東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん引き続き上海からなんですけれども、この間の前回・前々回と関係性と交渉ということを言われたんですけど。
一昔前と言ったらいいんですかね、10年前ぐらいだと「関係性がすごい中国ビジネスは重要だ」みたいな話があったじゃないですか。その関係性を言われてるんだと思うんですけど、その関係性がどう重要なのかっていうのがいまいちピンと来ない人もいると思うんですよね。その辺をまず解説というか、中国の関係性っていうのはどういうことなの?みたいな。
森辺:僕が感じてるのは、中国語で「関係(クアンシー)」って言うじゃないですか。10年15年20年…もっと前からずっと言われてるのかもしれないんだけど、そういう「関係(クアンシー)」ではなくて、今中国って新しい世代の中国人の、新しい関係作りっていうのは出来てきてる気がしてて。昔のいわゆる「関係(クアンシー)」ってやつは、日本人にはとてもじゃないけど本当の意味で握る関係って作れなかったと思うのね。もっと中国中国してる「関係(クアンシー)」なんだよね。けど、今の30代とか20代とか、40歳くらいまでの新しい世代の人達の関係っていうのは、どちらかというと我々の昭和の時代の関係に近しいところに、同じ関係も変わってきてるんじゃないかと思っててね。
おじいちゃん中国人の「関係(クアンシー)」と、今の若い世代の関係ね。今の若い世代と僕らはやりとりするわけじゃない。そうするとそこがもう少し、我々にとってやりやすい関係になってきてるっていう気がするんだけど…こんなんじゃ分かんない?
東:分かると思います。
森辺:分かるかな?
東:どちらかというと、日本的と言っては変ですけど、我々が感じる関係性に近づいてるっていう話なんですよね?
森辺:そう。昔の中国の関係は、「中国人じゃなきゃこれ無理だ」っていう壁があったんだけどね。今は近づいてるんですよ。ちょっと昭和の日本みたいなね。だから、余計やりやすいから余計に今中国だと僕は思うんですけどね。
東:その中で、当然棚代っていうのは、資本があって出せば入ることはできます。それは森辺さんの提言の通り交渉…ネゴシアチブルなので、基本的には交渉はできるものですよと。交渉しようがしまいが入ったとして、入ってからまた一段階あるじゃないですか。そうすると、そこのハードルを越えても、そこで売れないと棚から撤去されてしまうみたいな、独特のルールが中国含めアジアでありますけど、それをどう乗り越えてくのかっていうのは、一つ悩みを抱えている企業さんもいると思うんですよね。
森辺:まず重要なのは、短期でシェア上げるとか売上あげるとか利益が出るなんて思っても、絶対無理。中長期で考えないといけない。3年5年の計画の中で、どうやっていくかっていうことを考えないといけないし、リスティングフィーは。
それはパワーゲームやるんです、と。「僕達はP&Gです」「ユニリーバです」っていうんだったらね、キャッシュフロー何兆でパワーゲームやりますよと。10社の小売、各2000店舗ずつ一気に商品投入します!と。リスティングフィーはバルクで買って値下げして、一気にドカーン! 「数億です」「数十億です」みたいな。
そんなことやれないじゃないですか、日本の企業は。そうすると、少し前アジアでも話したかもしれないけど、自分達の商品が最もふさわしい小売流通の種別が何かっていうことを、まず判断する。ドラッグなの?コンビニなの?スーパーなの?どれなの?それを選んだ後に、ドラッグだったらドラッグの中のどのプレイヤーとまずやっていくかってことを考えた方がいいと。
なぜならば、全部一気にやろうと思うと、2000店舗に商品置いて2000店舗に3SKUずつ商品を置いてリスティングフィーの単価掛けたら、ものすごい額じゃないですか。それで「4か月以内に月間300個売ってください」と。「売れなかったら棚撤去ですよ、リスティングフィー返金なしです」なんて言われて、返ってこない。で、基本は委託じゃないですか。そうすると、2000店舗に一気に置いた、3000店舗に置いた、全部返品ですよね。返品も、日本みたいに綺麗に再販できるように返ってくればいいけど、基本グチャグチャ。そうすると、そんなのやってられない訳ですよね。
そうすると、いかに絞った・特定した小売と、ストラテジー含めてじっくり話し合って関係性を作った上で入れる。関係性を作って入れれば、4か月の間に売れなくても絶対撤去されない。だって、一緒にその目指してる方向性に向かってやっていくわけだから、思いもあるしね。彼らの中でもプライオリティも上がるし、社内調整もしてくれるし。
それをやって入れたら、今度は日本のメーカーさんが理解しなきゃいけないのが、結局中国では認知ゼロってことなんだよね。日本でどれだけ売れてるか知らないけども、中国では認知がゼロ。その中で、どうやって認知を上げていくかっていうことがすごく重要なので、200店舗でATLやったって、水をザルですくうみたいな話しでしょ?なので、いかにBTLの中でも、200店舗の店舗プロモーションをやって、周辺地域住民の認知度を上げるか。そこで商品がリピートするっていうことは、その商品はその地域住民に求められている商品であることが立証できるし、そのプライシングも、アフォーダブルなプライシングだってことが立証できる。
そうすると、週販・日販いくら売れるか、その最大値がどれぐらいかっていう数字が見えてきて、それが法則になるわけじゃないですか。そうすると、今度は小売が店舗を増やしましょう、と。A店としかやってなかったのが、今度B小売もC小売もD小売も取り扱わせてくれって言ってくるわけですよね。そうすると、B・C・Dの小売とはリスティングフィーの交渉が非常に楽になると。これをいかに3年でやるかとかっていう風なシミュレーションをしないと、中々上手くいかない。
ひどい会社でね、「ある程度リスティングフィーかけます!」「2000万くらいやりました!」ドーンと、日本企業にしてみりゃ結構ダイナミックにやって、「日本で売れてるからこっちでも売れるよね」って置いたんだけど全然売れないから、半年ぐらいして棚から撤去で悲惨な目にあって…っていう例なんていっぱいあるじゃないですか。だからそこですよね。
整理すると、置くための関係をまず小売と作る。ストラテジーまで一緒に話す。で、初めて置く。そうすると関係ができていて一緒の目標に対して、統一のストラテジーを実行していくわけじゃないですか、一緒に。なので、仮に初期段階に想定外な売上になったとしても、撤去されにくくなると。で、置くというのはすごく特定の店舗からやって、BTL店頭プロモーションでの成功モデルを確立してから店舗数を増やすっていうことをしないと、認知がないので絶対に売れない。置いても売れないっていう話しなんですよね。それがすごい日本とは違う所じゃないかなと。
日本だと、新製品出したら電通・博報堂が作った製品ストラテジーコンセプトみたいな資料を小売にバーンと出して、有名な会社が作ってるから当然小売も「よし並べましょう!新製品ですね、気合入ってますね」と。で、そのままCMドッカーンと流したら、全部の小売でドーンと売れる、みたいな。年間50個か100個か分からないけど新商品出して、2~3個当たればいい、みたいな話だと思うんですけどね。
でもそんなことできないじゃないですか、中国で。そうすると、地道だっていうことを理解しないと、中々上手くいかないっていうのは、あるんじゃないかなと思いますけどね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。