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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃ、森辺さん。前回MTの参入戦略というか、やっぱり小売りを限定的に選んで、きちんと戦略を立てて参入していくべきですよというお話をしたんですけども、そもそも参入するじゃないですか。棚に並びますと。並んだ商品、日本の商品は、必ずしも現地の人にとって、中国人、タイ人でも、ベトナム人でも、知っているものではないじゃないですか。そうすると、そこがやっぱり日本で売れているから、現地でも売れるという錯覚を起こすというのは、森辺さん言われていましたけど、そこをどうやって、やっぱり売るサイクルをつくっていくのかというのは、森辺さんなりにどう思いますかというのと、その辺ってぶっちゃけどうなんですかねというのは。
森辺:一番手っ取り早いのは、やっぱり店頭プロモーションなんですよ。その売っている現場の目の前で、いかにその商品を知ってもらうか。棚に何千種類という商品が置いてあるわけじゃないですか、コンビニ行ったら。スーパー行ったら何万種類だし。そうすると、その中で自分たちの商品の手にとってもらうためのプロモーションをやっぱりメーカーがやらないと、認知度ゼロと思ってやった方がいいと思うんですよ。例えば日本のコンビニに行って、「僕は明治のミルクチョコレートがないと困るんですよ。森永のミルクキャラメルが置いてないと困るんですよ。ハイチュウが置いていないと困る。ロッテのガーナチョコ置いていないと困る」。これ多分日本人みんな困るわけじゃないですか。けど中国人やタイ人やベトナム人やインドネシア人やフィリピン人にとっては、森永のハイチュウが置いてなかろうが、ロッテのガーナチョコが置いてなかろうが、基本困らないわけですよね。そうすると、彼らの国に行って、その商品を標準化させて、デフォルト化させて、置いていなかったら困るという世界観をつくろうと思っているわけですよね。それが2、3年で実現できるなんということを、まず思っちゃだめですよということはすごく重要で、それは棚に置いてみたらわかりますよ。数百万か数千万かけて棚に置きました。全く売れませんから。それをいかに認知させて、売れて、リピートさせるかということを、特定の小売りの特定店舗数で地道にやっていく。それをどんどんどんどん店舗数を増やして、1店舗当たりの売り上げを認知上げながら延ばして、ひいてはマーケットシェアというものにつながっていくわけなので、そこの辛抱が最初の部分の覚悟でないと、なかなかやっぱり難しいというのがあって、認知はゼロと考えた方がいいと思うんですよね。それがなければ消費者が困るかというと、絶対困らないんです。困らないところに困る世界観をつくりに行くということが、日本の消費財メーカーの最大で唯一のミッションなわけですよね。だからそこの意味を本当に考えないと、グローバル戦略というのはなかなか難しいと思うんですよ、製造業にとっても。これサービス業でもそうだと思うんですけど、海外に行くと、そこにはなかったものなわけじゃないですか。なかった、困っていないわけですよ。でも、それを使うことで便利になったり、幸わせになったり、何かハピネスを感じたりということになる。けど、それを知らないわけですから、いかにそれを体験させて、実感させて、リピートさせるかというところへの投資なので、棚に並べることなんというのはどうでもいい。むしろ誰でもできる。その後の方がすごい重要だというのが本質論のところなんですけどね。
東:そうするとやっぱり、知らないものをまず知ってもらうことから始めないと、どうにもならないでしょうということですよね。
森辺:ならないです。で、よくあるのが、並べたんだけど、やっぱりコストが高いよねとか、下げるためにパッケージの入り数変えなきゃねとかという試行錯誤が生まれてくるわけじゃないですか。試行錯誤は置く前に済ませておいてほしい。何でかというと、置く前わかる話だから。それは済ませた上で置きますと。純粋に認知活動というものを店頭プロモーションでやるということに、やっぱり置いた後はフォーカスしたり、置いた後にやっぱりパッケージのデザインがとか、入り数がとか、値段がとかということを、置いた後の若干の調整はいいですけど、根本的な調整が入るんだとすると、それは間違いですよね。
東:なるほど。そうすると、BTLを、認知をさせる普及活動を地道にやっていくしかないと。
森辺:そうですね。
東:ブレークイーブンなのか、どこかで一気に広まるというタイミングがくると思うんですけど、やっぱりそれは地道な活動をやっていって、どこかのタイミングで広まるというのを待つしかないということですね。
森辺:そうですね。当然そのどこかのタイミングの「どこか」ということは、経営上すごく重要なので、我々はその推測を出すわけじゃないですか。仮説を出すわけじゃないですか。我々がやっている仕事というのは、棚をとると。棚をとるんだけど、できる限り安くとるということ。けど、こんなことは我々にとっては朝飯前で、どちらかというと棚をとった後に、そこで認知をさせて、商品を売っていくかというところに、我々の業務の7割、8割は来るわけですよね。その7割、8割の活動の中から、一気につき抜けるタイミングがどこなのかということを予測してはじき出すという。そう考えると、やっぱり2年、3年ぐらいのタイミングではじき出るというタイミングになると思うんですよね、どんなに早くても。だからそこまでの辛抱、根気というのはやっぱり1つあるし、店頭プロモーション大変ですからね。なので。でも、それをやってでも、後での利益につながるわけですよね。しっかり考えていかないといけないねというのは思いますけどね。
東:わかりました。じゃ、それをざくっとですけど、具体的にどうやって、そうは言うけど、どうやったらいいのかとか、それをどのタイミングでどこまでセッティングしたらいいのかとか、ちょっと細かい話で悩みを抱えている人もいると思うんですけど、大枠のアドバイスでいいので、森辺さんなりにちょっとどういうスタンスでやったらいいのか、どうかというのはあるんですか?
森辺:まあ、このポッドキャストは、競合さんだからね(笑)。
東:言えるところと、言えないところと。
森辺:多くのコンサルタントの方とか聞いているから、あれなんだけど、消費財メーカーさんの方、聞いていて、僕がこの何回かで話していることが、全くピンとこないとなると、もう自力ではこれは無理ですよ。だって、知識つけるのに、やっぱり僕15年やっていますから。かかってくるし、それはもう無理なので、お電話ください――というのが1つですよね。何かピンと来ているよと。なるほどと思った人は、恐らく頑張れる。できる、できないがわからない。ただ、頑張れると思うんですよ。そういう人に向けてお話をすると、大枠では、まずMTのスーパー系なのか、ドラッグ系なのか、コンビニ系なのか。どの系統に自分たちの商品が最もマッチしているのかというのを選定しますと。それを選定したら、その例えばドラッグ系だったら、ドラッグ系の中の上位3社の中の1社もしくは2社。どこと最初やっていくのかということを決めます。向こうも独占くれるといったら、力入れてくれますから、どうせ1,000店舗なんかに置いて売れなかったら、返品の山でえらいことになるわけだから、300店舗ぐらいにフォーカスをして、特定エリアの特定店舗、そこのリスティングフィーをできる限り値下げをさせて、そこに置きますと。そこに置いて、店頭プロモーションでその300店舗の1店舗当たりの売り上げをとにかく上げるということを、半年間集中します。それがある一定の基準に上がると、小売り側が店舗数を増やしていこうよと言ってきますと。そうすると、300店舗、500店舗、700店舗、1,000店舗、2,000店舗に上げていくと。上げていった、増えていった店舗の一店舗二人の売り上げを店頭プロモーションでどんどん上げていくと。そこまでいくと、大分認知がされるということになるので、そんなに頻繁に店舗プロモーションもやらなくてよくなる。回数が減りますと。やるべき店舗が減ります。そのタイミングになってくると、別の小売りから声がかかってくる。リスティングフィー要らないから、うちの小売りに置いてくれと。もしくはリスティングフィー安くするから、うちの小売りに置いてくれ。そのタイミングになると、一気に黒字のラインに突き抜けて、マーケットシェアが上がってくるという、この順番でやっていくという話なんですね。最初に何かとにかくやるぞといって、ドンと1,000店舗やったりとか、あと選定する系統を間違えちゃったりとか、あと、選定する小売りを間違えちゃったりとかってやると、大きな失敗になるし、あと、置いてから、うわ、ダメだったというふうなことに気づかないこと。価格、商品が本当に認知されるのが、価格が本当に合っているのかということは、もう大前提として、入れる前に整備をしていくという流れじゃないかなと思うんですけどね。
東:わかりました。じゃ、ちょっと今日は時間が来ましたので、これまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了(11:22)>