東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き今日もジャカルタからお届けしたいと思うんですけども、前回の話ですと、インドネシアというのは比較的日本企業にとって、日本人にとって付き合いやすい国なんではないかということをおっしゃってたんですけども、やっぱりこの国の流通構造というのを少し、概略でいいので教えていただいたんですけれど。
森辺:基本的にインドネシアは主要島5島に分かれているんですよね。で、小さな島まで入れると14,000とかね。政府自体もその正確な数字は把握していない市場で、首都のジャカルタは1人当たりGDPが1万ドルを優に超えているんですけど、平均で均すと非常に低くて、地方なんかはまだまだ貧困で、流通の構造でいうと、その小売市場がまだ80から85%はトラディッショナル・トレードといわれる、いわゆるTTという市場なんですよね。MT自身はまだ15%、20%ぐらいで、その間口数の総数、店舗数の総数って2万9,000店舗ぐらいしかないんですよね。そんな中で、絶対的にTTをやらないと儲からない市場。TTって数でいうと280万店ぐらいあるんですよ、パパママショップが。そこをどうやって攻略していくかというのが、非常に課題になってくると。ディストリビューターも島がそれだけ別れているので、サブディストリビューターを含めて、結構たくさんのディストリビューターを活用して小売に商品を出していかないといけないというのは、そういう市場なんですよね。なので、非常にTTが重要であり、そのTTを攻略するためには、ディストリビューターがとても非常に重要な市場。
東:そうすると、MTが大体15%から20%、TTが8割、80から85%を占めると。アカウント数、間口数でいうと、MTの数が2万9,000前後で、片やTTが280とか290万軒あるとなると、もう間口数でいうと圧倒的にTTが多くて、ここをどうやってとらえていくかというのがやっぱり重要になってくると。
森辺:そうですね。フマキラーさんとかマンダムさんとか味の素さんなんかが成功しているというのは、このTTで商品が売れているから成功しているわけなんですよね。そこがやっぱり非常に重要になってくる市場で、たかだか3万店弱ぐらいの市場だと、日本だとセブンイレブン1社で1万7,000ぐらいあるのかな。ローソンで1万ちょっとあるでしょう。この2社のほうが、インドネシア全土のMTの数よりも多いわけなんですよね。そう考えると、3万って確かにASEANの中では圧倒的なんですよ。タイやベトナムやマレーシア、フィリピンに比べたらね。なんですけど、それでもやっぱりMTだけやっていたんじゃ、なかなか消費財の場合は利益が出ないと。今こっちで、消費財メーカーで抱えている課題というのは、MTはまあそこそこ入った。TTの攻略に課題があるというのが、もう多くの企業の問題点ですよね。
東:なるほど。そうすると、そのTTをどうやって攻略していくかというのが第2ステージというか、そういったところに課題を抱えている日本企業は多いんではないかと。そうした場合、やっぱりディストリビューターの活用というのをどうしていくのかというのは1つ課題になってくると思うんですけど、その辺についてはどう考えたらよろしいですかね?
森辺:結局、ディストリビューターの活用。選定が一つ、すごく重要じゃないですか。選定した後の管理、育成がまた必要なわけですよね。管理や育成をするということは、通常の何倍ものコミュニケーションをとらないといけないという、この三つの行為が非常に重要で、うちの会社だと、ディストリビューション・ネットワークをちゃんとデザインして、それを管理、育成して、しっかりコミュニケーションとっていきましょうという、そういう市場なんですよね。これをする上で、なぜこれしなきゃいけないかというと、TTが非常に重要な市場だからじゃないですか。でも、結構日本企業の多くは、TTが重要だということを、ここ近年理解したんですよね。MT化するからそれを待とうとか、MT化していくよ、きっと日本もそうだったからみたいな発想がやっぱりトップにあるんですよね。で、そうなんだけど、じゃ、この10年でTT消えたかというと、消えていない。むしろ増えているわけですよね。
ちょっと今回の題材から話がそれるかもしれないですけど、TTがMT化する流れというのは間違っていない。それはそうなんですよね。じゃ、それが5年、10年で実現するかというと、絶対そうはならなくて、日本で流通が大改革で一気にMT化したじゃないですか。あれっていうのは、すべてのインフラが同時に近代化したから、小売も近代化しているわけで、小売だけが勝手に近代化したわけじゃないんですよね。新幹線が通って、高速が全国に通って、電気、水道、ガス、水、下水道、すべて含めてインフラが上がって、モータリゼーションが進んで、すべてが近代化したから小売も近代化した。こんな第二次世界大戦後の日本の経済成長の軌跡なんて、類を見ないわけじゃないですか。そうすると、インドネシアも仮にすべてのインフラが同時に近代化すれば、インドネシア全体の小売り流通が一気に近代化する。これはそうだと思います。けど、こんなことASEANじゃ起こり得ないので、今の現状見る限りでは。だから結局、MT化というのは、小売だけが勝手にMT化するということはないんですよね。だからTTが非常に重要で、仮に小売がMT化しても、TTで売れていなかったものをMT化して、MTで売れるかといっても、絶対売れないんで、結局TTやらないといけないんですよね。それをインドネシアを担当している現場の人間がわかっているんだけども、本社の経営トップがわかっていないので、なかなか前に進まないというのは、僕非常に大きな問題だと思っていて、駐在員さんたちはそれを理解していると。もしくは日本本社のインドネシア担当はそれを理解している。ただ、本社の経営担当役員が理解していない。ここはすごくやっぱり前に進まない大きな問題だと思うんですよね。これはディストリビューターとの交渉もそうだし、マーケットを直接見るということもそうだし、経営トップがこっちに来ないと、見ないと判断できないと思うんですよね。そこで、いや、そうじゃないだろう。MTだ、近代化していくんだ、世の中は、みたいな話で押し問答しちゃって、なかなか物事が前に進まなくて、このロスが日本企業、非常に多いんですよね。インドネシアでもまだそういう状況の会社って非常にたくさんあるので、そこは残念だなと思いますけどね。
東:じゃ、ちょっと次回にその話をもう少しじっくりお聞かせいただきたいと思いますので、本日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
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