森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、消費財メーカー、食品・日用品等のFMCG周りの消費財メーカーに向けてのお話になります。B2Bの製造業の方は、自分たちの事業に置き換えて聞いてもらったらなというふうに思います。対象はASEAN、グローバルサウスを中心とした新興国市場です。
今日のお話なんですが、近代小売の攻略方法についてお話をしていきたいなというふうに思っております。別にASEANでもどこでもいいです。中国でも、アフリカでも、南米でも、中東でも、どこでもいいんですけども、近代小売を攻略をしていくということについてのお話で。近代小売って非常に重要で、なぜならば伝統小売が大半のシェアを占める市場であっても、伝統小売を獲るためにはやっぱり近代小売を獲らないといけない。近代小売で売れてないものは伝統小売のオーナーさんは取り扱わないので、基本的には近代小売を獲るということは大変重要なプロセスになるということですね。
そんな中で近代小売の獲り方に関してね、多くの場合は良いディストリビューターを選定して、そこに入れてもらうという、このやり方一辺倒で進むというケースが多くて、基本的に適切なディストリビューターを選ぶと。これはこれで非常に重要で、ディストリビューター経由で近代小売に入れるということは重要。一方で、やっぱり僕がやってきて感じるのは、小売と直接話すということも手法のもう1つの側面としてはすごく重要で。特に新規参入で輸出でやっていきますみたいな話のときにね、いかに自分たちが入れたい小売としっかりと握れるかということって、商品を導入したあとのセルアウトもそうだし、あと、中間流通マージンを抑えるという意味でも非常に重要で。僕らはこれ、最初は本当にディストリビューター経由だというふうに思っていたんだけども、やっぱり小売と話せば話すほど、小売と話すこと自体がそもそも難しいのでね、なかなかそういう結論には至れないんですけど、今となっては必ずわれわれは主要な小売と話をして、それが駄目だった場合にディストリビューターから入るという方法をどの国でも選んでいます。
例えば、タイでコンビニに入れたいとかって言うと、タイのコンビニってセブンイレブン一択なんですよね。1万3,000店舗以上あって、日本が2万数千店舗、2万2,000~3,000店舗だから、日本の次に多いのがタイのセブンイレブンですと。タイは、泣く子も黙るCPグループが、これ、セブンイレブンをやっていて、タイの小売ってCP一択みたいなね。まあまあ、セントラルもありますけど、ちょっとモール的な感じなので、基本的にはCPが非常に強くて。こういう市場なんかは顕著で、セブンイレブンとやりたいんだったら、セブンイレブンのある一定のバイヤーの上司ぐらいのクラスのところに会いに行ってね、部門BPみたいなぐらいのところに会いに行って、だいたい女性であるケースが多いんですけど、非常に優秀で。その場でいろんなことを決めますから、そういう人ってね。そこで、やりたい、やりたくない、やりたいとなったときに、どういうふうにやりたいかまでバババババッと決めていく。そうすると、そこがCPの息のかかったディストリビューターを紹介してくると、ここを使ってやってくださいと。そうなってきたときに、この中間流通マージンをやっぱり抑えられるんですよね。
普通にディストリビューター経由でいったら、日本の輸入品の商品だし、あまり数が売れない、値段も高いしと、そうすると置ける場所も決まってくるから、なんとなくこれぐらいのマージンは取っておこうと、ディストリビューターだったら当然そういう頭、思考になるわけですよね。それが小売に商品を持っていって、そこでもドーンとマージン取られると。結局、意思疎通もやっぱり伝言ゲームになってしまうし、こんなことを言ったらあれですけど、やっぱりディストリビューターも優秀なディストリビューター、優秀じゃないディストリビューター、これは会社として優秀か優秀じゃないかという問題もそうだけども、担当する個人のレベルがどうかというのも非常に多く見てきた。小売としっかりと話していると思っていたら、なんや単なる御用聞きというケースなんてごまんとあるわけですよね。こっちの意図が全然小売に伝わってないじゃん、それじゃあ、ノーだよねみたいな話って全然あって、何のための半年だったの?みたいな話というのは本当に多い。御用聞きと仕事をしたって意味がないわけなので、やっぱり決定権者、小売の決定権者としっかり話して、彼らをモチベートしていくというのもやり方で。彼らが好きか嫌いかなんて聞く必要はないというか、彼らが好きか嫌いかというよりも、彼らがそれの取り扱いに興味を持ってもらう仕掛けをしなきゃいけないというのが本来やるべきで。ありものを持っていってどうですかという話では彼らは全然モチベートされないので。これって今の御社の商品ラインナップの中で言うと、独創的に足りない部分であって、これをここに付加すると、今、市場ってこんなことを求めているから、こういうふうにたぶん大きなインパクトを与えることができて、そのあとこんな推移で伸びていきますよ、みたいな大きな絵をしっかり見せていって、彼らをモチベートして興味を引き付けるということをやっていかないと。いろんなメーカーからいろんな提案を受けているわけですよね。その中で棚はビシッと埋まっているので、誰かの商品を入れるということは、誰かの商品をどかさないといけないという話なので、それを含めてかなりプレゼンを考えていかないといけない。「良い商品があるんです。日本で売れているんです。どうですか」みたいな話だと、まずもって棚代だけ取られて、あと棚落ちして終わりみたいな、そういう話になるので、モチベートしていくということは重要で。それができるディストリビューターと、やっぱりできないディストリビューターというのがあって、そういうことを見極めていくと、小売とちゃんと話すということってすごく重要で。そこで決まると早いですよね。基本的にできるディストリビューターもね、やっぱり小売の前で「ははーっ」という話なので、買ってもらっていますからね、当然ですよね。そうすると、小売が「右」と言ったら完全に右なので、なんかね、うまくこっちの意図が伝わってないと。
一方で、メーカーは売っていただいているとはいうものの、やっぱりメーカーとしての見えるヒエラルキーと、裏側に隠れているヒエラルキーというのが僕はあると思っていて、やっぱりメーカーはメーカーで、それなりの、それなりのというか、高い位置にいるわけですよ。それはもう、みんな、暗黙の了解知で分かっていて。その中で絶妙なタイミングで登場して、バッと小売と握るということをね、うちのクライアントなんかにはやってもらうんですけど。われわれがお膳立てをして、土台をつくって、小売の決定権者を呼び出して、そこにメーカー登場で、「はい、合意」みたいなね、実際はもう下ですでに合意をさせておいてみたいな。あまりやすやすとメーカーさんに出ていかさないで。そういうのも演出ですよね。会ったら、それはフレンドリーと。だから、何だろうな、権威を築きつつ、会ったら非常にフレンドリーという状態をつくって、メーカーをその場に出すという。それもやっぱりテクニカルな話で非常に交渉を進める上では重要なので。そんなことをしていかないと、欧米の先進的なグローバル企業でたくさんプロモーションをやって、知名度もあって、みたいなところに日本の消費財メーカーを押し込むなんていうのはなかなかできないので。
今日のお話の本筋としては、ディストリビューター、良いディストリビューターを探して、そこから小売に導入していくという方法も1つなんだけども、小売と握るというのも1つ並行してやっていって、これが握れなかったらディストリビューターでやるという、そういうことも考えていくということは1つのやり方としては大変重要ですよ、というお話でございました。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。