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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では引き続き、アジア・中国のMTに関してなんですけど、意外と日本企業はディストリビューターを使ってということをおっしゃっていたんですが、先進グローバル企業とよく、P&Gとかネスレとかというのを具体例として挙げるんですけど、そういった企業、もしくは現地系でタイだったり中国系の企業ってあると思うんですけど、そういった企業は具体的にMTとどうやってつき合っているのかとかというのは、どうなんですかね。
森辺:直販です。で、日本の企業は現地法人(ゲンポウ)があってもディストリビューターを使っていて、ディストリビューターと一緒に小売りに行くんですけど、ディストリビューターに「小売りに行かないでくれ」「余計なことは一切言うな」と言われたりするんですよね。結局それ小売りに舐められているわけでしょう。まず現地法人があるのに、現地にある小売りと直接交渉ができない現地法人の機能って一体何なの? みたいな。じゃ、要らないじゃん、そこに人。何の役にも立っていないわけですよね。
東:何の役にも立っていないというか、調整役になっちゃっていますね。
森辺:調整役になっちゃっているわけですよね。だって、小売りの交渉できないんですから。ディストリビューターを使いますと。そこまで百歩譲っていいと思うんですけど、ディストリビューターと一緒に小売りに行きましょうとご挨拶に行くと、そのディストリビューターが「余計なことを言うな」と。なぜ余計なことを言うなといったら、小売りがこういうプロモーションをやってくれとか、ああ言ってくれと。お金ちょうだいと言ってくるわけですよ。日本のメーカーが行くと「お金頂戴」の話になるから、ディストリビューターが日本のメーカー連れていきたくないみたいな。結局、カモられちゃっているわけで、何かそこが悲しいですよね。先進グローバル企業は小売りにスイス人行かないし、アメリカ人も行かない。現地の責任者が小売りとプロフェッショナルな交渉をするという中で、何かよくわからない人が一緒に小売り行って、そりゃ言いますよね。
東:はい(笑)。
森辺:僕が小売りでも言うなあと思うので、何かそれは悲しい事実というのはすごく思いますよね。
東:なるほど。先進グローバル企業は現地の有力の大手の企業が直販でやっていますと。やっぱりその直販とディストリビューター経由の違い、森辺さん自身、TTでなくてMTに対してはどうあると思いますか?
森辺:MTは効率いいわけじゃないですか。いったらディストリビューションセンターにどんと商品突っ込んじゃえば、そこから各店舗に自動配送されるので、システムも全部整っているし、楽なわけですよね。そうするとディストリビューターにとっては、いかにキーアカウントをやれるかということがすごく重要なんで、彼らはやりたがるわけですよ。けど、そこで彼らに20%も25%もマージンを落としても意味ないんですよ。自分たちでやった方がよっぽどRYよくて、でも小売りとの関係がないからとか、小売りとの関係が大変だからというんですけど、そもそも輸出でいいじゃんみたいな話になっちゃうんで。もったいないですよね。小売りのマージンが30%から40%とか、例えば香港とかね。ディストリビューターのマージンが20%から30%って残らないじゃないですか。2・4で6割で4掛けで出したとしても、厳しいですよね、輸入品とかだったらね。
東:関税とか。
森辺:香港なら関税かからないけど、でも厳しいよね、4掛けで出したら。運送費がかかってくるし、コンテナで持っていくわけじゃないですか。倉庫代も当然乗ってくるし。そうするとやっぱり、今度何やるかというと、RSP変えないといけないんですよね。RSPの価格変えたら、今度消費者にそれ受け入れられるかどうかという話になっちゃうし。そこはやっぱり厳しいところではある。ただ、やり方はいっぱいあるんですけどね。ディストリビューターもセールスまでやらせないとか、デリバリーだけさせるとか、何とでもやりようはあるんでしょうけど、まあ厳しいですよね。
東:そうすると、MTはやっぱり直販でやるのが理想。
森辺:理想ですよね。その直販でやるための修行をやっぱりしないといけないわけですよ。1回適当なディストリビューター使ってやっちゃって、最初だからまあいいやと。最初は1億、2億売れればいいやと。それが5億になって、10億になって、20億まで来ましたというときに、お、このマーケットで結構シェアが1~3%ぐらいまで見えてきちゃったぞと。適当に輸出していたら、みたいな。これから本格的にやりたいと思っていたときに、20年もやってきたそのディストリビューター切れるかといったら、切れないわけですよね。そうなっちゃうから、やっぱり最初がすごく重要で、1回つかんだところを切るなんというのは現実的にもう難しいわけですよ。だからそこはやっぱり、長期で戦略を立てた上で、どのディストリビューターにするのかとか、使うのか、使わないのかみたいなことは考えていかないと、厳しいですよね。
東:そうすると、やっぱり最初、MTやるにしても、どこのディストリビューターと組むかというのはしっかり見極めないといけないと。
森辺:そうですね。見極めないといけないし、将来、じゃ、この市場に現法を出して本当にやっていくということになるのか、ならないのかとか。しないんであれば、ずっとディストリビューターでいいと思うんですよ。例えばシンガポールとか、香港とか、台湾とかは、ある程度マーケット限られているから、もうここはずっとディストリビューターと二人三脚でやっていこうみたいな話であれば、それはそれで構わないと思うんですよね。ただ、そうじゃないポテンシャルのあるような国だと、やっぱりなかなか難しくて、ASEANの方なんかで、例えばインドネシアでもフィリピンでもいいですけど、MTマストでTTにポテンシャルがすごいあるような国で、今までは何か適当に輸出してMTだけやっていたんだけど、今このタイミングになって、TTもやらなきゃいけない。そうすると過去10年間MTで頑張っていたディストリビューターにTTやらせるといっても、そもそもMTしかやれない、スキルセットしか持っていないディストリビューターだから、TT向きじゃない。一方で、じゃ、TTの一番しんどいところだけやるために、新規のディストリビューターをアサインしたとしても、そのディストリビューターにとっては、MTのおいしいところは別のところにとられて、自分たちだけTTかよみたいな、そんなのやってられないよみたいな話になっちゃうんですよね。そうするとやっぱり、安易にそれを決めるというのも違うんですよね。
東:わかりました。じゃ、今日は時間が来たのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了(9:02)>