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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回は珍しくというか、チャネルはチャネルでもMTの、モダントレードの方の話をしていたと思うんですけど、ちょっと簡単におさらいと、今回のテーマというか、こんなこと話したいというのをもう一度お知らせいただければと思うんですが。
森辺:まず、アジアではMTとTTありますよと。新興ASEANではTTが重要だけど、それはMTが必須事項としてあった上でのMTですと。MTが必須事項であった上で、TTをどれだけ攻略するかが、その国でのマーケットシェアを決めますよと。一方で、先進ASEANとか中国に関して言うと、MTの比率が5割、6割まで来ているわけなので、もうMTで稼ぐ。MTでマーケットシェアとるということはすごく重要ですと。そうなったときに、このMTの攻略を舐めている消費財メーカーが非常に――舐めているという言い方は悪いですね。すみません、失礼しました。短期的に見ている、もしくは安易に考えている。日本の小売りと違って、基本的に不動産会社みたいになっているわけですよね。
東:では、その仕組みをちょっと教えていただければ。日本だとどうで、ちょっとアジアとか行くと違うじゃないですか。そこのちょっと違いをまず教えていただければと思うんですけど。
森辺:例えば日本だと、商品は流通マージンというものがあるよね。当然小売りによっては達成インセンティブというものがあるので、基本的には棚に置くというところに対して1SKU当たり幾らの棚代とかというのが基本的にはない。それが中国やASEANに行くと、彼らは限られた面積で限られた棚があって、この棚幾らで買いますか? というところが、いわゆるエントリーフィーになっていて、バーコード登録料、リスティングフィー、棚代とかというふうに言われますけど、最初にお金を払ってその場所を買わないといけない。ただ、当然その一番いい場所を買いましたと。買っても、そこから賞品が3カ月、4カ月で彼らが過去のデータをベースに弾き出しているある方程式以上売れなければ、棚から撤去という問題が、基本的なルールとしてはある。リスティングフィーも1SKU当たり幾らというのは国ごとに違っているし、小売りごとに違っているし。そうすると、何でもかんでも全部の小売りにおけばいいという話でもないわけですね。一気に2,000店舗に置いて、もし3カ月で売れなかったら、そこに置いた商品全部返品されると。なおかつ、また再販できるような感じで返品されればいいんでしょうけど、基本的にぐっちゃぐちゃで返品されるので、破棄するしかないし、破棄するお金もかかっちゃうよという中で、すごくある一定の中長期の戦略でMTの効率をしていかないとならないんですよということを、日本の消費財メーカーはまだ理解していない会社が非常に多いと。今、中国で成功している消費財メーカーに関しても、10年の時間をかけて今の地位があるわけですよね。コンビニに行ってもどこでも売っている「ハイチュウ」とか「ポッキー」とかね、10年かけてやっているわけですよ。ハウスのカレー。スーパーもそうですけど。そうすると、すごく重要なのは、いかにある特定のエリアで、特定の店舗数、例えば200店舗、300店舗に限定をして、そこの棚をまずとると。このときのリスティングフィーも「100」と言ってくるわけじゃないですか。100をどれだけ50にできるか、30にできるかということを我々はやっているわけですよね。そのためにバイヤーを日本に連れてきて、遊園地連れていって、買い物させて、温泉入れて、高い飯食わせて、送り帰して。「100」と言っていた棚代を30にする、20にすると。3カ月でこれだけ売れなかったら撤去よと言われているものを、絶対撤去されないようにするみたいな交渉するわけじゃないですか。そこのバイヤーさんのコミュニケーションのとり方、持っていき方。もうすべては交渉、関係じゃないですか。そこに対する理解度が、そういうタクティクスというか、個々のそういう話もそうだけども、前提として、やっぱり200、300の店舗に置いて、その1店舗当たりの売り上げをどうやって上げるかということをするために、そもそもATL打てないわけですよ。いきなり広告や新聞やったってRY悪いんで、BTLになると。店頭プロモーションやりましょう。そうすると、その店頭プロモーションでその商品の認知を増やしていかなきゃならない。認知が増えると、その300店舗の1店舗当たりの売り上げが上がっていくわけですね。それが上がったら、今度小売りがその商品に対する評価も変わってくる。だからその後、いや、もっと店舗を増やしてくださいよ、もっと置いてくださいよと。そこに店舗を増やしていくと、今度間口のカバレッジが増えていくわけですよね。間口のカバレッジを増やしつつ、さらに増えた間口の1店舗当たりの売り上げを上げていく、これの繰り返しを2年、3年やるわけですよ。そしてようやく1エリアでのマーケットシェアというのができ上がってきて、あれだけ広い中国ですから、1省1カ国とか3省1カ国というような見方をしていかないといけないので、上海でそれが終わったら広東へ行くとか、大体広東でやって上海に行くとか、沿岸部でやってから内陸部行くとか、内陸部やって外行くとか、いろいろそれは商品によって戦略というのは違ってくると思うんですけど、そこをあまりにも安易に短期的に見過ぎている日本の企業というのは非常に多いんじゃないかなと。日本で幾ら売れていようが、訪日爆買いリストに入っていようが、そんなの13億の市場で見たら、何のインパクトもないわけですよ。そうするとやっぱり、認知がないというところから考えていかないといけないし、日本で売っている消費財を訪日の中国人が買っていくという、この購買動機と、中国で売っているその商品を中国で買うという購買動機というのは全く違って、買わないわけですよね。そこをやっぱり理解をしていかないと、なかなか難しいので、並べたら売れるとか、短期的に見るとかというのは、もう全くもっての論外で、3か年とか4カ年で数字を引いていかないといけないし、お金はかかるわけですよ。絶対にかかる。けど、それをどれだけ圧縮しながら地道に店舗のカバレッジを増やして、1店舗当たりの売り上げを上げていくかという、ここで折れないということがすごい重要で、海外やるのにそれぐらいの投資ができないんだったら、仮にも中国や先進ASEANで。タイだって、シンガポールだって、マレーシアだって、世界じゅうの企業がねらっているわけですよ、あそこの棚を。だからそれぐらいの覚悟を持っていってくださいねと。ちょっと並べてみて、売れたらやるけど、売れなかったらやらないなんという事業は、もう淘汰される。アジアのディストリビューターがもうそういう日本企業とは付き合いたくないと言っているんです。これ10年前、20年だったら、日本企業だったら何でもいいよ、来てくれと。けど今は、やってみてダメだったらやめます、みたいな、そんな会社だったら付き合いたくない。腰据えてやるのかと。俺らはもう逃げられないんだ、この国にいるからと。あんたたちは日本から来て、だめだったら逃げられるけど、どうなんだということをやっぱりすごく、ディストリビューターすら言うし、リテールもそういう判断ですよ。この会社は腰据えると思ったら、リスティングフィーの交渉なんて幾らでもできるし、店舗での特別キャンペーンの交渉なんて幾らでもできるし、何とでもなる。だから腰据えて本当にやるの? 決めているのかどうかということを、ディストリビューターもリテーラーも見てくると。生半可に消費財メーカーが海外で物を売りたいなんて言うべきじゃないし、そのための時間軸と予算というのはちゃんと考えないと、僕はダメな時代に来ているということと、あともう1つは、リテールが言ってくる最初の条件。あんなのはあくまで低価であって、あくまで彼らの希望値であって、そんなのまともに受けていたら、幾ら金あっても足りないわけで、それをあの手、この手でどれだけ10分の1にするかというのが重要なポイントなんですよね。だから、そこをちゃんと理解をしないと、消費財メーカー、アジアのMTなんかじゃ成功しないですよという、そういう話です。
東:わかりました。じゃ、森辺さん、ちょっと今日は時間が来たので、引き続きまた次回もお伺いしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
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