コラム・対談 Columns
本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。
Vol. 79 日本で負けて世界で勝つ
著者:森辺 一樹
日本市場で負けても世界で勝てば勝ち
現在、私の支援先の8割は大企業になりますが、残り2割の中堅中小企業に関しては、大企業以上に早く海外で成果が出ています。海外展開においては、スタートラインが企業の規模に関係なく同じです。多少、大企業のほうが早く海外に出ていたとしても、大企業ならではの人事異動等も相まって、なかなかノウハウが蓄積されていきません。
また、多くの大企業は動きも遅く、今のアジア新興国のビジネスのスピード感には追いついていないのが現実です。国内では、大企業と中堅中小企業では圧倒的な差があり、戦っても勝てないことがわかっています。しかし、勝手のわからない海外市場では大企業でも身動きがとれないのです。そういった意味でスタートラインは同じなのです。だからこそ、中小企業が大企業よりも早く動けば勝てる可能性は十分にあります。国内で負けても、グローバルで勝てれば、トータルで勝ちです。そんなロマンがあるのも海外市場の魅力だと思います。
実は中堅中小企業のほうが海外向き
皆さんは、海外展開における中堅中小企業の最大の強みはなんだとお考えでしょうか?私は、「スピードの速さ」だと思います。逆に弱点についてはどうでしょうか?私は、「ノウハウのなさ」だと思います。
多くの中堅中小企業は、組織としての強さで言えば大企業には到底かないません。しかし、トップが進出をすると決めるまでのスピードや、決めてからのスピードは大企業にも勝ります。
やると決めたら即やる、そして 誰がなんと言おうが、トップがやめると言うまで続けられる強さが中堅中小企業にはあります。決断力と言えるかもしれません。こんなことは大企業ではまず無理です。組織が大きすぎて、トップがやると決めるにも時間がかかるし、決めてから動き出すまでにも時間がかかります。
一方で弱点は、中堅中小企業は、そのトップの速い決断の実行フェーズに対して組織としてのノウハウが足りず、なかなか効果的に進まないことです。この中堅中小企業の強みは、アジア新興国に出るとさらに効果を発揮します。なぜなら、アジア新興国のディストリビューターの9割はオーナー一族経営の華僑だからです。ビジネスをその場で即決即断する感覚が非常に似ています。
この「決める力」は、ことアジア新興国ビジネスでは大変重要で、どう決めるかももちろん重要ですが、速く決めるということも同じぐらい重要です。それができる中堅中小企業が仮に先ほど弱点としてあげたノウハウを持てれば、大企業以上にアジア新興国では成功すると信じています。だからこそ、グローバル・マーケティングの領域で適切なコンサルタントを積極的に活用するべきなのです。中堅中小企業でそうした人材を育てるのには時間がかかりすぎます。
コンサルタントを使い、そのノウハウを取り込みながら海外展開をするべきなのです。ないものを、また作れるかどうかわからないものを、時間をかけて自社内で作るより、あるものを外部から持ってきて使うほうが、よっぽど効果的であり、費用面でも安価なのです。