森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日もね、すみません、もう1回テスラの話をさせてください。何回かね、テスラ買いましたというので購入体験というか、そのお話をちょっとマーケティングの視点からいろいろお話をさせていただいたんですけど。やっぱりね、テスラすごいんだよなと思って。すごいんだよなというのは車が云々ということではなくてね、マーケティング的に考えたときに、彼らの売り方がめちゃめちゃすごいなと思って、考えれば考えるほどすごいなと思って。「いや、もういいよ。おまえしつこいな」と思われてしまうかもしれないんだけど、本当にすごくて。
街を、僕、自分で、しかも自分の車じゃないのに、妻の車なのにね、自分で街をね、自分の車に乗って運転していると、やっぱりいろんな車のディーラーさんってあるわけですよね。僕も、妻にテスラを買う前に、いろんなディーラーに行って、一応、いろんな車を検討してみたと。ディーラーにいろいろ回るなんていうのはね、日本車のディーラーにも回ったんですけど、そんなに頻繁にある話ではないので、「あー、こんな感じあったな」と、ディーラーでいろいろ接客を受けて、すごく丁寧な対応をされてみたいな、そんなイメージがすごくあるわけなんですけどね。
でも、テスラの売り方というのは、基本的にモバイルで、パソコンでもいいんですけど、自分の欲しい車種を選んで、オプションはいくつかの選択肢しかないのでピッピッピッと選択して、そこで1万5,000円か何かをクレジット決済すると、メールがピョーンと飛んできて…。電話が掛かってくるのかな。いろいろ今度は担当者みたいな人とやり取りをして、必要書類を出して、2週間ぐらいでもう、納車手前までいくんですよ。いざ納車になったら、東京だといくつかの、僕は有明の何か、行ったんですけど、大きなショッピングセンターの駐車場の何階が全部テスラの納車待ちの車がバーッと駐まっていて、そこに行くとレンタカーのカウンターみたいのがあって、そこでテスラの人が3人ぐらいいて、Appleショップ、男の子、女の子みたいな人たちですよ、ちょっと帰国子女っぽい。「納車おめでとうございます。あっちにありますから。テスラ、だいたいあの辺です」みたいな感じで。何の説明もされないのね。「説明書、助手席に置いてあります」みたいな。「なんだ、この売り方は…」と思って衝撃を受けるんだけど、これこそがディスラプティブ・イノベーションというか、破壊的イノベーションで。
本来、自動車のようなコモディティ化した商品の売り方ってこうあるべきでね。ディーラーさんがいっぱいいるんだけども、あれも本当は要らなくて。もし要るとすると、超高級車のディーラー。いわゆる汎用車というか、普通車に、もうディーラーなんて要らなくて。あれを抱えているだけで、例えば別会社が挟んでいたらね、直販することで利益率は圧倒的に高くなるし、自動車メーカーにとってね。結局、あれだけの人や敷地を抱えないといけない。そのコストとかって考えると、本当に効率のいい売り方だなと。まさにAppleの売り方ですよね。AppleがAppleショップをつくって、こんなショップ1つでネットで売るって無理でしょみたいな。でも、見てくださいと。Appleのシェア、何十%とかあるわけですよね、スマホ市場でね。結局もう、そこじゃないんですよね。車種を広げたりとか、お客さんへのねっとり対応をね、ねっちょり対応をしっかりするためのディーラー網、販売店網を広げたりとか、そこの戦いをしていないという、これこそがもうマーケティング。お客さんがそれを求めてくるわけですよ。だから、顧客に合わせるんじゃなくて、顧客を合わせさせるというね、いい意味でね。
だからね、何だろうな、これこそがマーケティングなんですよ、ということを言いたくてね。顧客のニーズを理解して、顧客に合わせることがマーケティングだと思っている人がいると思うんですけど、そんなことは決してなくて。フィリップコトラーは、そんな定義はしてないわけですよね。その他のマーケティング学者も、別にそんな定義はしてなくて。マーケティングというのは売れる仕組みをつくることで、それは別に顧客に、必ずしも顧客の言いなりになって寄り添うことではなくて、顧客をそこに導いていくということなのでね。テスラの売り方、これはすごいマーケティングで、自分たちの事業にも、それをね、置き換えて考えていく意義って非常に大きいと思うんですよね。
特に日本人というのは、日本企業というのは、まあまあ、そうは言ってもと。たぶんテスラがこの売り方をするときにね、顧客に車を取りに来させると、駐めているから勝手にと、説明しないみたいな、そんなことを言ったら、「いやいや、そうは言っても」と、絶対そんな企画はつぶされてしまうわけですよ。でも、それをつぶさせないでやるみたいな、やりきるみたいなところにディスラプティブ・イノベーションというのはあって、そこの殻をね、壁を突破していく、そういう力が必要だなと。あらためて、このテスラの売り方の素晴らしさ、テスラという車の素晴らしさというよりも、テスラのマーケティングの素晴らしさ、ここに僕はね、感動したということでございます。
ちょっと時間が来てしまったので、これで一旦終わりにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。