東 こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺 こんにちは。森辺一樹です。
東 では森辺さん、結構、我々がディストリビューターで海外を回っていますと、やっぱり日本企業が、遅い、遅いということをたびたび言われると思うんですけれども。
それはなぜ、そういうふうに言われてしまうのか、それは慎重だという言い方もできますので、一概には悪いとは言えないんでしょうけれども。
アジアとか海外にグローバルでいきますと、やっぱり、その遅さが致命的になるという可能性もありますので。
そのへんのところは、森辺さんはどういうふうにとらえますか。
森辺 まあ、二つくらいの見方があるのかな、と思っていまして、一つがリスクに対する考え方なんですよね。
それで、リスクってカタカナで書くじゃないですか。リ、ス、ク、と。それで、これはすごく悪いものだという印象が日本ではありますよね。
東 うん。ありますね。
森辺 それで、リスクとは、なんか日本では悪いイメージが付いていますけれども、決して悪いものではなくて、チャンスを得るためのものでもあるわけですよね。
それで、物事をやるときにはリスクなんて、何をやったとしても絶対にあるんですよ。
それが見えているか見えていないかの違いで、リスクというものを日本企業の場合は100パーセント潰さないと前に進めない、というような考えを持っていて。
潰しても、まだ前に進まないので、なんか110パーセント、120パーセントまで潰して前に進むみたいなことで、よく、石橋を叩いて前に進むとか、叩いて割っちゃったとか言うじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 それで一方で、国によってそれは違うんですけれどもね、一般的にグローバルで言いますと、やっぱり7、8割いけると踏んだら、とにかくガーンと動いてしまって。
それで動いたあと、残りの2とか3とかのリスクを微調整して、またさらに進む、ということをやるわけですよね。
ですから、100パーセント潰さないと進まない日本の企業と、7、8割で進んでしまうグローバル企業というところでは、やっぱり圧倒的にスピード感が遅いわけですよね。
それで100パーセント、リスクを潰していますとね、もう時代が変わってしまっていますから、100パーセント潰した、よし行こう、といってもですね、市場が変わっちゃっているわけですよね。
そもそも、そのことのほうがリスクだったりするわけじゃないですか。ですから、そこが一つ、ボクは大きな違いがあると思うんですよ。
それで、あともう一つ、リスクって何だろう一体、ということをボクも考えたことがあるんですけどもね、なんかリスクって怖いじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 なので、いかに、これを可視化して明らかにしていくか、ということがすごく重要でして。そこをやらずに、リスクがある、リスクがある、とずっと言っていてもですね、いつまでも前に進まないですので。
いかに、そのリスクだと自分が思っているものを、明らかにして分かってしまえば、もうリスクではなくなるわけじゃないですか。
ですから、いかに想定ができるかできないか、だと思うんですよね。それで想定ができれば、それに対する対策が打てるわけですから前に出れますし。
そこが日本の会社とグローバル企業とは大きく違うのではないか、という気がするんですけどね。
東 なるほど。そうしますと一つ目というのが、グローバル企業は一般的にいいますと70~80パーセントのリスクを回避できるということが分かれば前に進むと。
それで一方の日本企業は100パーセント、110パーセントというのを積み上げなければ、なかなか前に進みづらい、というところなんですけれども。
それの違いとは、時間軸で言いますとどれくらいの違いになるのでしょうか。感覚的なことでいいですけれども。
森辺 例えば、ボクの体験談なんですけれどもね。
2002年当時に中国の内需がすごく大きくなってきたので、中国の内需を取りましょう、という提案を日系企業にしていたときに、日系企業の現地法人の社長がみんな口をそろえて言ったことは。
中国企業とビジネスをするなんてリスク以外の何物でもないと、債権回収の問題はどうするのか、ということを2002年当時に言っていたんですよね。
でも、もうその時代には欧米の先進グローバル企業は中国企業を相手にビジネスをしていたんですよ、リスクを取っていたんですよ。
それで今、蓋を開けてみたら、マーケットシェアに大きい違いが出てしまっていますし。
中国企業は2002年から、今は13年経っていますけれども、ものすごくチカラを付けておカネを持っているわけですよね。まあ、今は経済は減速していると言われていますけれども。
ですから10年とか、それくらいのスピードで変わっているのではないですかね。アセアンでも一緒ですよね。
グローバル企業と日本企業が、マーケットを市場ととらえた時期というのが、10年から15年、まあ、もっと言ったら20年も違う場合もあるわけですし。
それって、リスクがある、リスクがあると言って、ずっと石橋を叩いていたら15年経ってしまった、というような話だと思うんですよね。
ですから、そういうことだと思いますし、あとね、責任の所在が不明確なんですよね。
これをやるということをやって、当然に責任を取らないけないので、みんな責任を取りたくないですからリスクのあるものは避けますし、部下にリスクを潰せ、潰せ、潰せと上司が言うわけじゃないですか。
でも、そういうようなことを言っていたら組織のスピードなんてどんどん落ちますし、企業なんて前に進まないですよね。
東 そうですね。
森辺 ですから、そういうような時間軸ではないかな、と思うんですよね。
東 そうしますと結構10年というのは、業界によりけりかもしれないですけれども、一般的な業界で言いますと、結構致命的な危機感はありますよね。
森辺 うん。致命的ですよね。マーケットシェアが10年遅れたら、取り返すのはやっぱり、すごく大変ですし。
あと、そのリスクを取って得られるゲインの計算、全部数字で出してしまえばいいと思うんですよね。このリスクというのは一体どれくらいの損失リスクなのかということを、数字で出して。
でも、このリスクを取ると、どれくらいのゲインが得られるのか、ということも数字で出して、それが100倍も違ったら、そんなリスクは取りなさいよ、という話じゃないですか。
東 そうですね。
森辺 それで10のリスクを取って10しかゲインがないのであれば、取りなさんな、という話ですよね。
けれども、10のリスクを取って100のゲインがあるのであるならば、ボクはその10のリスクを取るべきだと思うんですよね。
でも、その10のリスクをできる限り、7潰す、8潰す、とやってきて前に進むわけですよね。
ギャンブルではないので、いっぱいいっぱい10のリスクを背負い込んで100を狙うというのはおかしいと思うんですけれどもね。だから、そういうのは一つ必要だと思うんですよ。
東 そうしますと、その欧米企業は、まあ我々が見ていますと。
10を外すことによって100を得るという考え方で、その100が具体的に何なのかと、なんとなく明確化されているような気がするんですけども。
結構、日本企業はそこがボンヤリとしてる、というイメージなんですけれども。当然そこがしっかりしている企業もあるとは思うんですけれども。
そのへんがボンヤリとしてしまうようなイメージを受けるのは、どうしてなのかな、というのは思うんですが。
森辺 いや。ボンヤリしているからじゃないですかね。(笑)
実際、そうだと思うんですよね。企業買収をするにも、結構高いお金を払って企業を買うわけじゃないですか。
それで、買った瞬間にマーケットシェアが一気に上がります、そこまではいいんですけれども。そのあと、その会社を、どう自社に取り込んでシナジーを上げて、さらに成長させていくか。
いわゆるPMIみたいなとことがですね、考え尽くされていないですから、なかなかその後も進まないということもあるわけでして。
全体戦略をちゃんと持っていますと、リスクというのは全部見えてくるわけですよね。
それが部分的に考えますから、リスクがなかなか見えなくて前に進めない、みたいなことになってしまうわけですので。そこは結構、先進企業から学ぶものというのは多いと思うんですよね。
東 なるほど。では森辺さん、今日は、お時間がきましたので、ちょっと、このへんにしたいんですけれども、また次回も引き続きよろしくお願いします。
森辺 はい。よろしくお願いします。
(第223回、終了です)