(1:05)
阪西:皆さんこんにちは。スパイダーの阪西です。そろそろ皆さん、東が恋しくなってくるかと思うので、今回で最後かと思います。では森辺さん、お願いいたします。
(1:17)
森辺:皆さん、こんにちは。森辺です。東より阪西の方が全然いいですね。ただ次回、多分、東になっちゃいますんで、よろしくお願いします。さて、今回は303回目。300回記念からずっと明治大学の大石先生にお話をおうかがいしてますが、今日が大石先生の最後の登場になります。次、大石先生にお会いできるのは400回になりますので、1年ぐらいまたかかると思います。大石先生、すみません。最後ですけれども、よろしくお願いいたします。
(1:49)
大石:引き続きよろしくお願いします。
(1:51)
森辺:今日はですね、大石先生が長年やっているグローバルマーケティング研究会、略して「グマ研」の活動についてお聞きしたいんですが、なんか最近、会員数が1800名を超えたということをお聞きしたんですけど、この会の内容・主旨に関して、お話をいただいてもよろしいでしょうか。
(2:27)
大石:はい。歴史的にはですね、1999年に日本商業学会のワークショップとして始まりました。で、関西の研究者2名、関東の研究者2名、計4名の###(2:38)でもってやろうということで、何十名か集まってやったわけです。ワークショップというのは、全国大会の前日に開いてやったんですね。それを何回か、つまり、年に1回を何回かやってたわけです。そのうち、私は明治大学ですから東京の都心に行って「そこで何か研究会ができないか。」と言うと、「我々はこういう形で、年に1回やってますよ。」って話出して。「そうはいっても、自分は商業学会にも入ってないし、そんな地方まで行けない。」というところで、「じゃあ、明治大学でちょっとやりましょうか。」と。で、最初やったのはサムスンの、いわばグローバル戦略、グローバルマーケティング、特に広告をですね、電通の高橋さんとか、博報堂の小野寺さんなんかでやったんですよ。そこに集まった人たちが「非常に面白い。」という話になって、「こういう会をまた開いてくれ。」と。で、「私が暇な時にはやりましょう。」という形で何カ月に1回か、いい報告者が出たらやると。ところがそのうちに、「先月は私に案内が来なかったんですが、私はクビになったんでしょうか。」っていう実業家がいて、「そんなことはない。」と、「私が暇な時にやるという約束でしょ?」とかいう話だったんですが、なんかいつのまにか毎月やるのが当たり前みたいになっちゃって。それで今はほぼ、私が海外出張とかで1カ月いないとかいうことを除いた例外的なことはあるんですが、だいたい毎月やっていると。ここ数年はだいたい、毎日1人のペースで会員が増えていますので、一気に1,800を超えて、もうすぐ1,900ぐらいになるという。で、毎月200人~300人集まって例会を開いているという、こういう会になってしまって。
(4:41)
森辺:来てますよね。私も海外出張がない時には極力行くようにしているんですけど、200、300人普通に来てますもんね。企業のエライさんを招いて、そこでお話をして、最後に先生が話してくださるんですけど、基本は外部の講師をお迎えして、その先生にグローバルに関する内容でお話をしていただくと。
(5:13)
大石:そうですね。グマ研の特徴は大きく三つあると思うんです。一つは完全無料ということですね。会費も必要なければ参加費も必要ない。そのかわり報告者、どんな偉い人、どんな遠くから来てもらっても、謝礼も払わなければ交通費も一切払わない。すべてタダ。大学にもお願いして、「これは教育の一環であるから。」という形で、会場費もタダにしてもらってるわけです。懇親会の実費以外は、1円もいらないというのが第一の特徴です。二つ目の特徴は、報告60分・質疑応答60分という普通のセミナーにはない、この質疑応答60分があるわけですね。皆さんの協力で、質問も短くし合ってもらいますし。ですから多くの方が参加できる。平均して20名から25名の方が質問をされますから、こんな会はなかなかないということですね。三つ目の特徴は、我々がこれを通じて、日本企業の競争力回復につなげようという共通の思いを持ってやってると。もちろん外国人の方もおられますから、その方々は自国の企業の活性化なり、自分たちの関与している組織の活性化なりにお役立ていただければいいのですけども。そういう思いで集まっていますから、業界を越えてやっているので、例えば食品会社の方がお話になると、そのライバルの企業の方もおいでになるわけですね。でも、できるだけ自分たちの抱えている問題点を包み隠さず話していただいて、それでみんなで問題を共有して、みんなで考えましょうと。それを持ち帰って、自社のグローバルマーケティングに役立てていただくという、そういう趣旨を持ってやっています。こういう三つの特徴があるんですね。
(7:22)
森辺:その3番目なんですけどね、そういう場で、企業のしかるべき立場の人が発表するとなると、当然広報のチェックが入って、あんまり会社にとってマイナスな事は言えないじゃないですか。けど、むしろ、「ここは、われわれはできてるんだけども、ここには課題を抱えてる。」って演者の方が正直におっしゃるじゃないですか。それに対して先生もリップサービスなく、「ここはいいけど、ここはダメだよね。」みたいなことを指摘して、それが会場からも飛んだりして、それに対してダメだけど、でも、こういう改善方法を今やってるとかっていう議論が、結構遠慮なしに行われるっていうのが、僕、最大の魅力だなと思ってて。なんか、表面的になめる、耳障りのいい話をワッとするっていうよりかは、結構つつくっていうか、本質をつつきあうっていう、なんかあれがすごいなと。そんな会に300人来るっていうのが。で、質問してる人のレベルも高いですよね。
(8:24)
大石:そうですね。
(8:27)
森辺:あ、勉強してきてるなみたいな。ワケわかんない質問ないですもんね、あんまりね。
(8:31)
大石:私の友人で、前はコンサルタントで、今は大学の教員になった人がね、他のところでは自分はしゃべらないし気はないけど、大石先生のとこだったらしゃべってもいいし、「なんでだ?」って言ったら、「質問のレベルが高い。」と。「会のレベルが高い。」って。「その他の所は、それがない。」って。「ああ、そうですか。」と。だから、そういう評価は私の主旨に合ってるので、今の森辺さんの発言もそうですが、非常に嬉しいわけですね。私も遠慮しない。面白いのは、例えばファミリーマートの恒松さんっていう国際事業部長がいて、今、フィリピンの責任者をやっていますけど、彼が報告してくれた時に、やはり広報の責任者の人がフロアにいたわけで、で、恒松さんが実は=合弁(9:30)=との契約書の内容まで話出したわけです。広報が一生懸命止めてるんですね、こっちで。その後、懇親会で広報の方が「あそこまで話すとは…。」とか言って。でも別にね、ニコニコ笑ってやっているので、許容範囲だったんですけども。恒松さんがいわば、世界の1万2千社を全部開拓した人ですから、自分が最初どういう失敗をして、この契約書をこういうふうに作りかえて克服していったかっていうのを詳しく話してもらったわけですね。そういうところがね、みんなすごく勉強になるわけですよ。キレイごとでね、「こんなにして、うまくやってます。」というだけの話だけではなくって、「最初は僕もこういう失敗をしました。それから学んでね、その前は10ページぐらいの契約書が今100ページ超えますと。今、離婚する時の条件はこうこうです、ということもきちんと書いて出すようになりました。」と。そういうものをやっぱり出さない限りはですね、フロアにいる人たちもみんな経験豊かな人です。まあ、学生とかね、もちろん研究者もおられますから、あれですけども。だからそれが、ウチの一つの特徴だろうなと思っているんですよ。
(10:41)
森辺:結局、日本の社会というか、この全体としてね、失敗がNOじゃないですか、基本的に。けど、失敗からしか成功なんて絶対生まれないし、パーフェクトに成功し続けるなんて「あなた神ですか!?」みたいな話になっちゃうんで。絶対失敗ありきだし、グローバル事業するなんてのは失敗の連続で、最後に勝つみたいなね、そういう世界だと思ってて。けど、多くの企業が自分たちの失敗を語らず、成功したところだけを語る。けど、そんなの見る人が見たら「いやいや、何言ってんの。」っていう話になるし、「日本企業と比べたら成功かもしれないけど、先進グローバル企業と比べたら失敗だよね。」みたいなのもあるしね。そういうことを包み隠さず、「私たちは失敗したけど、それをバネにこう成功した。」とか、「ここは課題だけど、ここはいいよね。」みたいな指摘が双方向にあるあの会は、ホントに素晴らしいと思ってて、なんか、ホントなめるようなセミナーいっぱいあるじゃないですか。
(11:45)
大石:多分、それは私のキャラクターもあると思うんですね。全然遠慮せずに言うし。例えば、日立製作所の鈴木学さんが、日立の車両をイギリスに売り込んだ例をお話しされた時に、最初2回の入札で失敗したと。日立の本社の方から「もうやめろ。」「無理だ。」「ヨーロッパに売り込むのは。」と。でも3回目、もう1回だけチャレンジさしてくれって。それで、スタッフで10項目のマズかった点を挙げて、それを全部一つずつ潰していくという形で、3回目にチャレンジしてうまくいったと。そういうプロセスを詳しく話してもらったりとかね。そうするとみんな「ああ、そうか。」と。単純に成功した、簡単に成功したわけではないとか、こういう話になるわけですね。あるいは、今、森永製菓の取締役やってる山下充洋さんが、自分のビジネスの原点は、タイで会社を潰したことだと。閉鎖した時、従業員を解雇したその悔しさが、その後の自分のビジネスの原点になってるという話を延々とされると、やっぱりフロア、涙が出るわけですよね。でも、そういうことがやはりみんな共感をして、「よし。自分たちはじゃあ、その時にはこうしよう。」とか考える。だから、綺麗ごと、成功物語を私は聞きたいわけではない。みんなで問題解決すると。例えばキッコーマンの茂木修さんにやってもらった時に、中国のコンサルタントで徐 向東っていうのがいますね。有名な人がいるんですが、彼がフロアから「キッコーマンは中国でうまくいってない。」って言うのをしつこく言うわけですね。茂木さんは真面目な人だから、それに対して「はい。そうです。」みたいな形で一生懸命答えられるんだけど、そのやりとりがね、すごくバトルになってはいるけどもリアリティがあって、決しておためごかしではない。でも、ウチの会社の人間ですから皆さん会社のことを悪く思われたくはないので、当然そこの一定のセーブはあるんですけど、あの会に出てくるとそれを越えてホントに、先ほどの三つ目の特徴で言った「全体で、オールジャパンで、日本を良くしよう」というところに、みんな収れんしていくと。そこは非常にありがたいですね。
(14:13)
森辺:その回、僕ちょっと出席してないですけど、徐さんの熱いスイッチ入ったところ見たかったですね。
(14:20)
大石:僕止めたんだよ。止めたんだけどね、止まらないんだよ、彼が。
(14:24)
森辺:しかも、茂木さんすごく温厚ないい人だから、困ったでしょうね。
(14:28)
大石:ねぇ。でも例えば、儲かってるかとかそういう話も####(14:34)たし、もちろん答えられなければ「そこの売上高いくらだ。利益がいくらだ。」という質問も出るわけですよね。なかったら私が聞く場合もあるけど。もちろんコンフィデンシャルで答えられないってこともあるんだけど、多くの方は、ギリギリのところで回答してる。だいたい、そういう責任がある人が来てるので。そういう点で言うとやはり話しやすいというか。また、その覚悟をもって来てくださいと、僕は事前に必ず言うんですよ。「ライバル企業も来ます、失礼な質問も出ます、でも私は止めません、それがウチの会の特徴だから。」と。
(15:14)
森辺:素晴らしい。そこまで言ってあれだけ演者が集まるって、先生の人望ですよね。毎月あんな、そうそうたる。
(15:25)
大石:まあ…それは、わかりませんけど。会員の方の紹介もありますしね。ただ、僕は必ずお願いをする時に、先ほどのような思いを正直に言うわけですよ。お金も一銭も払わないことも言うわけですね。それでよかったらお願いしますと。でも多くの方はそこに賛同してやってくれる。日産の副会長がおいでになる。その時も日産の本社に行って話をしてたら、最初は日産のグローバルマーケティングの責任者、オランダ人なんですが、その人を紹介しましょうかね、みたいな雰囲気だったんですよ。でも話を聞いてると「じゃあ、私がやりましょう。」みたいな形になって、「あ、いいですね。その会はいいね。」と。今回は多分、今年の後半か来年の頭ぐらいには、今、産業革新機構のCEOですから、その話をやっていいよっていう話もしてもらっているわけですね。だから報告者の方にとっても、茂木さんなんかもおっしゃいましたけど、その後に会員になられたんですけど、自分も勉強になった。もう一回自分たちのビジネスを振り返るいい機会だったと。いろんな意見をもらって、自分たちのビジネスを相対的に見ることができた。当然参加者の方もね、たくさんのそういう生々しいお話を聞くことができて、しかも普通のセミナーと違って60分の質疑応答があるわけですから、それがいろんな専門家が右から左からいろんな質問をしてくるわけで、そこがまた勉強になるわけですもんね。
(17:13)
森辺:で、熱い議論を交わした後、近くのあのなんともいえない、あの…
(17:20)
大石:安い居酒屋でございますが。
(17:21)
森辺:安いイタリアン居酒屋で、みんなでご飯食べて仲良くなるみたいなね。いいですよね。
(17:28)
大石:ただね、その前に、ここ3年ぐらいは質疑応答の終わった後、私の10分間ぐらいのまとめをするのが義務になってきたわけですね。これがね、実業家の方にまた、結構評価が良くって。いわゆる事例は非常に面白かったと、詳細で、研究。それを私が、理論的というか論理的というか、そういうふうにまとめることによって、自分たちも使えるなっていう形になっていると。つまり、僕ら学者の役割っていうのは、所詮実務を知らないので、実務家の方からいろんな事例を聞いて、そこからある一般的な論理を導き出すことですよね。これ、数学で言うなら基礎的なことですよ。それを提示すれば、全然業界が違ったり企業規模が違ったりしても、ある程度活用できるものになる。ところが事例だけ聞くと「それはキッコーマンだからできたんだ。」とか「日産だからできたんだ。」とか「ウチみたいな中小企業にできない。」とかね、こういう話になっちゃうと。だから多分そこの点が、実務家の具体的な事例とわれわれ学者の一般化・論理化っていうのが、うまくマッチングしてきているのかなって####(18:51)。
(18:53)
森辺:そうですね。わかりました先生。そしたら最後に、先生がこういう、グマ研含めていろんな活動を無償でやられてるじゃないですか。で、「お金、先生、それとれますよ。」って僕たまに言いますけどもね、取らずにやられている。これって先生のどういう思いが、このグローバルマーケティングとか日本企業とかグローバル化の中に秘められてるんですかね。なんのために先生はこれを。
(19:26)
大石:なんでですかね。自分ではあんまり考えてやっているわけじゃなくて、戦略立ててやってるわけじゃなくて、結果的にこうなった。まあ、創発戦略と経営学でいうやつですよね。
ただ先ほど役員報酬の=高(19:40)=のところでも、前回ですか、話しましたけど、やりがいがあればお金だけがすべてではない。それは、私だってお金欲しいし嫌いじゃないですよ。くれるというものはもらうんだけど、だけどそれよりも、なんかみんな、こちらの考え方に共鳴して、みんなで盛り上げていこうと。だから、私ではなく、報告者一人ではなくって、やっぱり参加者全員でこの会が盛り上がって、そして、「よし、日本企業頑張るぞ。」みたいなね。で、まあ、僕の目的は本音で言うともう一つあって、孫が5人いるんですが、この子たちが成人になった時に、結婚する時に、豊かな日本を残したいっていう思いがあるので、ここが、この会を通じて少しでもそれに役立てば、僕にとってはこれがやりがいなわけですよ。だからそれは金銭的な報酬以上に自分にとっては、「みんな良かった。」とか、「また来たい。」とか言ってもらうと「おー。」っていう感じで、やりがいを感じてるわけですよ。
(20:52)
森辺:阪西さん、大石先生ホントいい先生だね。リスナーの皆さん、大石先生の5人の孫の写真が見たい時は、大石先生のFacebookに承認申請をしてみてください。ちなみに先生、このグマ研は、誰でも参加できるんですか?どうやって参加したらいいんですかね。
(21:10)
大石:ブログがありますから、「グローバルマーケティング研究会」っていう形でググっていただくと、必ずそれがトップに出ます。そこから会員申請というのがありますと、そこにスタッフが必ずリプライしますので、そこからやってください。
(21:25)
森辺:そうすると、参加会員になると。案内が来ると。
(21:28)
大石:会員にならなくったって、どういうものが流れてるかって、どういう会があるかって流れてますから、勝手に来て、最近多いのはそれですよ。「2、3回グマ研に参加しましたけど非常に良かったので、会員に申請します。」っていうのが多いんですよ。だから私、顔も名前もわかんない人がたくさん、200、300人いるとね、全員がわかるわけじゃないですけども、でも非常に熱心な、ここ何年もずーっとほとんど来ているような人もいますしね。そういう、玉石混交じゃないですが、新旧、老若男女、いろいろ合わせて、主婦ですという方もいますよ。もちろん「他の大学の学生です。」とかね。「海外の研究者です。」という方々もおられますし。
(22:12)
森辺:他の大学の教授の先生とかもいますもんね。
(22:15)
大石:もちろんですよ。これ100人以上いますしね。
(22:19)
森辺:リスナーの皆さん、そういうことなんでググってみてください。大石先生知っている方もたくさんいらっしゃると思いますが、知らない方もいらっしゃると思います。見た目は大変怖いですが、話すととても優しい先生なので、ぜひグマ研に来てみてください。じゃあ先生、すみません記念すべき300回から301、302、303とお付き合いいただきまして、次先生にまた400回記念でお会いしたいと思いますので、今予約しておきますので、よろしくお願いいたします。
(22:51)
大石:生きてれば、###(22:51)しますって。
(22:52)
森辺:いやいや。来年ぐらいなら生きてると思います。よろしくお願いします。
(22:55)
大石:はい、よろしくお願いします。
(22:56)
大石&森辺:どうもありがとうございました。
(22:59)
女性:本日のPodcastはいかがでしたか?番組では森辺一樹への質問をお待ちしております。ご質問はPodcast@spydergrp.comまでお申し込み下さい。たくさんのご質問をお待ちしております。それではまた次回、お目にかかりましょう。
『森辺一樹のグローバルマーケティング』。この番組はspyder groupの提供によりお送りしました