・こんにちは。ナビゲーターのアズマタダオ(以下A)です。
・こんにちは。森辺一樹(以下 森辺)です。
A:森辺さん。前回は、日本企業で海外で成功している企業をご紹介いただいたと思うんですけれども。一方で、グローバル先進企業と呼ばれているところが、具体的にどうなっているのか、どうやっているのかっていうところを教えていただきたいのですが。
森辺:グローバル先進企業っていうと、P&Gとか、ユニリーバとか、マースとかそういうところだよね。前回のお話で、成功している日本企業、ヤクルトなり、ユニ・チャームなり、味の素なり、サロンパスなり。商品の一点突破で風穴を開けて、そこから広げていくっていうことをやってますよっていうお話をしたと思うんですけど。P&Gとかユニリーバになると、あまりにも総合消費財メーカーすぎちゃって。今、アジア新興国に行くといろんな商品がたしかにある。ただ、やっぱり彼らも導入期は、一点突破できてるんですよね。そこで風穴を開けてから、一気に横に製品を広げていったっていう経緯があって。例えば、マースさんとか、今、ケロッグなんか傘下に入ってますけど、欧米で上手くいってる企業を見てると、売られている商品がキラー商品って言うんですかね。すごく強い商品があるんです。メントスにしても、どこにしても。このメーカーって言ったら、この商品だよねっていうのが必ずあって、そこがすごく重要。ヤクルトだってそうじゃないですか。ヤクルトは社名がヤクルトなんですけどヤクルト。サロンパスも一つの商品だし。ユニ・チャームでいったらマミーポコっていう商品の認知がすごくされていて、ぼやけてないんですよ。そこがすごく重要。
A:そうすると、例えばP&Gだったら具体的にどういった商品が。
森辺:例えば、P&Gでいうと、生理用品系、ビューティー系、ハウスホールド系っていろいろあるけども。生理用品系でいうと、パンパース圧倒的に強いよね。洗剤系、いわゆるホームケアとか、そういうのでいうと、アリエールって洗剤強いよね。これはグローバル・ブランドですけど。ヘアケアなんかでいうと、パンテーンがすごい強いんじゃないかな。なので、そういうのがやっぱりしっかりしてるし、チョコレートなんかでも、マースなんかでもM&M’Sとスニッカーズじゃないですか。
A:そうですね。
森辺:もう、圧倒的ですよね。
A:ネスレでいうと。
森辺:ネスレでいうと、やっぱりコーヒーですよね。まずくるのがね。リプトン、それからスリーインワンのコーヒー。あれが圧倒的に強いし。ヘアケアとかビューティーケアの話でいうと「ドール?(04:45)」とかね。強いですよね。
A:ユニリーバですね。
森辺:ユニリーバはね。ネスレなんかはスリーインワンコーヒーが。
A:それとキットカット。
森辺:キットカットね。だから、一点突破して、風穴開けて、そこから商品を作っていく。やっぱり導入期に経営資源を徹底的に集中させる。そこが、すごく重要だと思うんですよね、消費者に訴求する上では。4Pのプロダクトのお話ですけど。プロダクトでいうと、やっぱりそうですよね。
A:逆に、プロダクトは、基本的にはある程度戦略。グローバル戦略商品みたいなのを決めて、グローバル展開してるっていうイメージだと思うんですけど。逆に、チャネルの面でいうと、彼たちはどうしてるんですか。
森辺:チャネルの面でいうと、アジア新興国の市場、流通の特性を、よくよく理解してるから、モダン・トレードだけでは絶対儲からないってことは、分かってるわけです。ですから、モダントレードは当たり前にやります。一方で、残りの8割のトラディショナルトレードに軸を置いている。ここをよく間違えちゃうんですけど、日本企業。安い、低所得者層に売ったら、トラディショナル・トレードに売ったら、ブランド力が下がるでしょ。安物ブランドになっちゃうよ。という事を、よく言われるんですけど。ブランドの価値と、所得の層ってまた別個の話で、ユニリーバとかP&Gとかネスレなんて、TTの隅々まで入ってるわけじゃないですか。じゃあ、彼らのブランドは、低所得者層が使うシャンプーとかって消費者が思ってるかって、そうじゃないし。ネスレは、低所得者層の飲む飲み物かって思ってるか、そうじゃないわけですよね。だから、必ずしもそういう事じゃないですよね。中間層、低所得者層を狙ったら、ブランド価値が下がるって、そんなのは大きな間違いで、そこはべっこですよね。チャネルに関しては、そこでちゃんと勝負をかけてるっていうのは、ひとつあって。ネスレとか、ユニリーバとか、P&Gの場合は、モダン・トレードが、その国に存在する前。むしろ、100%TT市場の時から、その市場をやってるわけなんで。強くて当たり前っていうのはあるんですけど。そこの考え方の軸がぶれてないし、世界標準化。よく、現地適合化って言うじゃないですか。昔から言われてますけど。現地適合化じゃなくて、世界標準化なんです。いかに世界で、同じ物を、同じように売っていくか。これによって、ROIが一気に上がるわけじゃないですか。実は、現地適合化しなきゃいけないところっていうのは、もっと別のところで、ひとつ世界標準化の軸がある上で、それを各国に、変えるべきところだけを、現地適合化するっていうのが本来の正しい考え方なんです。
A:もう少しそこを詳しく教えていただくと。現地適合化ではなくて、世界標準化のほうが、そういった戦略をとってるっていうのは、メリットとしてはどういったことが考えられるんですか。
森辺:例えば、それぞれの国でそれぞれの商品開発して、それぞれのブランディングを立ち上げて、それぞれのポジショニング決めて、それぞれのターゲットに商品を訴求していくっていうような事を各国でやってったら、コストが倍増していくわけじゃないですか、単純に掛け算で。それよりも、一つのブランドを、世界中で同じように売っていったほうが、企業としては、いろんな事が標準化できるんで、例えば、プロモーションコストで最も大きいコストのCMを一つとっても、ラックスのCMなんて世界中どこで見たって一緒じゃないですか。外人出てきてラックス、みたいなね。ちょっと高級なグラマーなお姉ちゃん出てきて。国によっては、その国で人気な芸能人を使ったりっていうことはありますけど、基本的には一緒ですよね。究極はアップルですよね。アップルなんて、究極の世界標準化なんで、やっぱりそこはすごく重要。これだけインターネットが行き渡っていて、いろんな情報が瞬時に海を越える時代になってきてるわけなので、もう現地適合化っていうのは古い考え方で、僕は世界標準化だと思います。
A:なるほど。今日は森辺さん、時間がきてしまったので、ここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい。ありがとうございました。