森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、基準値についてお話をしていきたいと思います。前回の続きなんですけどね、競争戦略の話を前回させてもらって、その中で競合の脅威を具体的に日本企業は理解できていないというケースが非常に目立ちますよと。その中で基準値というものを1つ持ちましょうねというところで終わっていて、今日はその基準値とは何なのかということについてちょっとお話をしていきたいんですが。
基準値とはね、結論から言うと、目標や目的を達成するために必要な基準となる値のことなんですよね。その名の通りなんですけど。例えばでお話をすると、例えば10億円を売り上げるために、もしくは競合に打ち勝つために必要となる間口数、B2Cで言ったらストアカバレッジ、間口数はどれぐらい必要なんですか。B2Bで言えばユーザー数はどれぐらい必要なんですかと。じゃあ、その間口数を獲るために、そのユーザーを獲るためにね、B2Bだったら、ディストリビューターの数とか質って、質と言うと規模ですよね。どれぐらいのものが必要なんですかと。じゃあ、そのディストリビューターの中で必要となるセールスマンの今度は数とか、スキルセット、質ってどれぐらいのレベルのものが必要なんですかと。さらに、じゃあ、そのセールスマンの月あたりの活動内容ってどうあるべきなんですかみたいなものを、どんどん、どんどん、指標のブレークダウンをしていくんですよね。これがまさに基準値を明確にするブレークダウンで。ここを持たないと、じゃあ、10%のシェアを上げるためには、ディストリビューターが5社必要ですと。このディストリビューターも、こういう規模の、こういうことに長けたディストリビューターでないと駄目ですよと。なおかつ、ディストリビューターの中でもこういうチームを編成してもらって、最低何人のこのレベルのセールスマンがいないと駄目ですよと。このセールスマンが毎日何件訪問しないと駄目ですよと。訪問したときには、これとこれとこれをやってもらわないと駄目ですよと。これをやって初めて10億円になるんですよとか、競合が今ここまでやっているから、それよりも30%多くやっているので勝てるんですよみたいな話になってくるので。この基準値をまったく持ち合わせないまま、ただ市場で活動しているという、こういう状態。それでシェアが上がらない、競合に勝てないと、こういうことを言っているわけなんですよね。
そうすると、基準値を先に明確にしてしまうということはすごく重要で、勝つための基準値は何なんですか、もしくは目標を達成するための基準値は何なんですか。この観点からいくとね、数多くの日本の企業を診断してきているわけだけども、この観点でいくと、いや、そもそも10億円を上げられるようなチャネル構造になっていないじゃないですかと、プロモーション投資ができていないじゃないですかと、商品構成なっていないですよね、価格設定も違いますよね、ということが見えてくるので、基準値を先に明確にしないまま、目標や競合と言っても、なかなかこれは難しくて。本当に自分たちのゴールを設定したら、そこに到達するための基準値は何なのかと、その基準値を達成するための指標が何なのかと、それを、指標をどんどん、どんどん、ブレークダウンしていく、ブレークダウンすればするほど、具体的になっていくので。この基準値を持たずして、目標や目的を達成するというのはほぼ不可能ですと。こう考えたときにね、日本の多くの企業のマネジメントに目標数値はどれぐらいですかと、いや、今期は前年対比115%やりたいんですと、120%やりたいんですとかっていう話をするんですけど、そもそも120%やれる基準値とは何なのかとかね、もしくは中長期的に見たら競合にやっぱりシェアを追いつき追い越したいと。でも、追いつき追い越すための基準値は何なんですかというふうに問うと、やっぱりそこは、「えっ、何の話?」ときょとんという話が結構多いので、やっぱり自分たちの目標や目的を達成するために必要な基準値、これをしっかり持つと。そうですよね。
例えばなんですけど、プロ野球選手になるって決めたときに、ただだらだら練習していても、これはプロ野球選手になんかならないし、たまたま環境が良くて、ただ、だらだら練習する環境が非常に高いレベルの環境に置かれていれば、これはいいかもしれないけども、やっぱりプロ野球選手になるためには、この年齢で、こういうスキルセットに到達していないといけないということがあるわけなので、じゃあ、そのスキルセットに到達するためには今何をやるんだということをやっていくわけですよね。それができないと、才能がないからやめましょうみたいな話になるので、もしくは端からそれはできないのでやめましょうということになるので、無駄な球を打つ必要がなくなるということにもなるわけですよね。ちょっと例えが悪いよね。(笑)プロ野球選手になるのと、企業の戦略で、例えが悪い。すみません。なんですけど、そういうことなんですよ。基準値を持つということはすごく重要で、基準値がない企業が非常に多いなというふうに感じております。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。