東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:今日はどういうお話をしていきましょうか。
森辺:今日は相変わらずASEANでいかがですか。
東:はい、どうぞ。
森辺:ASEANと言ってもいろんな国があるわけじゃないですか。その国によって参入戦略というか、特徴が違うわけですよね。例えばシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイの10カ国がいわゆるASEANと言われる東南アジア諸国連合に加盟してるわけですよね。そうなった時に非常に分かりやすく言うと、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムのASEAN6と僕は呼んでるんですけど、ASEAN6がひとつ大きなマーケットだよねと。残るミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ、特にミャンマーとカンボジアは最近マーケットとして、メコンということで見る傾向が何年か前から出てきてますけど、やっぱりまだまだBOPというベースオブピラミッド、低所得者層をターゲットとしたビジネスの領域なので、いったんこれは置いておきましょう、また次回話すとして。
ASEAN6のシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの6カ国と言っても、僕は大きく分けて2つのエリアに分類できると思ってるんですよ。ひとつがシンガポール、マレーシア、タイのグループ。もうひとつがインドネシア、フィリピン、ベトナムのグループ。2つのグループに少なくとも分けて参入戦略考えないと、全く異なる特性を持つ2グループなので、なかなか上手くいかないよねと。例えばタイやシンガポール、マレーシアで成功している日本企業が、なかなかインドネシア、フィリピン、ベトナムで成功しないっていう傾向ってけっこう多いんですよね。僕の好きな食品とか菓子とか日用品、それからステーショナリー、いわゆるスーパーとかハイパーに売られているような商品、消費財、コンシューマープロダクツをターゲットとした場合に、明らかにこの2グループはチャネルの構造が違う、流通構造が違うんですよね。それについてお話をしたいなあと思うんですけど、前置きが非常に長くなりましたが、いかがですか。
東:分かりました。ASEANと呼ばれてる10カ国の中でもASEAN6と呼ばれるインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアの中でもASEAN6を2つに分けましょうよというお話でよろしいですか。その2つに分けるっていうのは具体的にどう分けるとお考えなんですか。
森辺:シンガポール、マレーシア、タイはモダントレードの比率が高いんですよ。基本的に日本のメーカーさんが輸出で事業をしようが、現地に拠点を持って事業をしようが、モダントレードだけをターゲットにしていても頑張ったら赤字にはならない国っていうのがこのグループ。一方で、そこでそうだったからインドネシア、フィリピン、ベトナムも同様にやっても絶対に黒字にはならないですよね。モダントレードの比率で半分くらいまで迫ってるわけですよ。なので間口の半分程度がモダンなわけなので、日本のコンシューマープロダクツのメーカーさんが得意とするモダントレードに通常通りの戦略をやってもある程度利益が出る体質。
だから特にシンガポール、マレーシア、タイなんかっていうと、食品で言うと日本食材を専門に取り扱うディストリビューターがめちゃめちゃ多くあるんですよ。このディストリビューターは当然スーパーやハイパーの日本食売り場さん、もしくは日系食材専門店とかレストラン、ホテルなんかに商品をディストリビューションしてるんですけど、こういう会社が非常に多い。名前もけっこう日本っぽいんですよ。フジ何とかとか。ちょっと日本企業を連想させるような社名になってるわけですよ。いわゆる日本の貿易会社から輸入してそれを国内でディストリビューションするという、あれなんですけど、これって結局日本の製品を日本食屋さんとか日本の専門スーパーとか大手のスーパーの日本商品コーナーに並べたって、こんなの本当の意味でのアジア展開じゃないじゃないですか。あくまで一部の日本人駐在員とか一部の日本フリークというかラバーというか、そういう人たちのために売ってるだけで、本当の意味でその国のマーケットに入れてるとは言わないですよね。この商売だったらむしろ輸出でいいので、現地法人はいらないわけですよ。日本の食品メーカーは比較的この次元で事業が行われていて、その一歩先になかなか行けてないっていう現状があって、菓子にしろ食品にしろ。
一方でフィリピン、インドネシア、ベトナムは日本食材を専門に扱うディストリビューターがないとは言わないですけど、めちゃめちゃ少ないし小さい。そうするとやっぱり日本食材の人気の上がり具合を待ってASEAN市場に参入しているような戦略であると、アンコントローラブルなわけですよね。自分たちで売上のコントロールが出来ないので、結局フォーキャストがどうかっていうことを見つつ、徐々に増えていくみたいな。こんなのが本当のアジア展開かって言ったらそうじゃないじゃないですか。現地の人の生活に深く入っていかないといけないわけなので、そこが大きく違うんですよね。
東:ちょっとまとめていただくと、どんな感じになるんですか。
森辺:いずれのグループも本当の意味でローカルマーケットの人たちの生活に入れるような参入戦略を組まないといけないよっていうのが大前提としてあると。ただ、シンガポール、マレーシア、タイに関してはMTが発展してるし、昨今の日本食ブームみたいなものを強く受けているエリアなので、日本食専門のディストリビューターがあるので、そこへの輸出である程度売上は上がります。
一方で、フィリピン、ベトナム、インドネシアみたいな国はなかなかその環境とは違う。まだまだトラディショナルトレードの比率が高い国なので、そのやり方ではなかなか売上は伸びないっていう大きな違いがあるので、グループAをマレーシア、シンガポール、タイとしてグループBをフィリピン、インドネシア、ベトナムとした時に、グループAでやってたことを同じようにグループBでやってもなかなか伸びない、マーケットシェア取れないっていうのがひとつだし、ASEAN6を中長期的に見た時に、グループAとグループBのどっちが成長ポテンシャルが高いかっていうと、確実にグループBなんですよ。フィリピン人口1億でしょ。インドネシア2.5億でしょ。ベトナムは1億弱でしょ。これが1億を超えてきて、フィリピン1億5000万とか、インドネシアは3億超えて、ベトナムは1億5000万超えていくわけで、HSBCなんかフィリピンがASEANの中で最も向こう30年40年成長する国だと言ってるわけなので、ここのグループBを取れなかったらなかなかアジアでの成功っていうのは難しいよねと。マレーシアの人口なんてたかだか3000万くらいなのでマーケット自体小さいですよね。なのでいかにこのグループBを取って行くかっていう話になるわけで、それをするためにはTTのチャネル戦略をどうしていくかっていうことを考えないといけない。グループAは平均年齢も高いんですよね。それに対してグループBは20代ですからね。フィリピンが確か23歳、インドネシア、ベトナムは28歳なわけですよ。日本が45歳ですから、それを考えると長期的においしい市場だということは一目瞭然なわけで、そうすればグループBの戦略をしっかり組んでいかないといけないですね、ということだと思っています。
東:分かりました。最後にASEAN10カ国ありますけど、大きく分けると3つのグループに分かれますと。その中でも有望な市場として見れるグループを森辺さんはASEAN6と呼んでいて、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、これがASEAN6ですよねと。ASEAN6の中でもAとBのグループに分かれるというような理解でよろしいでしょうか。特にBグループと呼ばれているフィリピン、ベトナム、インドネシアっていうところの市場をどうやって取るかが本当の日本企業のアジア進出の課題ではないかと。
森辺:マーケットポテンシャルがでかいからね。なおかつグループAでやってきたことがそのまま通用する市場ではないので、非常に大きな課題。ただクリアすればゲインも大きい市場であるというふうに考えています。
東:分かりました。じゃあ今日はお時間が来ましたのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。