東:こんにちは。ナビゲーターの東忠夫です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、先回はちょっとシンガポールにいるということで、リージョナル・ヘッドクォーターの話をしていたんですけど。あるべき姿と、オペレーションを実際にしたときに、少しギャップがありますよねと。ギャップがある企業が日本だと多いんじゃないですかというところだったと思うんですが。その中で契約書と一緒だよねという話が先ほど出たと思うんですけど。契約書のとらえ方も、ディストリビューターと契約するにも、小売りと契約するにも、日本企業の契約書のとらえ方と、欧米企業の契約書のとらえ方って、何か違うと思うんですけど、その辺は森辺さんは色んな企業さんとお付き合いをされているんですがどう感じられますか。
森辺:全く違いますよね。日本の企業は契約書も会社のルールも、この間のリージョナル・ヘッドクォーターの話も、決めたことと、実際に行われることというのは、そうは言ってもまあ、まあ、まあというのが、必ず存在するんですよね。そうは言ってもまあ、まあ、まあというのは、我々日本人のいいところでもあり、合理性を考えると悪いところでもあるんです。だから契約書で言うと、契約書に書いていることが絶対なのでそれ以上も、それ以下もないわけです。そうすると契約書に、例えば何だろうな。こういうふうに書いてあったら、この時点で契約は終わりとなっているとするじゃないですか。そうなるとそこで終わりなんです。世界のルールで言うと。そうなんだけど、そうは言っても、今まで散々お付き合いしてきて関係も長いし、そういうわけにもいかないよね。更新とかね。
例えば一番よく言われるのは、日本の契約書って一番最後に、何かお互い相違があったら、東京地方裁判所でやりましょうね、というのが一番最後にあるんですよね。裁判所で争いましょうね。ただその前に必ず項目があって、協議しようねと。お互いに。まず協議と。いろいろと。結局、裁判なんかに絶対ならないので。喧嘩でもしない限りね。協議となるんですけど。そもそもA社とB社が言っていることが違ったら協議しても平行線になるじゃないですか。だから欧米なんかのケースで言うと、結局色んな契約を結ぶんだけど、こうなったときはこうね。こうなったときはそうね。こうなったときはこうね、という想定、今の契約を結ぶ時点で想定される可能性に対して、どうするかということが、全部契約書に書いてあるんです。そうすると契約書も分厚くなるわけじゃないですか。だから何か起きたら協議なんて言っていたら、時間の無駄なわけですよね。
だから契約を結ぶときに想定される懸念事項は、全部もう決まっているわけです。だから早いわけですよ。想定通りこういうことになった。よし、そしたら俺達にはオプションAとオプションBがあるね。じゃあはいこれね。というふうになるので。変な協議をしている場合でもないんですよね。契約を結んだ時点と、その問題が起きた時点で担当者が変わっている可能性があるわけじゃないですか。そうすると協議なんていう中途半端なものにしていると、感情の話になるわけです。元々お互いA社の担当者と、B社の担当者が意気投合してやっている話で、何でも話し合える仲になっているわけです。人間関係もできているし。協議して良かったわけなんですけど、これは担当が変わるわけですよね。サラリーマンですから。そうすると昔のA社の担当者と、B社の担当者がいなかったら、全くの初対面の人が協議して何を協議するのか。意味がないじゃないですか。そういう項目はないでしょうね。こうなったらこう。こうなったらこう。こうなったらこう、ということなので、そこは大きく違うと思います。
東:それって日本企業同士でやる場合はそのほうがいいというか、そのほうが水に合っていると思うんですよね。なんとなくのイメージとして。ただ日本を一歩外に出たときに、日本企業と中国企業、日本企業とタイ企業、日本企業とアジア企業が何か締結、契約を結ぶときって、結局アジアの企業もアメリカの企業、欧米の企業と契約を結んでいるってなると、日本企業の契約って甘く見えるときがありますよね。
森辺:ガラパゴっちゃってるんですよ。携帯と一緒で、契約書もガラパゴッちゃっているし、ビジネスのやり方もガラパゴッちゃっているし、いろんなものがガラパゴッっちゃってるんですね。それはそれで日本の良さだから僕は全部を否定するつもりは全くないんですけど。アジアの企業だって欧米主流でいっているわけなので、その常識になっているから、やっぱりそこはちょっと変わっていかないといけないところだと思いますけどね。
東:そうすると、コンビニだったり、結構メーカーさんでも現地のメーカーと組んで対処するというのは、たまにありますよね。
森辺:ベトナムでもね。某緑の「不明(00:07:06)」にそうなっているでしょう。
東:最近、かっぱえびせんが中国企業とそうなっていますよね。
森辺:だから、それも僕はまあ契約書の内容を見ていないですけど、やられちゃっている感がどうしてもぬぐえないですね。
実際にちょっと社名を言うのは問題ですけど、そういう失敗をした大手の会社さんが、それ以降契約書を見直した。だから、今の契約書はこんなに分厚いよと言っている会社もありますからね。なので、そうやってスタディしていくんでしょうけど。
日本人というのは、なんて言うのかな。素晴らしい民族で、言語を使わずにも会話ができるんですよ。我々には空気を読むという素晴らしい力があって、空気を読むじゃないですか。どんなときも。なので、言語を使わなくても、日本人同士なら空気を読み合って、お互いの距離感を、ニーズを図るという。これは外国人とは通用しないんです。なので、そこが難しいところなんですよね。
東:まあ文化の違いと言ってしまえば、それまでだと思うんですけど。外国人に通用しないというのがピンと、ああそうだよね、と思う人と、なんでそうなのと、首をかしげちゃう人がいると思うんですけど、森辺さんの経験から言ってなんでそれが通用しないんですか。
森辺:イエスか、ノーかしかないじゃないですか。イエス、ノーみたいなのがないですよね。日本だとイエス、ノーってあるじゃないですか。なんて言ったかな。社交辞令とか。今日ちょっと夜一緒にご飯食べにいきませんかとか。今度パーティーやるので来ませんかと言ったときに、あ、ありがとうございますって。是非ちょっと調整したいと思いますって言って、そこで会話を切ったら、何か事情があってこれないんだな、なので、それ以上突っ込まないじゃないですか。来ればいいし、来なければ来ない。これは空気を読むわけですよね。そうなんですけど、日本から一歩外に出て、今度パーティーやるので来ないですか。ちょっと調整してみます、って言って連絡がなかったら、多分その人から、調整できた、どうだった、とくるわけですよね。日本人はしないですよね。空気読みますからね。そういうことなんですよね。調整をしますということは、分かった、調整するって言っているんだから、今頑張って来れるかどうか調整してくれるという話になるわけでしょう。でも我々。
東:言葉の通りになるということですよね。
森辺:我々の考え方だと、調整しますと言われたら、それは来ない可能性が高いなという判断を空気を読んでするわけじゃないですか。そのときのその人の表情だったりを読むわけですよね。だからそういうことで。
お土産持っていくときに、つまらないものですがって言うじゃないですか。つまらないものならくれるなよという話ですよね。外国人にものを上げるときに、これつまらないものなんだけどって言ったら、は、と言われてしまうのと一緒で。だけど、つまらないものなんですよ、と言わないと、あれですよね。
僕は好きなんですよこういうの。大好きなんです。日本のそういうの。そうなんだけど、外人には分からないよという、外国人のリスナーの方が聞いていたらすみません。差別じゃないです。そういうことなんですよね。
東:そうすると人間としてはいいかもしれないけど、一歩ビジネスになっちゃうと空気を読むということを海外の相手に求めるということは厳しいということですか。
森辺:これは社員教育もそうですよ。空気読めよと。日本人の新入社員は空気を読みまくるじゃないですか。部下は上司の空気を読みまくりますよね。
東:上司がいると帰らないとか。
森辺:そう。だからそれがなくなって。日本人は日本人でこれ悪いんですよね。例えば会議がある時に、白人が足を組んでいたら、白人の部下が足を組んでいたら何も思わないですよ。コーラの缶を机の上に置いて、ぐびぐび飲んでガムをかんでいても、別に白人だから許されて、日本人がそれをやるとアウトじゃないですか。だから帰国子女なんていうのは、特になんだよあいつってなっちゃうわけなんですよね。なのでそういうのもあるんですけど。
だから、僕は気を付けているのは、海外に出たら空気を読むことを求めないし、自分も空気を読まない。そうしないと判断を間違えちゃうので。そうだと思うんですよね。
東:ちょっと契約書の話からここまできましたけど。そういうことがやっぱり契約書にも反映されてしまうということ。
森辺:だからこれね。アメリカの映画とか見ていたら、分かると思うんですよ。アクション映画でね。大統領がさらわれちゃう系。大統領が命令ができないという、ある一定の基準が設けられたら、「ナンジョウ(00:13:00)」を発動して、副大統領が大統領になるじゃないですか。そうするときって、原爆のスイッチを押すなんとかスーツケースみたいなのが来て、その中に入っている暗号は、あらかじめこの金庫にあるプラスチックのやつをパコッて割って、コマンドが出てきてそれを打ち込むようになっている。だからアメリカのいわゆる協議に対する考え方で、もしこうなったときには、こういうふうになるというのが全部決まっているんですよね。大統領がダメなとき副大統領。これは日本でも決まっていますよ、これぐらいはね。ただ、ミサイルのボタンのパスワードがどうなっていて、誰がそれをパチッてやれるかとか。
あと潜水艦の中で、キャプテンが頭がおかしくなったときに、キャプテンしか知らない何かの暗号は、実は潜水艦のこの金庫に入っていて、そうなったときには、キャプテンを拘束して、その中で一番ハイランキングのオフィサーがその金庫を開けて、パキッてプラスチックのケースを割った中から暗号を出すとかいう。全部の想定に対して、こうなったらこうなる、ああなったらこうなるということが考え尽くされているから、僕はアメリカ人って本当に頭いいなと思うんですよね。
そうなんですけど、日本の場合は何か起きると、おお、って。どうしようって。あたふた感があるじゃないですか。いつしかのあのときもね。何年か前にあった日本を襲った不幸のときもね。ちょっとあたふた感があったでしょう。そういうことだと思いますよね。
東:分かりました。じゃあ今日は時間がきましたのでここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。