東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは森辺一樹です。
東:森辺さん、前々回ぐらいに一カ国、一代理店ではちょっと難しいよねというのと、前回直販について話をしたと思うんですけど。そもそも一カ国、一代理店をやっていることで。まあ国によっては一カ国、一代理店でもいいとか、いろいろあると思うんです。優先順位を付けると。そうすると一カ国、一代理店がそもそも駄目な国もあれば、そうじゃない国もありますと。ただ一カ国、一代理店を築いた上で、代理店とのコミュニケーションのとり方とか、マネージメントと言っていいのか分からないですけど。関係性というところをどうしていくのかというところで、悩まれている方もいらっしゃると思うんですけど。その辺の代理店との関係性というのはどうあるべきだ、というお考えをお持ちですか。
森辺:まずアセアンで言うと一カ国、一代理店でいいのは今東ちゃんといる、ここシンガポールぐらいだと思うんだよね。その他の国で一カ国、一代理店制度というのは適していないよね。それは前々回話した通りで。代理店、ディストリビューターとのコミュニケーションなんだけど。多くの企業が、二つあると思うんだよね。ステージが。まず、まだ輸出のビジネスをやっている企業さんというと、現地に拠点がないから、日本からいわゆる輸出担当者とか、その国の担当者が現地に出ずばっていって、代理店とミーティングして、ああだこうだというのをやると。それが年に一回の会社もあれば、半年に一回現地訪問する会社もあれば、三か月に一回訪問する会社もあると思います。ただ、そういう会社の多くが、ディストリビューターよりもマーケットを理解していないから、全てがディストリビューターに言われるがままになっている会社っていうのが、非常に多いんだよね。そうすると、やっぱりいいディストリビューターに巡り合えれば伸びる。あと最初ある一定の金額までは数字は伸びるんだけど、どこかで限界がきちゃうんだよね。メーカーがマーケットを理解して、ディストリビューターを動かすのではなくて、ディストリビューターの言うことを、そのまま全てをうのみにするわけじゃないですか。なおかつ一カ国、一ディストリビューターでやっているわけだよね。そうするとますますマーケットの見方というのが、一方向になっちゃう。そういう企業はやっぱりすごく多くて。
現地に法人がある企業に関して言うと、日本からいくよりも頻繁に訪問はするけど、やっぱり現地に事務所があっても、ない企業よりは現地のことを理解してるけど、ディストリビューターより現地のマーケットのことを理解していないので、どうしてもディストリビューターの言いなりになってしまう。そこが日本企業の一番の問題点ですよね。
東:なるほど。そうするとディストリビューターの言いなりにならないようにするために、企業側としてはどういったことをしていけばよろしいんですか。
森辺:例えば消費財の場合だと、ディテールとのコミュニケーションが、メーカー自身がなくて、その情報を全てディストリビューター経由で聞いていたら、実態って見えてこないですよね。それが一つじゃないですか。
もう一つ重要な、消費者のいわゆるニーズとかウォンツというものが、何なのかということを直接やっぱりメーカーが知らないと、当然それも駄目ですよね。新興国の場合、消費者が求めているものが何かということ以上に、ディテールがどうかということのほうが重要なんだよね。何でかと言うと、確かにものはあふれているけど、日本ほどものはあふれていないし。まだ消費者の口に、より早く自分たちの食品を突っ込むとか、消費者の生活に、より早く自分たちの製品を使わせる、というほうが優先されるので、消費者が何を望んでいますかと聞いたって大した答えは出てこないですよ。だから消費者よりも、やっぱりディテールがどうなんだという実態を、ディストリビューターに言われるがままになるのではなくて、メーカー自身が理解しないといけないというのが大きいですよね。結局日本の消費財メーカーとか分かっていないですからね。
東:なるほど。そうするとやっぱりディテールとのコミュニケーションをとるということが一つ重要になってくると。多分そう言われるとディストリビューターの手前、なかなかメーカーさんとしては、ディテールに直接コミュニケーションをする機会がそもそもないと思うんですけど、その辺はどうなんですか。
森辺:ディストリビューターに悪いとか。
東:悪いとか。メーカーとして直接つてがないので、どうやっていいいか分からないとか。色んな悩みがあると思うんですけど。その辺は解決して、ディストリビューターと一緒にいくのか、メーカーさんが何かしらのつてを伝って、小売に直接何かを聞きにいくのか、二つに一つだと思うんですけど。どうお考えですか。
森辺:ディストリビューターと一緒にいったらいいと思うんです。単独でいってもいいし。逆に現地法人があるのに、MTにディストリビューターを使うなんてあり得ないですから。日系企業だけですからね、そんなことをやっているのは。だからディストリビューターを使って、本来はメーカーが直接いくべきなんですよね。だってMTは直販すべきですからね。でもまあディストリビューターを使ってるんだとしたらやっぱりディストリビューターと一緒にいくという。
逆にディストリビューターが、メーカーをディテールと会わせたくないなんていうディストリビューターはもう使っちゃダメですよね。だって何かを隠しているわけじゃないですか。何かブラックボックスになっているわけじゃないですか。前にもお話しましたけど、メーカーとディストリビューターって、もう共存、共栄でなければならないんですよね。チャネルの開拓をしていく上で。なのに、ディテールにメーカーを会わせたがらないということはそこに何かあるわけですよね。ですから、そんなディストリビューターは逆に言うと使っちゃいけないし、ディストリビューターにそう思わせているんだとすると。例えばメーカーが直販しちゃうんじゃないかと思わせちゃったりだとすると、やっぱりメーカー側がディストリビューターと上手くコミュニケーションとれていないということの表れだと思うのでそこはもっとやれることがいっぱいあると思うんです。
東:そうすると基本スタンスとしては、メーカーとしてはディストリビューターと一緒に小売にいきながら、小売とコミュニケーションをとって、いろいろなことを交渉していくのか。マーケットを知るということをやっていくということが必要だということ。
森辺:絶対必要です。ディストリビューターよりディテール、MTのことを知らないでものを売るというのは危険すぎますよね。だから、全部言われるがままになっちゃうし、今月駄目でした。ああそうですか。来月よろしくお願いします、って言って日本人の担当者が帰ってくるわけじゃないですか。そんなの誰にでもできますよね。たぶん中学生だってそんなことできるわけでしょう。そうすると今月駄目でした、と言わせないために、前倒しで対策を打つのか。駄目でしたと言われたときに、すぐに対策を打てるのかというのが戦略的チャネル開拓なわけで。ディストリビューターが今月駄目でした。今月良かったです、と言うと、結果指標をそのまま受け入れているだけなので、何のためにじゃあディストリビューターを訪問しているのという話になっちゃいますよね。それだと全く意味がないと思うんです。
東:そうすると、たぶん輸出型でやっていて現地邦人がないとか、現地に連絡事務所がないメーカーさんは、基本的には出張ベースでいきながら、コミュニケーションをとっているのが多いと思うんですけど。出張ベースだけではなくて、やっぱり常日頃そういうふうなコミュニケーションはとっていかなければいけない。
森辺:それね、会社の担当者も現地にいって、ディストリビューターに会っていたらいいんだと思っているんですよ。僕は勉強ガイドとか、セミナーとか、講演をやると、あーっていう顔をしているんですみんな。聞きながら。そうなんだけど、いって会って、どうもいろいろありがとうございます。今月どうですか。駄目です。来月はどうですか。来月は頑張ります。そうですか、って帰ってくるって飛行機代とホテル代無駄じゃないですか。でも、それが当たり前だと思っていて、今月駄目でしたというときに対策を打つことが本来自分たちの仕事なわけですよね。でもそれに気付いていない人というのは非常に実は多くて。皆さん、あーそうですかということもよく言われています。
東:分かりました。そしたらディストリビューターとの関係性というところで言うと、コミュニケーションのとり方というところで言うと、どれぐらいの頻度で、どういった形でやればいいのか。何となくの一つの目安というのは、森辺さんなりにどうお考えになりますか。できるかできないかというのは一つ置いておいていただいて。
森辺:究極を言ったら、P&Gみたいに、ディストリビューターの中にインハウスで人が一人現地人が入るというのがやっぱりベストです。常に一緒という。ただ、これもステージだと思うんです。間口を広げるような一番最初の導入期のタイミングは、やっぱり毎日一緒にいないといけないし、ある程度シェアができて、シェアを伸ばすというよりも、シェアを守るというようなタイミングに入ってくれば、今度はそんなにずっといなくてもいいでしょうし。ステージだと思うんです。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。