(東さん)
こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
(森辺さん)
こんにちは。森辺一樹です。
(東さん)
前回ディストリビューターとの契約前の最後の事前打ち合わせ、ラストワンマイルをどのように詰めていくのか、あくまでも商談ではなくパートナーになるための打ち合わせだということを伺いました。
今回はそこをもう一度振り返りながら、なぜ事前打ち合わせが大切なのか、何をすれば良いのかを、もう少し深く教えて頂きたいと思います。
(森辺さん)
ディストリビューターを決めるということは、一回きりの商談ではなく、ある一定期間の長い関係を築いて行く相手を決めることなので「パートナー選び」であるということを肝に銘じなければいけません。
そこからの話は、全てマージンに紐付いていきます。
ストラテジーやプロモーションとマージンは必ず紐付きます。
そしてそこを話しておかないと、先の売り上げ予測など本来は立つはずがありません。
しかし現実はそれを無視して「これだけの枠付けをするので後は宜しくお願い致します。」と投げているメーカーが非常に多いです。
たとえ輸出ビジネスだったとしても、もっとチャネルよりにしていかなければいけないというのが前回までのお話でした。
(東さん)
そこからは短期的なのでどこかで行き詰まると思います。
そして行き詰まった時に方向転換が出来ない可能性があります。
森辺さんが客観的にディストリビューターや契約内容を見ていかがですか?
(森辺さん)
基本的に日系企業は、合弁でも、独資でも、撤退ラインを決めずに進出します。
そのため欧米企業に比べ、ダラダラ赤字が垂れ流れ、判断が遅いと言われる傾向にあります。
そしてパートナーも、例えば新規で始めて、売り上げが一億上がり、それが二億三億となってきて、これを一旦切り替えるとなると0になります。
たかが三億でも、そのリスクを負ってまで切り替えるのはすごく大変なことです。
それが10億ともなれば、いきなり10億がなくなるわけですから、担当事業部長が許すはずがありませんので、ディストリビューターを変えることはまずしません。
ただこのディストリビューターの限界は10億です。
どうあがいてもそれ以上にはいかないので、ディストリビューターも変えれない、将来の成長もないという、ど詰まりに陥ってしまいます。
最初に安易にディストリビューターを決めるとこのようになりかねません。
短中長で見ていかないと100億やレラティブ・マーケット2割のステージにいけない相手と最初から付き合っていることになってしまいます。
そして切り替えるタイミングまで想定が出来ていないので、切り替えることもできない。
これが一番最悪なパターンで、後には引けない状態です。
(東さん)
なるほど。
前にも進めないし、後にも引けないという状態ですね。
(森辺さん)
これをなんとかしてくれという依頼が一番困ります。
「ディストリビューターを変えるつもりはないけど、相手の市場のマーケットシェアがどんどん高くなっている。実は10億ぐらいまでは来ています。
今までASEANのこの国は、大したことがなかったので適当にやっていたが、気付いたら10億いっていてそれならもっと行けるはずだと思うけど、今のディストリビューターを切れないのでなんとかしてくれ。」と言われてもすごく困ります。
(東さん)
それは困りますよね。
そうならないために、最後に残ったディストリビューターが、将来的にどのぐらい成長するのか、どういった考えでビジネスをして行くのかを事前に知る必要があるという事ですね。
(森辺さん)
はい。
そこをとことん話す必要がありますし、最初、彼等は必ずふっかけてきますので、適正でない利益率でずっとやっている会社を途中で適正に変えるとやる気をなくします。
親から貰うお小遣いもそうで、今まで500円を貰っていたのに今日からあなたは300円よと言われたら、悲しいですよね。
しかし、300円のお小遣いが500円に上がったら、「うわぁママありがとう!」と喜ぶじゃないですか。
それと一緒で、基本的に上げる方向は良いのですが、下げることは難しいです。
社員でも、年収1,000万だったのが、今年は上手くいかなかったから800万だと言われたら、やる気をなくして転職してしまいますが、800万の社員が1,000万になったら「社長ありがとう」となるので下げることは難しいです。
つまり、いかに最初に適正な利益をメーカー側が知って、その範囲内で収めるかが非常に重要です。
ディストリビューターにしてみれば、新参メーカーが来てプロモーションをかけず、流通マージンでなんとかやりたいんです、という所もありますが、そんなメーカーが伸びるわけがありません。
4Pの最後のPであるプロモーションがないメーカーの商品など取り扱いたくありません。
ディストリビューターが伸びるということは、市場でレラティブ・マーケットシェア2割の商品を何個持っているか、もしくは持てる側がディストリビューターを成長させるサクセスファクターになるので、ディストリビューターの覚悟が見たい。
メーカー側が少しやってダメだったら撤退すると言うのか、切った張ったでしっかりとしたプロモーションを出してやるのかという所を見たいという想いもあります。
ただ、一方でディストリビューターはその投資を100もらったとしたら、6割はプロモーションに使って4割は利益にしてしまおうと必ず思っています。
その適正値を見極めて、いかに6で済ませるかがメーカーには必要なのでその交渉に時間をかけようということです。
東さん、この4日間疲れましたよね。
でも終わってみて、これだけ腹を割って話すと、向こうも半分諦めたので、今回は良いスタートになると思います。
(東さん)
分かりました。
では次回はもう少し具体的にどういった交渉をすれば良いのか教えて頂きたいと思います。
森部さんありがとうございました。
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それではまた次回お目に掛かりましょう。
「森辺一樹のグローバルマーケティング」この番組はspyderグループよりお送り致しました。