森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、競争戦略についてお話をしていこうかなというふうに思っております。アジア新興国、ASEAN、インド、グローバルサウスを中心とした新興国市場における競争戦略についてお話をしていきたいなと。
日本企業の当該エリアにおける競争戦略を見ていると、いささか基準値を持たずして戦っている感がどうしても否めないなというのが印象で。競争戦略なんだけども、常にマーケットを獲るということは競争戦略の中にいるということなんですが、基本的にはあまり競合を意識した戦略になっていない。これはどういうことかと言うと、競合の脅威を具体的に可視化できていないという企業は非常に大きくて、例えば自分たちよりも安価な価格で品質が低いもの、汎用品をつくっているような企業は競合じゃないというふうに捉えたり、また、網羅的に、世界標準化で網羅的にグローバルに攻めているような、本当に超大手の先進的なグローバル企業はあまりにも強過ぎるので、これも競合じゃないと。大きいくくりでは競合なんだけども、自分たちが今、目の前で戦う敵ではないみたいな認識を勝手にして、マーケットエントリーしているケースというのが少なくないと。自分たちはいいモノをつくっているんだから、そこの市場でしっかりとやっていけばいいんだみたいな、こういう何か信念みたいなものが勝手に出来上がっていて、それが正しいと、それが正義だということで向かっているケースというのがあるんだけども。
じゃあ、客観的にそれを見たときに、そんな市場は本当にあるんだっけという話になってしまっていて。15年20年ぐらい前の中国を中心としたアジア企業の安かろう悪かろうの時代から、今、彼らに市場に大半を取られてしまったという状態になっているわけなので、そこの競争戦略の渦の中で戦う、マーケットに入るということはそういうことなんだけども、競合を意識しないということが非常に多くて、競合の脅威を明確に可視化できないと。例えば、彼らのマーケットシェアが高い要因というのは何なのか、どういう販売チャネル戦略なのか、具体的にはどういう規模のディストリビューターを何社ぐらい、どのエリアで、どういうふうに使って、それを自分たちのどういうスキルセットを持った社員が、どのように管理育成しているのか、みたいなことがまったく明確になっていないので。強いということは漠然と分かっているんだけども、「じゃあ、自分たちの販売チャネルと、彼らの販売チャネルを比べたときに、最低限ディストリビューターの数ではどうなんですか、劣っているんですか、劣っていないんですか」「いや、分かりません」と。「ディストリビューターの強さで言うと、劣っているんですか、勝っているんですか、どうなんですか」「分かりません」と。「劣っているだとしたら、どれぐらい劣っているんですか」「これも分かりません」みたいな、こういうケースが非常に多いんですよね。敵の脅威が分からないのに、競争環境、これだけ厳しい競争環境の中で打ち勝っていくなんていうのは、かつての80年代90年代までのね、日本企業しかつくれなかったとか、日本企業の独壇場の市場では競合を意識する必要はなかったわけですけど、ひたすらいいモノをつくっていれば、それは売れたので。なので、そのときの癖というか、感覚がやっぱり根強く残ってしまっていて。いや、そうじゃないよねと、市場にエントリーするということは、競合と戦うということなので、自分たちの昨年度、昨対比何%やるみたいなね、昨年度の自分たちと戦っていたのはかつての話で、今は競合と戦う話なので、そこの意識をやっぱり変えていかないとなかなか難しくて。じゃあ、どうすればいいの?ということなんですけど、基準値を持つということはすごく重要で、この基準値なくして競合に勝つなんていうことはできないし、マーケットシェアを上げるなんていうこともできないと。
次回この基準値について、少し深くお話をしていきたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。