上がるとそこに工場を作ることが出来ますから、自動車、家電を順に、いろんな生産系のメーカーさんがそこに進出していく。それがある一定の期間、形成されて輸出をして外貨を獲得していくと、その国に消費市場が出来上がると、こういう流れですね。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。