(東さん)
こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
(森辺さん)
こんにちは。森辺一樹です。
(東さん)
ディストリビューターとのパートナー契約を結ぶ前に、どういった交渉をしていけば良いかを数回に分けてお話ししてきました。
最終的にディストリビューターのマインドセットとスキルセットが重要で、それぞれの解説をして頂きました。
そこで、ステージによって、どちらが重要なのかが違うというお話がありましたので、そこについて、もう少しお話を伺えればと思います。
(森辺さん)
1億を目指そうが10億を目指そうが、100億を目指そうが、ディストリビューターは大半が華僑のオーナー社長なので、その華僑のオーナー社長のやる気、会社経営に対する考え方、その商品に対する熱意、ここが欠けていると全く上手くいかないので、マインドセットはマストです。
そしてスキルセットに関しては、1億や10億であれば大したスキルでなくても良いのですが、100億やレラティブ・マーケット2割という時には、高いスキルセットがないと物理的に難しいです。
スキルセットとは、小売との関係性であったり、自分たちのチャネル力、配下力、セールスの質など、物理的な商品を流通させるための力のことです。
売り上げが大きくなるほど、高いスキルセットが求められます。
(東さん)
一つ目のマインドセットについて、もう少しお聞きしたいのですが、オーナーにやる気があるかどうかというのは、華僑系の人は特に本音が分かりづらかったりします。
そこでどのようにその本音を引き出すのかについて森辺さんはどうお考えでしょうか。
(森辺さん)
私は互いのマージンやプロモーションについて、全部分解して細かく話していきます。
これをやるとディストリビューターは嫌がりますが、本当にその商品を売りたいと思っていたらそれに付き合わざるを得ません。
そうすると、ディストリビューターのマージンも分解できます。
ディストリビューターがどれぐらいの利益が残るのかも分解するし、小売にどれぐらいのマージンを払うかも分解します。
小売に本当に必要なプロモーションはいくらなのか、メーカー側として支払わなければいけないプロモーションはいくらなのか、それに対してどういった売り上げの予測を立てるのか、ということを懇々と話していきます。
そうすると嫌がるのですが、興味があると、それに付き合わざるを得ません。
これをやるかやらないかで、適正なマージンを与えられているか、与えられていないかが分かります。
大体日本人は適正以上を与えてしまっているので、これをする事が非常に重要です。
そしてアプローチをして興味を持ったディストリビューターのオーナーはお金を持っているので、すぐに先進国へ行って、その商品が実際どのように売れているのかを見に行きます。
例えばASEANのVIPだったらシンガポールやマレーシア、香港、台湾、日本に行って、その商品の本当のポテンシャルはどれ位あるんだという自分なりの感覚値を掴んできます。
別に飛行機代を何十万掛けて調べてくるなんて、彼等にとっては大した金額ではありません。
本気で命を懸けてやっていこうとしているディストリビューターのオーナーは、そこまでやっているので2回目のミーティングの時にもっとやる気になっているのでそういう所で測っていくことができます。
ちょっとした顔色や表情でも測ることもできますが、一番測りやすいのはマージン構造を開いて行くことです。これをやると何時間の会議が何日もやらなければいけなくなるので、ここは譲れる、ここは譲れないとお互いの本音が出てきます。
ここまでだったら買える。ここまでだったら売れない。という話にもなってくるので、そこまでやることが、中長期的に考えたらベストです。
(東さん)
相手の懐を掴むような話で、相手も嫌だろうし、掴む方も躊躇すると思うのですが、やはりそこまでやらなければ、なかなか上手くいかないということでしょうか。
(森辺さん)
そう思います。
「うちはCIFいくらでこの仕切りで出したいです。後は好きにやってください」だったら一体小売にいくら払っていて自分達がいくら儲かっていて、結局プロモーションをしなければいけません。
日本の企業の多くは、その仕切りの中でプロモーションもやってと言いますが、プロダクト(product)、プライス(price)、プレイス(place)、プロモーション(promotion)の四つが揃って初めて商品が売れます。
それにも拘らず、プロダクトはあります。プライスは決めました。プレイスはチャネルなのであなたです。プロモーションは好きにやってということは、最後のプロモーションのPを無視して売ろうとしている事になるので、そんなものが売れるわけがありません。
特に消費材はプロモーションをしなければ絶対に売れません。
日本ではこのプロモーションをあれだけ電波を使ってやっているのに、なぜ海外に行ったら無視をするんだと、そこがそもそも間違っていて輸出の頭になっています。
輸出は日本で江戸時代からやっていて、それはグローバル・ビジネスでもなんでもありません。
輸出の形態であってもいかにチャネル・ビジネスをしなければいけないか。
チャネル・ビジネスをするということは、ターゲットとしている相手国のディストリビューター、ディテーラー、コンシューマーこれらを全て可視化するということです。
私はこれが出来なければレラティブ・マーケット20%など絶対に取れないと思っています。
(東さん)
もう一つのディストリビューターのスキルセットでは、ステージによっては違うけれども、最終的にはディストリビューターのポテンシャルを測るにはいくつかポイントがあると思います。
簡単なポイントで構いませんので、スキルセットはどういう所を見た方が良いのかを教えて頂きたいです。
(森辺さん)
例えばセールスのチームがどれぐらいの規模なのか、リテールにはアカウント・マネージャーが付いていて、ワトソンのアカウントはこの人です、ロビンソンズはこの人、ピュアゴールドはこの人、アルファマートはこの人と、いろいろな国にいます。
そうするとそのアカウント・マネージャーの質を見れば、どのくらいリテールと関係を築けられる人なのかということがよく分かるので、セールスを見るよりアカウント・マネージャーの質を見ることがすごく重要になると私は思います。
(東さん)
よく言われるキー・アカウント・マネージャーと言われる、ディストリビューターにとって重要な小売を見ているマネージャーの人間性なのか、質を見るのかは分かりませんが、そういうものを見るということですか?
(森辺さん)
両方を見ます。
ディストリビューター毎に、キー・アカウント・マネージャーと会わせてと言って絶対に会った方が良いです。
そしてキー・アカウント・マネージャーを比較します。
当然オーナー社長も比較しますが、セールスを比較するのは何人もいて良いセールスも悪いセールスもいるのでとても大変な事です。
それを束ねているのがキー・アカウント・マネージャーなのでそれを比較すれば分り易いです。
この人は仲がいいと言っているけど、多分これでは難しいだろうなとか。
キー・アカウント・マネージャーと1時間ミーティングしたら、小売の事をどれだけ分かっているのか、本当は小売とどれだけの関係を築いているのかということを垣間見る事ができます。
そのためキー・アカウント・マネージャーを必ず会議に出席させるということがキーポイントで重要な事を言っています。
(東さん)
重要な事をこの場でばらしてしまいましたね。
(森辺さん)
でもこれがすごく重要です。
(東さん)
そこから小売りとの関係性がどうなのかということを、プリンシパル側の日本企業が推測するのですね。
(森辺さん)
全くやった事のない人は感じないかもしれませんが、センスがある人は必ず感じます。
キー・アカウント・マネージャーは顔つきもしゃべり方も立ち振る舞いも、セールスとは全く違います。
そして社長が最も失いたくない人材です。
(東さん)
一番信頼している人ですもんね。
(森辺さん)
このキー・アカウント・マネージャーが転職でもした日にはそこのキーアカウントを失う可能性がある人材なので、この存在はすごく重要です。
しかし日本企業の多くは、キー・アカウント・マネージャーと会っていないと思います。
(東さん)
その人たちを比較していくと、なんとなく感じるものがあるということですね。
分かりました。
では最後に一言お願いします。
(森辺さん)
はい。
ディストリビューターとは4日5日、一日4、5時間の最後の詰めのラストワンマイルをしてください。
とにかくマージン構造を分解して、プロモーション戦略をどうするのか決めて、ストラテジーの話をしてください。
会社概要と製品の話はもういいです。
ディストリビューターと話すべきことはストラテジーです。
そしてオーナーの本質を見抜き、とにかくキー・アカウント・マネージャーと会って話してください。
それが肝だと思います。
(東さん)
分かりました。
森辺さんありがとうございました。
(森辺さん)
ありがとうございました。
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沢山のご質問をお待ちしております。
それではまた次回お目に掛かりましょう。
「森辺一樹のグローバルマーケティング」この番組はspyderグループよりお送り致しました。