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【対談】グローバルの流儀

グローバルの流儀 フジサンケイビジネスアイ紙 特別対談シリーズ『グローバルの流儀』は、弊社代表の森辺がグローバルで活躍する企業の経営トップにインタビューし、その企業のグローバル市場における成功の原動力がどこにあるのか、主要な成功要因(KSF)は何かなど、その企業の魅力に迫る企画です。本企画は2015年にスタートし、今年で9年目を迎えます。インタビュー記事は、新聞及び、ネットに掲載されています。


Vol.6 願望戦略ではなく、チャネル戦略を

作家・ジャーナリスト 莫邦富 氏

森辺: 中国市場で明暗を分けた「花王」と「レブロン」の話をお聞かせ頂けないでしょうか?

モー: 「花王」も「レブロン」も実は中国に進出して非常に長かったです。 しかし、「レブロン」は撤退しました。私は個人的に、もの凄く惜しいと思いました。なぜ、惜しいと思ったか? レブロンの中国名は「露華濃(Luhuanong)」です。 膨大な数の唐詩の中から、発音が近く意味も美しく、香水や化粧品のイメージにフィットし、楊貴妃の美貌を謳うこの表現をよくぞ探し出したものだと感心した。 しかも李白は唐の詩人だから著作権料など厄介な問題も発生しない。効果的なうえに経済的なのだ。

一方、かなり早く中国に進出した「花王」ですが、実は長い間中国ビジネスは赤字に苦しんでいました。 黒字化が実現できた最大の理由は、上海の家電メーカー「上海家化聯合(上海市)」と手を組んだことです。 当初は、販売の一部分を依頼することに留まりました。 しかし、今まで売れてなかった商品が、家電の社内係の販売ルートに乗ると、どんどん売れたわけです。 私はやはり日本人の国民性と中国の国民性が微妙に違うと感じます。 日本人はやはり職人型的なところで、中国ではやっぱり商人気質が強いのです。

森辺: 華僑商売と言われるくらいですからね。

モー: 本来はお互いの良さを生かせば良いと考えます。 しかし、日本のみなさん、多くの企業は自分の品質の良さにある種、酔いしれているところがある。

森辺: 同感です。

モー: 残念ながら日本企業はこの商品は日本国内でも売れている。 長年売れている評価の高い商品だから価格が高いのは当然であると。 なぜ、買ってくれないのか。 それは消費者が商品を理解してくれないからだと。

森辺: まさにマーケティングミックスとか、4Pが抜けていますね。

モー: 抜けています。

森辺: だから、参入戦略が議論尽くされていない、もっと市場の実態を理解した上で参入戦略を作らないと、 結局お金を損して撤退という話になってしまいます。 そこはすごく重要なポイントですよね。

モー: 価格を落とす。もし落したくないのなら逆にこの価格を維持しながら、販促期間を設ける等ある程度限定し、 期間の中で色々工夫する必要があるんです。 こういった工夫などを全然していないので、 ただうちの商品はブランドとしてはこれくらい売りたいという願望作戦では無理ですよ。

森辺: なるほど。そうですね。願望戦略が強いと思います。 願望戦略で参入していくというのは、本当多いですよね。

モー: 本当に多いですよ。

ゲスト

莫邦富(モー・バンフ)

莫邦富 (モー・バンフ)

作家・ジャーナリスト

Mo Bangfu

作家・ジャーナリスト。1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。日本にて修士、博士課程を修了。95年、莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させた。また日本企業の中国進出と日本製品の中国販売に関して積極的にアドバイスやコンサルティングを行っており、日中の経済交流に精力的に取り組んでいる。

インタビュアー

森辺 一樹

森辺 一樹(もりべ かずき)

スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師

Kazuki Moribe, SPYDER INITIATIVE

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。