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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、スパイダーの森辺です。
東:じゃ、森辺さん、今日はどういったお話をしていきましょうか。
森辺:今日は久々にチャネルの話でもしましょうか。
東:はい。で、どんな…(笑)。
森辺:チャネルの話(笑)。そうですね。消費財メーカーにとってのアジアにおけるチャネル構築のお話をしたいと思うんですが、1つあるのが、今までTT(トラディショナルトレード)という話を結構このポッドキャストでもたくさんやってきて、特にASEANの中でも新興ASEANと言われるVIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)、それからメコン経済圏ではまだまだTTの比率が高いので、TTの攻略をしないと、恒久的な利益やマーケットシェアは生めませんよと。そのためのディストリビューションチャネルをどうするべきかという話はさんざんしてきた気がするんですよね。
一方で、先進ASEANといわれるSMT(シンガポール、マレーシア、タイ)や中国のような、中国はもう新興国ではなくて、ある意味先進国というふうに言うべきなんだと思うんだけど、MT(モダントレーディング)の比率が5割、6割まで来ているような国では、MTの重要性というのが非常に高いよと。その中で、日本の多くの消費財メーカーは、MTの攻略を直接やってきていない。むしろそこにディストリビューターを介してやってきているので、真実を理解している企業が少ない、リテールの真実を。なおかつ、これは先進ASEANでも新興ASEANでも一緒なんですけど、新興ASEANはTTが重要だというのはそうなんだけど、これはMTをやるということはもう必須としてあった上でのTTであって、先進ASEANではMTの攻略なくしてマーケットシェアの攻略なんてないという中で、日本の消費財メーカーがMTを攻略するための手法とか、リテールの攻略の難しさというものを非常に理解していないケースが多くて、何か短期的に安易に考えている。ですから、要は物置けばそれで済むんでしょうと。1、2年でガンと行くんじゃないのと。もしくは物を置いたらすぐ売れるんじゃないのみたいな発想の企業さんが、やっぱりまだまだ多いので、何かその話ができたらなと思うんですけど。つまんないかな。
東:いや、どうぞ。具体的に(笑)。
森辺:基本的に僕が考えているというか、うちの会社ではやっぱり3カ年計画を組んでいますと。基本的に今、MTの棚を、例えば中国でも先進ASEANでもとるというのは、新規でね。基本的に大前提として難しいということと、お金がかかるということが1つ。小売とバイヤーさんのところにあっても、もうあしらわれておしまいだから、日本から来たとか、そんなことどうでもいいみたいな、そういう発想を持っていない人たちとやりとりをするという。MTも、輸入品棚と一般棚というのが当然あって、輸入品棚だったらもう幾らでも置いていいよと。リスティングフィーも要りません。置いてくださいと。ただ、そんなところに置いたって、結局買う人は駐在員か外国人か、超マニアックな現地のお金持ちみたいな。マーケットシェアになんか何のインパクトもないので、いかにMTの一般棚をとるかというのは、すごく重要になってくると。そうすると、その一般棚をとるための交渉、まともに小売りの言うリスティングフィーなんて払っていたら、ぶっちゃけ幾らお金があっても足りないし、それだけのパワーゲームをもし日本の企業がやるというんであれば、2、3年で何億か投資しますよと。一気に何千店舗増やして、ガンガンATL、BTLやって、一気にマーケットシェアとるんですという覚悟があるんだったらやればいいけど、そんな会社いないじゃないですか。むしろそんなパワーゲームのマーケットシェアの上げ方は、日本の企業には向いていないし、そのパワーゲームに合った間尺の商品を日本企業は持っていないわけですね。基本的には日本国内市場で鍛えられてきた製品なので、それがそのまま現地に持っていって通用するかというと、かなり難しいと。そうするとやっぱり着実に成長を時間をかけて伸ばしていくという方向しかないから、早く出なさいよという話をしていて、並行入品種がどんどんどんどん流れていってしまって、並行輸入品が入ってきたら、もう正規で入るのがなかなか難しくなってきたりもするわけですよね。そうするとやっぱり3年ぐらいはかかる。最初の1年でどう棚をとるか。そして次の1年でどう成長の兆しを見せるか。そして3年目でどう実績をつくるか。4年、5年、6年目でどうやって今までの投資を回収して、本当の利益を出していくかというチャレンジなわけですね。日本でもかつてそうしてきているわけで、特に中国なんて大きな市場をとろうと思ったら、やっぱり5年、10年で戦略を見てかないといけない。今、中国で成功している日本の消費財メーカーも、それを10年やってきているわけじゃないですか。7年間単黒しませんなんて。その中でようやく単黒をしてきていて、何かそこを少し安易に考えている企業が多いんじゃないかなという気はすごくしますと。
東:なるほど。森辺さんが言うその「安易に考える」というのは、何か感覚的でいいんですけど、どんな感じで。
森辺:日本でも売れているし、そこそこ。置けば売れるでしょうと。で、置くための人脈もルートもチャネルもないから、とりあえず置いてよと。でも、そんな定価のリスティングフィー払えないよと。で、ある程度抑えて、リスティングフィー払うんだから、置いたら瞬間的に売れるという、そういう認識ですね。ただ、それってプロダクトがあるじゃないですか。で、そのプライスというものがあって、プロダクトとプライスが本当に受け入れられるかどうかということを、具体的かつ詳細に深く分析しないまま、日本にあるものを、売れるだろうというある一程度の仮説で置くわけですよね。そこには当然、プレイスというのがあるわけで、プレイスも小売りでとったと。最後のプロモーションは、日本企業はかけないわけじゃないですか、基本的には。ある一程度のところまでいかないと。それは企業側の状況というかジレンマもすごく理解をするんだけど、やっぱり置いた後、どれだけBTLで地道にその商品の認知度を上げていくということをしていかないと、なかなかやっぱり広く店舗数が拡大していったりして、売り上げが上がっていかない。安易にいきなり2,000店舗なんかに商品導入して、基本買い取りじゃないじゃないですか。そうすると全部返ってきちゃうわけですよ。2,000店舗に置いて売れなかったら、全部返ってくる。そうすると、下から上には行かないので、いかにトップのリテールをつかんで、そこの限られた数百店舗に商品を並べて、そこでの1店舗当たりの売り上げをまず上げていくということがもう絶対的に必要で、ここにやっぱり1年ぐらいかかるわけですよね。半年、1年かかる。そこでの実績をもって、今度は店舗の数、カバレッジを上げていく。で、店舗のカバレッジを上げつつ、また1店舗当たりの売り上げを上げていくという、これの繰り返しをずっとやっていくわけじゃないですか。そうすると、最初に出た数百店舗の導入と同時に、BTL、店頭プロモーションばんばんやっていくということを地道にやっていくしかないんですよね。それで何もそういうことがわからず、2,000店舗に入れて、結局売れなくて、リスティングフィー何千万も積んだのに、棚から撤去されて、その後、売れないから、結局何か大損しましたみたいな消費財メーカー、腐るほどあるわけじゃないですか、そんな事例はね。だからそこのスタディが結構足りないというかね。
東:わかりました。では、今日はちょっと時間が来ましたのでここまでにして、また次回ちょっと引き続きお願いしたいと思います。森辺さん、ありがとうでございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了(11:01)>