東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、引き続き大石先生をお迎えしてやるんですけども。
森辺:はい。
東:今回はどういうお話を?
森辺:ちょっとこれ、放送して良いのかアレですけど、小耳に挟みましたが、先生、本を出されるということで。7月ですか?6月ですか?
大石教授(以下、大石):6月の末か、7月の頭には出ると思うんですが。
森辺:そうですか。ちょうどこの放送を見る、少し後くらい…ああ、聞いていただく少し後くらいになると思うんで、ちょっと先行案内ということで、どんな本が出るのかご案内いただいてもよろしいですか?
大石:ありがとうございます。これは企業の方の要望なんですね。僕らはグローバル・マーケティングをやってるので、グローバル・マーケティングのお話をするんですが、「いや、私はマーケティングの経験が全く無い」とかですね、「私は理系出身でマーケティングと言われても何かよく分からない。市場調査か何かですか?」とか、「広告ですか?」みたいな形で言われるので、グローバル・マーケティングを話す前に、実はマーケティングの話をしなきゃいけないと。
でもマーケティングを専門にしている方がやるようなものっていうのは、ある程度マーケティングが分かってる人、大学3年生とか、あるいは大学院生とか社会人でも、そういう経験がある人を対象にして書かれてるんですね。
僕はそうじゃなくて、さっき言ったマーケティングの「マ」の字も知らない人が、それを学ぶ本を何か必要だなと。そういうのを作ってくださいという企業の方からの要望があって、「じゃあ、うちの研究室で書きましょうか」っていうことで、一ヶ月で書いた。
今、初稿が上がってますので、おそらく6月の末か7月の頭までには出すというふうに出版社の社長が言ってるので、出ると思います。
森辺:出版社は?
大石:白桃書房というところから出します。
森辺:タイトルは?
大石:マーケティング零(ゼロ)というものです。
森辺:カッコイイですね。
東:うん。
森辺:売れそうなタイトルですね、マーケティング零。
大石:いやいや。それはうちの弟子が名付けたんですけどね。レイアウトも彼らが考えて、私はそれの尻馬に乗ってるんですよ。
それが話しが出たのが3月の上旬、頭にですね、企業の人と話しをして、今年のセミナーの計画を話してた時に、先程言ったようにマーケティングがよく分からん人がいっぱい多いんで。僕らももちろん講演で話すんですが、通してパッと見て分かるような本があれば、自学自習もできますし、こちらが言ったことを復習もできるということで。「うん、そうか」というんで、じゃあこれは本当に初学者のための物だから、正に零からの出発だから。こんなのにね、一年もかけて研究書として出したらダメだと。
よく僕言われるんですけど、「先生たちが書いたものは難しくてよく分からん」と、企業の人に(笑)。
森辺:あはは(笑)。マーケティング論って難しくて10ページくらいでやめちゃうやつありますもんね。
大石:そうでしょう?今日もねメールが来てて、「先生に紹介された、ある方の本をゴールデンウィーク中に読んだけど、難しくて3回くらい読み返してもよく意味が分かりません」っていうメールが来たんですよ。これではね、やっぱり駄目なんで。
スッと入ると。単にスッと入るっていうんじゃなくて、私のマーケティングの考え方はちょっと普通の人とは違うので、それをうちの研究室だったら皆んな私のDNAを受け継いでるんで、それに基づいて作っていこうというね。
簡単に言うと、マーケティングの定義っていうのはアメリカン・マーケティング・アソシエイションとか、日本マーケティング協会が定義をしてるんですけども、皆んな文章でやってますよね。皆さんマーケティングを専門にやられててもソラでは言えないでしょ?私も言えないです。今、アメリカン・マーケティング・アソシエイションは2007年に出した定義が最新版なんですが。でもこれは僕ね、覚えられないことは意味がないと思ってるんですよ。
だから僕は、「誰に」「何を」「どのように」販売するかに関する活動だ、と定義をしようと。そうすると、最初に「誰に」というターゲッティングが大事。それが決まらないと「何を」やるかと、それは製品であれ、サービスであれですね、それが決まる。そしたらその次に「どのように」だと。これを製造を中心に両側にあるんで、エッジ型経営と呼んでるわけですよ。
このエッジ型経営っていう意味はもう一つあってですね、日本の企業は「マーケティングっていうのは製造の後」と考えてるわけですね。つまりプロモーションであったり、チャネルであったり、アフターサービス、コールセンター、これがマーケティングだと。つまりエッジ型じゃなくて、製造のあとを考えてるわけですよ。
そうじゃないんだ。製造する前から実はマーケティングっていうのはあるんだと。だから経営の言わば根幹なんですよ。「誰に」「何を」「どのように」販売するかっていうのはね。それは銀行であっても、NPOであっても、実は政府組織であっても、サービス機関であっても、医者であっても、我々教員であっても。全てが、僕は共通すると。
ここをやっぱりちゃんと伝えないと、マーケティングを矮小化してしまう。これはグローバル・マーケティングの時も、結局「いや、良い物を作れば、勝てるんだ!」みたいな形になって、「旧来として欧米企業は大したもの作ってないのに、何でこんなにブランド力があって、こんなに強いんだ」みたいな。したらすぐ言うことは、日本企業は「いや、彼らは金に糸目を付けず広告をバンバンやってますからね。勝てないんですよ」とか言って。それはちょっと違うでしょうと。あなたたちの考え方が。
森辺:決まってますよね、生産のあとにあるっていうのが凄いビッと来たんですけど。もう売るものも金額も、何となく確定してて、それをやるみたいな。
大石:そうですね。
森辺:「金額が合わない」「マーケットに合わない」けど「気合と根性で押し込む!」みたいな。
大石:だからそれは営業なんですよ。日本には営業はあってもマーケティングは…無いとは言わないけど、弱い。
森辺:弱いですよねぇ。
大石:だってCMOというチーフ・マーケティング・オフィサーという制度は、ほとんど日本に無いですよね。それは別にCEOとかCFOとかCIOとか、そういうの置かなくてもいいんで、じゃあそれに代わる役職なり、それが責任者がいるか。例えば、生産のトップの副社長とかね、研究開発のトップの社長とか、営業の社長とか、いるんですよ。でもマーケティングの副社長っていうのは、ほとんどいないんです。
森辺:基本的に開発の方がトップの傾向が強い。
大石:そうですよね。そりゃまあ、顔とか本だとか、基本的にはこういう良い物作りをやっていこうというので。それは別に僕も悪いことではないけど、マーケティングをちゃんと理解してる人ね。理系の出身の人でも、そこが上に立たないと、結局欧米流の考え方と違うわけですよ。
だから、今回の「マーケティング零」はそこまでは言ってませんが、僕今年の夏に、今度は年末には「グローバル・マーケティング零」も作ろう、とも、今日研究室に号令出したんですが。ちょっと僕の単著で出そうと思ってたのが、ある雑誌の連載がですね、6回で終わる予定だったんですが、この前、新編集長が来て「いや、8回にしてくれ」と。そうすると、来年の年末までかかっちゃうわけですね、完結が。それをまとめて本にすると、もう再来年になると。そうすると、ちょっと順番として駄目なんで、まず「マーケティング零」でマーケティングは何かを勉強してもらい。それから「グローバル・マーケティング零」で、グローバル・マーケティングを一からまたそれを理解しましょうと。
森辺:いいですね、そのセットはね。
大石:こういう形で今考えているわけです。何か森辺さんも出されるんでしょう?著書。
森辺:そうなんですよ。黒田教授と東京富士大学の。装丁とカバーのデザインをお願いしてですね、カッコイイ感じの、白桃書房さんぽくない、ライトな感じの、やさしい…やさしく分かる、アジア・マーケット…あれ、なんだっけ?すみません、タイトル忘れてしまいました。
大石&東:あはは(笑)
森辺:そんなのが出て、今度は黒田教授もポッドキャストお呼びして、本の話しをする予定です。
大石:そうですね、是非。ええ。
森辺:先生だいぶ苦労してて書いて、私の原稿とも合わせながら「森辺くん、ここってこういう事じゃないかなぁ?」「あ、はい。その通りです」つって、だいぶ手直し皆さんの手直しでね、ご苦労されてたみたいで、すっごい多分一番楽しみにしてると思うんです。
でも「マーケティング零」と「グローバル・マーケティング零」楽しみですね。
大石:ええ。色んな所で僕も喋ってはいるんですけど、多くの人に見てもらうためにはですね、そういうのも必要かなと。僕ね、ちょっと普通の研究者と決定的に違うのは、あんまり本を書くことにプライオリティを置いてないんですね。というのは、講演とかはたくさんやりますけど、本を書いて有名になりたいとかですね、研究者としてのステータスを得たいという気がサラサラ無いわけですよ。
だけど、先程言ったように、世の中にそういう要望があるならば、という感じですね。話しをしてて、私も講演とかで話しをしてても、どうしても中々誤解が解けないとか、マーケティングというのを矮小化して見るとかね。マーケティングというのを、専門家が言うように小難しく考えてる方も多いと。いや、単純なんですよと。「誰に」「何を」「どのように」ということを考えると、皆さんの日常生活だって皆同じ事が適用できるでしょ、非常に一般的です。
森辺:そうですね。
大石:ええ。だからこの本の最初はですね、まず私の、例えば「反省しても後悔せず」という、皆迷いながら成長するもんだよ、みたいな事のメッセージが載せてて。その次に一般性と特殊性の話なんかをやってるわけですよね。僕らが色んな事例を学ぶんだけど、そこから一般性を導き出さないと、実は本当に力にならないんだと。
それは産業、どこでもそう。例えばパソコン産業勉強しても、それから食品産業に持ってくときに、一般性を導き出さないと役に立たないと。それから、それは国を越えてもそうだし、時代を越えてもそうだし。だから研究者っていうのは、その一般性の追求をしてるわけですけど、それを例えば実務家の方にも分かりやすく説明をしていかなければならない。
この役割をしなければ、僕らの実は存在価値はないわけですよね。
森辺:素晴らしいお考えで。確かにそうですよね。「何を」「誰が」「どのように」、それ以外考えなくてもいいですものね。
大石:これで簡単でしょ?
森辺:ええ。それをなんかマーケティングの基本プロセスとか、なんちゃらファイブフォース分析だとか、何かわけ分かんないこといっぱい言うから、ややこしくなって。
まずは「誰に」「何を」「どのように」だけを追求してけば、いいんですもんね。よく成功してる企業の検索したり調べたりするんですけど、結局それも、この会社が「誰を」ターゲットにしてて、それをターゲットにするために製品のどう現地的に同化して、「どのように」というのは、PDA、ATMとか、プロモーションをどうやるかっていうのを、そこなんですよ。
今言った「誰に」「何を」「どのように」以外のことなんて、全く見ないですからね。
大石:そうですね。だから、一般にマーケティングでSTP、セグメンテーション・ターゲッティング・ポジショニングってありますね。その中のターゲッティングが、一番最初の「誰に」に値するわけですよ。これがグローバルに展開すると、「じゃあ、お宅、世界の中でどこの国を対象にするの?中国なの?東南アジアなの?アメリカなの?」っていう話になりますよね。じゃあ中国なら中国に出ようとした時に、「中国は広いですから、どこの地域に行くんですか?」と。「所得を、どの層狙うんですか?」と。それによって何を提供するかが全部変わってくるわけですよね。
だから、沿海部のある程度の富裕層を狙うのか、内陸部の新中間層あたりを狙うかによって違ってくる。車を考えてみれば簡単に分かることですしね。
森辺:確かにそうですね。しかも「グローバル・マーケティング零」っていうのも凄い僕、良いタイトルだなって今思ってたんですけどね。要はね、海外に行った時に一番邪魔になるのは、日本での成功体験だと思うんです。それがあるから、「いやいや、営業だ!」とか「いやいや、気合だ!」とか「根性だ!」とかって話しになっちゃうわけで、そこに重きが置かれてマーケティングが疎かになるって、日本での成功体験を一回ゼロ・リセットしないといけない。そういう意味では、その「零(ゼロ)」っていうタイトル、良いですね。
大石:私のアイディアではないんですけど、「入門」とかそいういうの付けるとね、「ちょっとそれは違う」と皆の意見なんですね。やっぱこれ「零からの出発なんだ」と。これは僕も納得するんですよ。真摯にやっぱり見つめなおして行くということと、それから、ちょっと先程言ったように普通の人のマーケティングの捉え方と、僕らの捉え方は違うと。これをやっぱり、きちんとメッセージとして伝えたいということですね。
それがやっぱり、次の「グローバル・マーケティング零」にも繋がっていくし、マーケティングの重要性を皆さんに理解していただきたいなと。これが、我々のメッセージということで。楽しみにしてください。
森辺:はい。じゃあ是非先生、また出版記念セミナーで。
大石:やりましょう!
森辺:どうもありがとうございました。
大石:どうも、お疲れ様でした。