東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは森辺一樹です。
東:森辺さん、前回は一カ国、一代理店をやっているのであれば、10億、20億、30億ぐらいまでが、一つの目安となるところで、それ以降をやるのであれば、やっぱり複数代理店を扱ってGT、TTに入っていけないですよね、というような議論があったと思うんですけど。この間、名前があがったユニリーバのネスレというのは、そもそもGT、TTを攻略するために基本的にはディストリビューターを使っていて、MTとかは直でやっているイメージがあるんですけど、その辺はどうお感じですか。
森辺:全くその通りで、先進グローバル企業で近代小売を、MTをディストリビューター経由でやっているところなんて、ないんですよね。基本的には、そっちは直販。そしてディストリビューション・ネットワークを構築してディストリビューターを活用するというのは、伝統小売でやるべきことなんです。日本企業の場合は、どうしてもMTもディストリビューター経由で、GT、TTはほとんどできないんです。結局、減俸があっても近代小売りをディストリビューター経由にしているというところもあるわけじゃないですか。基本的にはやっぱりMTっていうのは、メーカー自身が口座を開いて、メーカー自身がそこにセールスをしてやっていかないと、なかなかディストリビューター経由というのは難しいというか、損ですよね。そこでマージンを十数パーセントとられるわけじゃないですか。
特に近代小売なんて、セントラル・ウェアハウスに商品を直送すればいいだけの話なので。仮にデリバリーということだけを考えたとしても必要ないんです、全く。だって3PLでどこかの物流会社さんに、運ばせたらいいだけの話なので。そうするとやっぱり何トレード、近代小売を直販しないというのは、間違っている。もう絶対に直販。これは我々のお客さんも多くがそうじゃないですか。近代小売をディストリビューター使っていて、それを我々が直販の口座開いて、直販で突っ込むわけですよね。直販しない、要は、結局何かよく分からないと。難しそうだと。でもディストリビューターだったら、関係性もあるし、ディストリビューター活用しようというのが、非常に日本企業は多いふうに見受けられるので。やっぱりメーカーが直接やっていくべきだと思うし。仮にディストリビューターを通したほうが、小売との各種条件がプラスに働くという場合もまれにあるわけです。そうであれば、ディストリビューターを使ったらいいでしょうけど、それって小売の答えをメーカーが持った上で、ディストリビューターを使っているわけじゃないですか。でも多くの日本企業は小売の答えを持たずして、要はよく分からない。難しそうだということで、ディストリビューターを使っているわけなんですよね。それが商品が伸びていかない一番大きな理由になっているので。そこはやっぱり日本企業は大きく変えていかないといけないところだと思います。
東:MTを直接、直販カウントで直売りするというところの森辺さんが考えるメリットってどういったところなんですか。
森辺:まず中間マージンが必要なくなるじゃないですか。そのマージン的な要素が一つです。あと小売と直接対話をしていくということって、すごく重要だと思うんです。メーカーって自分たちの商品のことを、誰よりも理解して、誰よりも愛しているわけじゃないですか。その人が消費者に直接売る小売、MTに直接セールスをかけて、その棚とりの状況から、プロモーションの状況からを、直接見ていくというのは、ものをメーカーが売っていく生命線だと思うんです。そこを誰かに任せるって、あり得ないでしょうと思うんです。伝統小売だと何十万とか何百万店あるので、それを一個一個メーカーがやっていたら、これは何万人っていうセールスが必要になってきちゃうわけじゃないですか。だから、こここそにディストリビューターを活用すべきで、MTはやっぱり直販なんじゃないかなと思うんです。それだけ数も出るわけじゃないですか。
東:一店舗当たりの数もやっぱり大きい。
森辺:多いですよね。だから、そこがなかなかそうなっていない企業が多いですよね。
東:逆にその直販しないで、ディストリビューターに任せてしまえと思っているのか、任せたほうがいいと思っているのかというのがちょっとよく分からないんですけど。それは結果的に任せてしまっているというのはどういったところにあるんですか。
森辺:結局、アジア新興国への販売は受け身で始まっているわけです。30年ぐらい前から。現地のインポーターから声がかかって、なんとなく良さそうだから、まあやってみなと言われて。キャッシュが振り込まれたら商品を輸出するよというかたちで始まっているわけですよね。そのインポーターなのかディストリビューターなのかは、商品を輸入したらそれをMTに持っていくわけじゃないですか。一番効率がいいので。そこでやってきました。メーカーとしてもプロモーション戦略も何もないわけです。いくらで、いくらの仕切りでだせると考えて。それを輸出して。だからその国で自分たちの商品が、どういう人に届いていて、どういうイメージなり、感想なりを持たれているのかということへの理解が薄いんです。そこって、すごい重要な要素じゃないですか。元々それで始まっちゃっていて、30年間は良かったと、今までの。ただこれからの次の30年は、たぶんアジアっていうのは昔は大した市場じゃないから、受け身で良かったけど、攻めに変わっていかないといけないわけじゃないですか。
そうすると、やっぱりチャネル戦略も、今までの受け身のチャネル戦略から、攻めのチャネル戦略に変わらないといけないと思うんです。マーケットが攻めになっているのに、チャネルを攻めに変えられない現状というのは、非常にもったいないし、こうして一日一日たっている間に、競合はどんどん先にいってしまう。欧米系の会社なんて、ディストリビューター変えることに何のあれもないじゃないですか。ディストリビューターも気にしていないですよね。じゃあ次のメーカーをどんどんやっていこうという話だし。そこはすごく重要だと思うんです。
東:そうしたらやっぱりMTと、MTに関しては直販で、できる限りやっていくほうが将来的にはいいんじゃないかと。
森辺:絶対にそうだと思います。MTを直接やらないほうがいい明確な理由があるんであれば、ディストリビューターを活用したほうがいい明確な理由があるのであれば、さっき言ったように、マージンがディストリビューター経由のほうがリテール・マージンが安いんですとか。ディストリビューターに払うマージンを加味しても安いんです、という話だったらいいんでしょうけど。
結局ディストリビューターなんか売れなかったら、プロモーション費用をもっと出してくれたらもっと売れるんだとか。リスティング費をもっと払ってくれたらもっとSKUの棚をとれるんだとか。そういうことを言うわけです。結局、言われっぱなしになるわけじゃないですか。メーカーが。だってディストリビューターを頼っているので、全てはディストリビューターの言うがままになる。そんなの戦略じゃないですよね。
ディテールを分かった上で、ディストリビューターに任しているんだったらいいんでしょうけど、多くのMTにディストリビューターを使っている日本企業は、ディテールを全く理解せずにディストリビューターに言われっぱなし。言われっぱなしなんだけど、それに対して、何か大きなアクションをとれるかというと、確信がないじゃないですか。なのでなかなかとれないから、なかなか前に進まないという状態が続いている企業は少なくないと思います。
東:なるほど。分かりました。ディストリビューターを上手く使い分けるということが、必要だということですね。最後にMTをなかなか直でできない。踏み出せない一歩というのは何かあるんですか。今、日本企業の差はほとんどMTというのは、直でやっているところもあればそうじゃない企業もあると思いますけど。
森辺:シンガポールとか、タイとか、マレーシアとか、あの辺は直でやれている会社が、ある程度あるじゃないですか。そうじゃないところがなかなか難しいわけですよね。
それは一つにはやっぱりディテールにリーチするのが難しくて、そこでこけちゃっているというケースは多いと思うんです。ディストリビューターに会うよりも、ディテールの主要人物をつかまえるほうが、圧倒的に大変なんです。だから、そこにリーチができていないということと。マーケットをやっぱりスタディしていないから、仮にリーチしたとしても、対等以上の会話ができない。だから、ディテールにそれこそもっと言われっぱなしという状態になっているのが、多いんじゃないかなと思います。
東:まずマーケットを知ることから、もっと始めたほうがいいということですか。
森辺:やってみるとそんなに、大変じゃないとは言わないですけど、成功している企業の事例を開くと、絶対直ですからね。MTを。先進グローバル企業でMT直じゃないところなんて、ほとんどないですからね。なので、やっぱり輸出ビジネスをずっとやってきた流れがあるから、なかなかチャネルビジネスに移管しなきゃいけない。つまりはチャネルビジネスというのは、MTとは直接やれ、というのは、我々の主張なんです。そこの過渡期にちょうどいるんじゃないかなという気はするんです。
東:分かりました。じゃあ今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。