東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ、森辺さん、引き続きASEANのところについてお話をしたいんですけれども。ASEAN6と呼ばれる、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアっていうところがありました。で、ASEAN6 をグループAとBに分けましょうと。で、グループAっていうのがシンガポール、タイ、マレーシア。で、グループBがインドネシア、フィリピン、ベトナムと。で、グループAについては前々回もお話をしていて、グループBについては前回TTの見分け方みたいなところでお話が終わっていると思うんですけれども。実際に見分けたはいいけれども、分類はできましたと。分類ができたところで、そこからどうやって戦略を立てて、どうやって実際の売上、そして利益につなげていくかっていうところが、多分日本の企業が直面する課題だと思うんですが、そこはどうお考えなんでしょうか。
森辺:先ずグループBでいうところで、MTはやらなくていいって言ってるんじゃなくて、MTをやるのはマストですよと。ただ当然高いリスティングフィーがかかってくるわけで、MTのそもそもの絶対間口数が少ないので、その高いリスティングフィーやらプロモーションフィーを払いながらMTだけやってても黒字化はしないよと。だからMTやりながら同時にTTの上位レイヤーを狙わないといけないと。その中で地域一番店みたいなところに対して、先ずは商品を置いていく、ということをしないといけないと。
そうした時に、やっぱり人口密集地には必ずTTが多いんですよ。人々の生活がそこにありますからね。その地域一番店がどこかっていうのを、前回お話したような方法で特定をして、そこで店主と個別に交渉していくんですよね。これって大手のMTと交渉するよりよっぽど楽なんですよ。お金かかんない。いろんなことやったら向こうは喜ぶわけですよ。自分の店舗にパラソル送ってウェルカムだしね。キャンペーンやりたい、ここで試食会したい、全然ウェルカムなんで。彼らの売上が上がるわけじゃないですか。基本的にはオーナーと交渉をして、それをディストリクトごとにやっていく、要は区ごとにやっていく。その展開を如何に定着させるかなんですよね。とうちゃん、かあちゃんがやってる店なんでね、彼らも気持ちですよ。ですから、どれだけ彼らの心をつかんで、それをやるかなんですけど、「はい、やってね、まかせたからあと頼むね」じゃあ絶対に続かない。それをメーカー自身がやるのか、メーカーが指定してるディストリビューターと一緒にやるのか。基本的には僕はメーカーがちゃんとしばらくは一緒にやらないとだめだと思うんですけどね。それを継続的にやっていくと、徐々に店側が、自分たちでできる範囲っていうのがあるわけでね、それを実行していってくれるわけですよ。それをやっぱり粛々とやっていき、展開エリア、つまりは区を増やしていくっていうことをやっぱやっていかないと、なかなかTTに商品は置かれないですよね。上位TTに商品は置かれないですよね。労力はかかるけどお金はかかんない。変なショバ代よこせとか、リスティングフィーよこせとか、そういうことは言わないので。
東:なるほど。そうすると、具体的にTTが判明して、そういったTTのご主人というか、そういった社長さんたちとやっていかなきゃいけないですよと。それをやるのは自社でやるのか、ディストリビューター使ってやるのかっていうような話だと思うんですけど、森辺さんは、MTは当然やらなきゃいけない市場ですよと。TTの攻略を考える時に、全体像って言ったら変ですけれども、どうやったら、どこまでどうやったら利益が出るのか、売上があがってくるのかっていうのは、1店舗とやってても当然そんなに大きくない店舗なので利益は出てこないと思うんですね。そうすると、そのへんがなんとなく順々にやっていっても、どこまでやっていいのっていうのが非常に多分疑問としてあがってくると思うんですけど、そのへんはどうお考えになりますか。
森辺:先ずわかりやすく、食品とか菓子メーカーにした時にね、必ず工場があるわけじゃないですか。で、その工場の稼働率じゃないですか。
東:そうですね。
森辺:それがいわゆるブレークイーブンポイントがあって、どういうプロフィット、どこまで稼働率が上がればプロフィットが出るかっていうのがあるわけですよね。そうすると工場の稼働率を上げるってことが最大で唯一のミッションみたいな。で、稼働率が上がるってことは、たくさん商品がつくられるわけじゃないですか。そうするとそれをたくさん売る間口を見つけないといけない。単純にそのMTだけをターゲットとした場合に工場のフルキャパの稼働率の何%がそこで占められるのかが出るわけじゃないですか。例えば2割ですと。そしたら残り8割の間口を上位TTからとってこないといけないわけで。この8割の稼働率が、いったい上位TT1店舗の1ヵ月あたりの売上の平均値を出した時に、何店舗必要なのか、つまりは何間口必要なのかっていうところをベースに3ヵ年計画を立てて、1年で何万間口とる、2年目でまた何万間口とるっていうことをやっていかないと黒字レーンには到達しないですよね。
ですからその逆算で、僕は大体間口数を設定して、じゃあ3年で15万間口とりましょう、20万間口とりましょうっていうことを先ず大きな目標値としてお客さんと一緒に設定するんですよ。で、じゃあこの20万間口をとるために、もっとも効率のいいやり方はどういうやり方ですかっていうお話になりますよね。そうした時に、もっとも人口が密集している地域一番店、つまりは上位TTの特定から始めて、そこから徐々に下に落としていくっていうことをやるんですよね。で、これエリアが広がれば広がるほど、大変なわけじゃないですか。ですから、自分たちの現地法人と工場の位置関係からもっとも人口が密集しているエリアを選んで、そこの地域一番店の数からその間口が、さっき言った3ヵ年の計画で足りるのか、足りないのか。足りなければもっと広げていかないといけないし。それを指定しているディストリビューターと中長期のシェアとか、ビジョンをシェアしながら一緒にとっていくと。
一切ATLはやらない。Above the Lineのマスプロモーションはやらない。間口がある一定の基準を満たすまで。意味ないですからね、マスプロ打ったって。なので徹底的にそのいわゆる地域一番店の間口とMTを使ったBTLしかしないですよ。
東:今そういったマスププロダクションが意味ないっていうのは、日本企業は、日本ではやっぱCMだったり広告を出して、商品を開発して、チャネルがあるので、基本的にはそれで利益を得てるという構造がすでにできあがっている中で、多分CMだったり、そういった…
森辺:ラジオとかね。
東:ラジオとかっていうのはやりやすいと思うんで、実際にやってる企業もあるじゃないですか。そうすると森辺さんが考えて、それをやらない、なんでやらない方がいいのかっていうのはどう考えるんですかね?
森辺:例えばね、テレビCM出してね、日本でね、下に階段、自分の家からエレベーター下りて目の前のコンビニ行ったらその商品が置いてあるわけじゃないですか。これはマスプロの効果抜群ですよね。どこに行ったって商品置いてあるんで。けどASEAN3に行った時に、まだ商品が一部のMTでしか置かれてないのに、マスプロいくらがんがん流したってそこまで行かないと商品買えないわけじゃないですか。
東:そうですね。
森辺:そうすると全然意味がないので。やっぱりある一定間口数を獲得してからマスプロをやる。それまではBTLなんですよ。で、BTLも、大手のMTね、確かに人はいっぱい来てますよ。来てますけど、そこでBTLやろうと思ったら、少なくとも3ヵ月前にはスーパーの担当者に話をつけて、いろんな規則やルールや、またフィーを払いながらプロモーションをやる、これ大変なんですよね。けど、地域一番店のTTの上位TTに対してBTLやらせてって、即OKなんですよ。ウェルカムなんですよ。だって彼らにしてみたら店舗の売上が、メーカーやディストリビューターが一緒に来てあげてくれるっていう話なんでね。なので、特に上位TTでのBTL、Below the Lineのプロモーションを徹底的にやった方が効果は高いですよね。で、そこで商品認知をさせていくっていうことをやっぱりしていく方が、ROIがいい、と僕は思っています。ていうか、先進グローバル企業はそうやってますからね。ある一定の間口数を獲得して初めてマスプロをやると。BTLとATLのバランスをとっていくと、すごくリターンがいいわけですよ。
東:わかりました。じゃあもう少し具体的にTTの攻略っていうのを最後に全体像だけお聞きして終わりたいと思うんですけれども。
森辺:先ず、区ごとに分ける。区ごとというか、エリアごとに分ける、人工密集エリアを。そこの地域一番店を特定して、そこから攻めていくっていうことをやるのが一番重要。そこで同時にBTLを実施すると、周りの地域2番店、3番店、4番店、5番店みたいなところが取り扱いたいって言ってくるんですよ。で、そこを地域一番店経由で商品流通させたら、地域一番店は午後からディストリビューターになる可能性もあるじゃないですか。事実先進グローバル企業はそうやって地域一番店をディストリビューター化してるんですよね。もちろんディストリビューター使ってもいいですけども。そんなことをしながら、上位TTを攻めていって、どんどんどんどん下に入っていくっていうことと、あとエリアを横に広げていくっていうことをやって、とにかく間口数を増やすと。間口数が増えると工場の稼働率が上がってきます。稼働率が上がると利益が出てきます。ある1つのポイントに達したら、今度は一気にATLに投資すると収益がさらに拡大するという、このサイクル…
東:サイクル?
森辺:だと思います。
東:わかりました。とてもわかりやすい説明ありがとうございました。じゃあ今日はお時間がきたので、ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。