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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 16 チャネルの時代に必要なマーケティング

著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長

グローバル・マーケティングへの正しい理解を

前回、Vol. 15でお話しした通り、今や世界はチャネルの時代です。だからこそ、 グローバル・マーケティングに対する正しい理解が求められています。もし、日本国内の輸出商社か海外の輸入商社を使って商品を出すだけのビジネスをするのならば、メーカーから国内の輸出商社や問屋へ、もしくはメーカーから海外の輸入商社や問屋へ商品を売るだけのことであり、国内から国内、もしくは国内の港から海外の港までの商売です。それはグローバルでも何でもなく、グローバル・マーケティングという概念はまったく必要がありません。これは、ただ単に「出荷」しているだけだからです。「出荷」することにマーケティングなど必要はありません。この輸出型輸出ビジネスを脱却して、自分たちの商品が相手国の港からディストリビューターへ、小売店へ、消費者へと続くチャネルをしっかり 把握し、輸出型チャネルビジネス、もしくは、現産現販型チャネルビジネスへと転換していくために必要となるのが、グローバル・マーケティングなのです。

グローバル・マーケティングなしに高いシェアは望めない

本書の「はじめに」で、グローバル・マーケティングとは、「地球規模で市場を捉え、世界のニーズに応えて利益を上げること」だと述べました。日本において一般的に考えられているマーケティングは、消費者に対して、どうしたら買ってもらえるのかという販売促進に関する狭義で捉えられがちです。しかし本来のマーケティングとは販売促進に特化したものではなく、市場調査から始まり、商品を開発、生産し、販売して代金を回収し、必要に応じてアフターケアを実施すること、の一連のプロセスを指す広義で捉えるのが正しい解釈です。これを世界中で実践することこそ、グローバル・マーケティングなのです。

アジア新興国では、このグローバル・マーケティングを正しく理解、実践し、チャネルビジネスを行うことによって、さらに大きなマーケットシェアを獲得し、利益を出していくことが可能になるのです。

欧米の先進グローバル消費財メーカーは例外なく、グローバル・マーケティングの概念に基づいてチャネルビジネスを展開しています。大きなマーケットシェアを獲得する上で、最も重要な現地の消費者や小売、そして、そこへ通ずるディストリビューション・チャネルを理解しようとせず、見ることすらせず、ただひたすら、国内外の卸や問屋に商品を売っている=出荷しているだけでは、リアルな市場は決して見えません。そして、リアルな市場を見ないのであれば、チャネルも不要であり、チャネルが不要であるならマーケティングも不要であり、マーケティングが不要な会社が高いマーケットシェアは取れないということにつながるわけです。グローバル競争がますます激しさを増す現代において、もはやグローバル・マーケティングなしでは太刀打ちできません。だからこそ、グローバル・マーケティングに対する正しい理解が必要なのです。