東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、このPodcast番組もついに100回目を迎えまして、記念すべきゲストが。
森辺:記念すべきゲストはもちろん明治大学の大石教授をお招きしております。大石先生、どうぞよろしくお願いします。
大石:100回目にお招きいただきましてありがとうございます。
森辺:第1回目のゲストで出演していただいてから、100回目は大石先生という風に決めておりましたので、本当にお受けいただいて嬉しい限りで、ありがとうございます。
大石:またすごいアクセスが15万以上あるということで、そういうところに出していただいて、こちらこそ感謝します。
森辺:いえいえ、ありがとうございます。15万ダウンロードを突破しまして、ちょうど大石先生が出ているところがいっきにあがるので、我々としては97回から100回でまたダウンロード数が上がっていくのではないかなと思って期待をしているのですけど、よろしくお願いします。
大石:よろしくお願いします。
森辺:97回からずっと大石先生のお話を伺ってきているのですが、日本企業のアジア新興国のチャネル戦略ということでいろいろなお話を聞いているのですが、いろいろな話を聞いて素朴な質問なのですけど、チャネルがすごく重要だというお話で、そのあとプライスがすごく重要ですよという話があったと思うのですけど、いろいろな会社の事例などなど僕気になっている会社が2つあって、全然面識もあれもないのですけど、1つがうまい棒を作っている「やおきん」という会社さんがあるのです。うまい棒は誰でも知っているではないですか。もう1つがチロルチョコを作っているチロルチョコという会社なのですけど、これ両方ともプライスはアジア市場にぴったりとあっているのです。10円とかで。コンビニでも10円で売っているのですけど、コンビニの売価で10円ということは、コンビニエンスストアが何割とって、そのコンビニに納めるまでに1つ販売会社がかんでいたりすると、何となくメーカーのコスト構造が想像できてしまうのですけど、そう考えると10円以下で出すことも可能だなというイメージを持っていて、既に現地適合化できてしまっている商品なのです。日本で有名で、誰でも知っている日本の食文化ではないですけど、チロルチョコとうまい棒で育ったみたいなのがあるのです。僕1974年生まれなのですけど、ああいう会社はアジア向きではないかなと思って、すごく思うのですけど先生どう思います?
大石:それは、僕はいわゆるダイソー戦略と言っているのです。個別企業が出しては駄目かもしれませんが、普通のメーカー、特に日本のメーカーというのは良い製品を作るためにすごく技術革新であり生産工程をしっかりとして品質管理をして、ただそれだけコストもかかるから高価格になると。それをアジアに出すとMTでトップ層に売るしかないと。そういう話です。ダイソーというのは最初から100円と決めているわけです。100円ショップです。その価格がチロルチョコもそうだし、うまい棒もそうだし、そこに合わせてどういう製品を作り込んでいるか、コスト構造をするかというのを長年同じ価格を維持するためにいろいろな努力をすると。ただ、先に価格があってそれに合わせて製品づくりをするというか、ここの価格は大前提となってくるわけです。これは、途上国ではすごくある意味大切なのです。やはり購買力がどうしても低くなってくると、アポータビリティーという購入可能価格というのが絶対必要なわけです。これを無視して、これは製品がいいのだからこれだけの値段になるのだ、どうしてもなるのだ、仕方がないのだというのは、やはり作り手方のゾンマン(05:05)だと思います。だから途上国においては、そういうダイソー戦略ではないですが、先に価格を設定してという。チャネルを作ってもそこに製品を流してもその価格がリーズナブルな価格でなければ、それは全然売れないわけです。だから2番目に価格が来るのだと。その地に製品は日本から持っていったやつだけでは駄目だなという形で抵抗担ぎ考えていくわけです。まずチャネルを作る、そしてリーズナブルな価格をどう維持する。そのためにはどうしたらいいのか。もちろん部材の現地調達とかということもあるでしょうけど、やはり段階はあるので、最初は日本からすれば輸出という形もあるでしょう。そのことを早く気付かないと、いい製品を流していっているのになぜ売れない?とかね。これでいつも悩まないといけない。消費者が分からないからだと話になる、違うのだ。メーカー、あなたが分かっていないのだよという話になるわけです。
森辺:チロルチョコなんてあれ品質はいいのだと思うのですけど、夏場とか結構過酷な状況のところに置いても結構溶けないのです。僕実験してみて、新興国は暑いではないですか。完全にMTではなくてTTなのです。MTに行くとスニッカーズがいたりいろいろなのがいるではないですか、ハーシーズがいたりと。TTだなと思って、この暑さに対応できるのかなとちょっと置いて見ると結構溶けにくかったりとか。うまい棒もよく新興国でお菓子を食べると、袋を開けたらスナックがネチョっとくっついているというか、そういうことがあったりとか、固まってしまっているとかあるのですけど、結構中の袋が銀色の、ステンレスではないですけど、くっつかないような加工にできていて、これをこの値段でセブンイレブンに出すとはなかなか優れものだなと。ローソンだったかな。優れものだなと思って。シミュレーションをしていて、本当に彼らは、それこそ日本で言ったらチロルチョコはロッテとか明治のミルクチョコレートとかチョコの世界で言ったら日本で勝つことは恐らく難しい。うまい棒もカルビーやなんかがあって、スナックの世界で、日本で勝つのは難しい。ただこういうすごくキラーコンテンツをもった企業がアジアのTTマーケットで成功すると、グローバルで見たときにものすごく可能性があるなと思っていまして、この番組を聞いていたらチロルチョコとうまい棒の社長、ぜひ連絡くれないかなと半分期待しながら話しているのですけど、本当にもったいないなと。結構いい企業いっぱいあるのですよね。
大石:今それも含めてお菓子メーカーは本当に急速に国際化をしようとしているわけですが、多くのところは海外の売上高比率は1桁ですよね。一部のものを除けば。本当に今からだと思うのですが、結構良いものを持っているのです。さっき溶けないチョコだったら森永製菓も持っていますし、焼きチョコというのを持っているし、いろいろなものをやっているのだけど、まだようやく手探りで始めたばかりですよね。だから、そこが何らかの形でうまくパートナーなりさっき言ったチャネルづくり、パートナーとかタイミングさえあればあれだと思うのですが、そのときには経営者は絶対やるぞという、これを全世界に広めるぞという、その覚悟がない限りは誰か頑張ってきてうまくいったらねみたいな形ではないです。
森辺:もったいない気がしていて、僕は小学校を卒業してからシンガポールのアメリカンスクールで育っているのです。そこでM&M’sというマーブルチョコあるではないですか。あれみんな食べるのですけど、マーブルチョコと言えばM&M’sみたいな。美味しいと思っていたのですけど、帰国して日本で日本のメーカーのマーブルチョコを食べたらあれ?と思って、こんなにチョコは美味しいのかと思ってしまって、食べ比べても日本のチョコレートのほうが絶対美味しいのですよ。だから、アジアの人たちも一番最初に食べたチョコの味をうまいとかまずいとかではなくて、基本それがチョコの味と認識するわけではないですか。だから、すごくもったいないなと思っていて、日本のお菓子は世界一だと思うのです。何をとっても。だから、頑張ってほしいなとすごく思うのです。なるほど。あと先生、フマキラーさんなのですけど、これはまさにやはりおっしゃっていたTTをターゲットとして中央に攻め上がっていったということを先ほどお話聞いたのですけど、この辺をもう少し詳しくご説明いただけますか?
大石:ローカル企業とかアメリカの企業なんかが先に入っていたので、フマキラーは市場に後から入っていくのです。なので、バンゴンとかローカルのライバル企業もあって、そこが非常に強くて、今でも強いのですけど。
森辺:緑のやつですよね。
大石:そうです。そういうものがあるので、彼らとしてはどういう戦略でやっていくかということをやった。最初日本の製品を持っていったのだけど、蚊が死なないと。向こうのは強くて、最終的にはその5倍の強さのものにするのですけど、でもそういう製品の改良はともかく、チャネルを作っていくのですが。ただ、面白いのが普通日本だとパッケージに入って2つが1つのリングになって、箱に5個とか10個入っていると売れるではないですか。実は都市部でフマキラーを売っているのは、2個で1巻きのやつです。一緒にガチっとなっているやつ。これを売っているのです。ローカルで売っているところは箱で売っているのです。ちょっと変でしょ?ローカルが1巻きではないかという風に思われる。そうではなくて、箱で売っているというのは小売店に箱で売っているのです。そうしたら小売店がそれをばらすのです。それでローカルの人たちは1個ずつしか買えないのです。2つで1つではなくて、今日使う分しか買っていけない。そういうことを非常に丁寧に1つ1つをやっていくのです。それをまさに綿で、あそこの面白いのは1つの地域に経営資源を投入してまずここを全部攻め落とすというやり方をするわけです。それで営業隊が2人1組でガーっとまわっていって、攻め落として、ここやったら次の州に移動するみたいな。これをずっと地道にローカルからやって、首都圏に向かってグワーっと。
森辺:そうするとワルンに入っているか、入っていないかということを細かくディストリクトで分けて細かくして。
大石:全部チェックしています。チェックリストがあって。
森辺:それはすごいですよね。入るのはまずいのではないかと、この辺の通りみたいなところも全部チェックして。
大石:やっていくわけです。ローカルを徹底的にやっていくと。しかしそこで捕まえて取引をはじめて、もちろんその後のケアも先にやられたり、チャネルをつくるだけではなくてそれをメンテンしないといけない。パートナーとの協力関係もそうですけど、それを構造的にやっていくとそこは離れないですよね。そういうTTは。それが結局シェアを安定させ、維持させて伸ばしていくという1つの力になっていくわけで、これには相当な努力が必要です。しかもチャネル構築には時間もかかる、費用もかかる、成果が出るのはずいぶん後になる。広告投資をバンとやれば知名度がバンと上がって売り上げもその時はパンと上がるかもしれないですけど、チャネルというのはせめて地道な作業だし、時間がかかりますよね。だからそれだけ覚悟を持ってやっていく、まさにアーキテクチャと言いましたけど構造を作り上げていかなければいけない。ここが大変な作業だと思います。
森辺:そうすると中長期でチャネルというアーキテクチャを描いていかないといけないしという話ですよね。短期で何かうまくいっちゃうかもしれないみたいな、そういうことはないですよと。ほとんどの成功しているところは苦労をしているということですよね。
大石:今自分が調べているのは、単純な長期的なアーキテクチャをどう作っていくかということが1つと、そのプロセスの中でどういう戦術が必要になってくるか。そのとき、そのときに必要なものとか、あるいは販路を確保していくために何が重要なインセンティブになるのかなと。何を提供すればそういう販路維持拡大できるのかというところがありますよね。だから長期的な戦略と短期的なそれぞれのステージで何をやるべきか。なかなか分かっているようで分かっていないと思うのですよ。
森辺:これも、ディストリビューターを使うにしてもその国のディストリビューターとかがどういうものなのかとか、どれくらいの利益を要求してくるのかとか、どこまでがディストリビューターの仕事でどこまでがメーカーの仕事と捉えているのかとか、あと細かいことを言ったらキリがないですけど、そういうことをある程度理解をしてディストリビューターと交渉に望まないと、いきなりこういって話をしてと言ってもなかなかこう交渉1つ難しいですよね。
大石:一時の、ティーアイワンのディストリビューターでみると、うちはMTしか使わないですよねというところもあるし、TTに強い。インドネシアで言うとグロシアなんかに出していくような卸しもあるわけです。ところが日本で卸屋さんというと、ちゃんと営業員がいて小売の市場開拓をやってくれるけど、向こうのグロシアなんていうのは、小売が買いにくるのを待っているようなビジネスをやりますから、全然やり方が違うと。その中で自分たちが日本のやり方を持っていってもうまくいくわけではないです。そうしたら卸しとの付き合い方、パートナーとの付き合い方も全然違うので、そこのところはケースバイケースとはいえ、ある程度の法則性があるのではないかなと思っているのです。フィリピンやインドネシアや他のところでもそうですが、やはりそこであるステージで打つべき手というのがあるような気がするのです。やはりそういうところをある程度分かってくれば他の企業にも使えるのかなという形を今考えているところです。
森辺:先生の研究も益々そういう方向に進んで、またそれあれですか?雑誌とかネットとかで、また。
大石:覚悟しますけど、いろいろなところで事例を含めてお話もしているし、B to Bもそうです。あるところの企業からご相談もあっているのですが、B to Bの場合もチャネルの問題とそこに製品適合の問題とプロモーションをどう打っていくかという、そのステージで考えていかないといけないのです。そういう点でいくと1つの事例で言うとダイキンが2010年に戦略を訴えて、それまで中国ではエアコンのベンツと呼ばれたいという形でやってきたわけです。それは中国は今でもその感覚は持っているのだけど、やはりそれだけでは広がらないので、そのブリュムゾンに戦っていくというのは2010年からやってきて、チャネルの拡大、製品の改良、そういうものもやってきているわけです。その辺のところは我々も学ぶところが非常に多いと思います。
森辺:楽しみですね。また先生のセミナーとか、またうちで先生をお招きしてやる講演でもお聞かせいただければと。
大石:勉強してその成果をできるだけ多くの企業の人たちに紹介したいと思っています。
森辺:先生、どうもありがとうございました。
大石:ぜひ、またこのPodcastにまた続きますように。200回、300回続きますように。
森辺:ありがとうございます。
東:頑張ります。
大石:失礼します。