森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今回は、ASEAN市場におけるデリバリー、配達ですね、Eコマースの宅配の、日本で言うところのヤマトとか佐川とか、そういう市場のことについてちょっとお話をしていきたいなというふうに思っています。
最近、海外出張も増えてきて、今年ね、『ASEAN6における販売チャネル戦略』という本を出したんですけど、その本の中でもね、少し伝統小売のデジタル武装みたいなお話を書いてますけども。コロナ禍によってASEAN6のEC化率って2倍~3倍に跳ね上がっていて、非常に、インドネシアを筆頭に高くなっていて。いわゆるライドシェアで有名なUberはASEAN手打ちして、ASEANはゴジェックとグラブが占めているんですけども。Uberは撤退をして、手打ちになって撤退をしたと。そんな中で、グラブであったりゴジェックは、ECの配達、シェアライドという、いわゆる日本だと車で人を運ぶんですけども、向こうだとバイクで人を運ぶというのが主流で、人も運ぶけどモノも運ぶみたいな、何でも運びますよということになっていて。近代小売とか伝統小売で、近代小売のECで買い物をしたら、近代小売じゃなくてもね、ECのサイトで買い物をしたり、近代小売が運営しているEコマースで買い物をしてもグラブとかゴジェックが宅配をするという、こういうふうになっているので。もともとASEAN市場ってヤマトとか佐川のいわゆる宅急便的な便利な存在がいないから、基本的にデリバリー、EC化率ってなかなか難しいよねと。EC自体はITの力でデジタル化でなんとでもなるけど、じゃあ、実際の物理的なモノを誰が運ぶんですかみたいな問題がね、どうやってクリアするんだろうという中で、ヤマトや佐川という存在がなくても、グラブやゴジェックがそれを担うという世界観が出来上がっていて。日本とは違うかたちでの進化を遂げていると。もちろんね、ヤマトとか佐川みたいな会社があるような国もあるんですけど。
そういう進化を遂げていく中で、デリバリーに対する重要度を、何をもっとも重要視しているかということも違うなっていう気がしてて、当然ね、日本の宅急便、佐川やヤマトも早くデリバリーするということをめちゃめちゃ重要視しているわけですけど、このライドシェアとかになってくると、この「早く」がいわゆるめちゃめちゃ重要で、たぶん翌日配達とかじゃなくて、数時間後配達みたいな、それぐらいのスピードで行われていて。とにかく早く運ぶということがすごく重要で。届いたものがね、食事がぐちゃぐちゃになっているとかって結構、全然あって。だから、ちゃんと運ぶというよりかは、早く運ぶということがすごく優先されているということと。
あと、誤配送が起きるって、これは非常に面白いなと思ったんだけど、誤配送が起きるっていうことよりも、日本の物流会社だと、いかに誤配送をなくすかということに神経を使うわけなんだけども、彼らはそこに神経を使うよりも、誤配送が起きたときにどう対処するかみたいな、そこが非常に重要で。例えば、顧客から「商品届いてないよ」って言われたときに、別な所に配達をしてたっていうことが瞬時に分かって、そう分かったときに同じ商品をまたすぐそこに配達を無料でやるみたいな、そういう対応力のほうに結構神経が注がれていて。ここって製造業でもそうなんですけど、不良品を出さないことに日本のメーカーは全神経を集中させていくんですけど、むしろ世界でシェアを上げていくような企業って、不良品が出さないということはもちろんそうなので、不良率をある一定水準まで抑えるんだけども、そこまで抑えたら、もうそれ以上の努力ってあんまりしなくて。なんでかと言ったら、そこの下って、それ以上の努力って、努力をする労力のほうが成果よりも大きいからなんですよね。ROIが悪いという話ですよね。不良品が1万個に1個出るという…。ごめんなさい。例えばなんですけど、1万個に10個出ると、ここまでは頑張るんだけども、日本企業の場合は1万個に1個しか出ないように頑張る。ここの9個を減らすよりも、もっと早く何万個もつくって、それよりも1万個で10個出たときに、その不良品だって言われたときに、それをポンポン、ポンポン、新しいものと交換するということに対応力を注いだほうがよっぽど効果があるという、そういう考え方をするんですよね。なので、デリバリーでもそうで、これって全然やっぱり発想の違いだよねというのをすごく強く感じる世界なので、必ずしもある一定のところまでいっちゃったら、不良率を優先するよりも、いかに不良品が出たときの対応力を優先するかと。デリバリーに関しても、誤配送は起きるものであると、ある一定の水準を維持すると、それ以上誤配送を起こさないように努力することよりも、誤配送が起きたときにどう対応するかに神経を使ったほうがビジネス的にはいいよねというふうに割り切ったことをやっているので、なかなか面白いなというふうに思った次第でございます。
すみません。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。