森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回の引き続きで、FMCG、消費財メーカー向けのお話です。B2Bの企業さんは、自分たちの事業に置き換えてお話を聞いていただければなというふうに思います。ちょうど今ね、B2Bに関しては、YouTubeのほうはB2Bの製造業向けの番組をやっていますので、ぜひSPYDER CHANNELをご覧ください。
今日もね、ASEAN、ASEANじゃなくてもいいんですけど、グローバルサウスを中心とした新興国市場向けのお話です。前回、近代小売の導入方法について、ディストリビューター側からのアプローチと小売側からのアプローチということでお話をしたんですけど。今日はね、そのちょっと続きでもないんですけどお話を、その流れでのお話として聞いてもらったらいいと思うんですけど…。
ディストリビューターとか小売とのやり取りの中でね、マーケティング戦略をどうするかという、多くの日本の消費財メーカーって、特に輸出でやっている企業なんていうのは、マーケティング戦略をディストリビューターに丸投げているところというのは結構あって。でも、僕が見てきたディストリビューターとか小売って、正直、小売は棚貸しビジネスだし、ディストリビューターにマーケティング戦略なんてなくて。あるのは「Buy One Get One Freeやりましょう」みたいな、つまりは値引きして売りましょうみたいな話しか出てこないんですよね。どうやったらセルアウトするかなんていうのは、「プロモーションしてください、お金出してください」みたいな話しか、極論言うとね、失礼ながらね、私もたくさん現地の小売やディストリビューターには友達がいるので、あまりここで悪口を言うとあれなんだけども…。でも、実際にそうですと。まあまあ、彼らもそれはよく分かっていて。マーケティング戦略なんていうのは、自分たちで、メーカー自身が考えるべきで。そうすると、やっぱりディストリビューターよりも、小売よりも、市場をよく、現地の市場のことを把握しなきゃいけなくて。現地の市場がこうだから、それに合わせ過ぎるということでも駄目で。やっぱり世界標準化というものがしっかりあって、自分たちのメーカーは世界でこうである、アジアでこうであるという世界標準化のしっかりとした定義付けがなされていて、その上で現地適合化をしていくということをやっていくんですけど。
そういう中でね、ディストリビューターに言われるがままマーケティングをやっているようなところってやっぱり伸びないですよね。伸びてもある一定のところで止まってしまうので、自分たちでマーケティング戦略を持つということは本当に重要です。今までも小売からもね、出てこないです、革新的な、「こうしたら売れるよ」とか、「ああしたら売れるよ」とか。「どこどこのメーカーはこれぐらいプロモーションをかけているので、かけたらどうですか」とか、あと、「Buy One Get One Freeやりましょう」とかね、いわゆる5割引き、「50%オフをやりましょう」みたいな話しか出てこないので。それはそれで必要なケースにはやったらよろしいと思うんだけども、恒久的なセルアウトを継続的にさせるためには、やっぱり自分たちで戦略を考えて、そこに小売を巻き込んでいくということをやる、小売をモチベートさせて、「なるほど。こんなに面白いことをやるんだったら、小売としてもこの棚用意するよと、こういうの用意するよ」ということを言わせる。それでモチベートさせて、実績を出して、その小さな実績を繰り返し積み上げていって、小売との関係が強くなると。
そうなってきたときに、やっぱり中間流通を圧縮できるし、問屋頼みにならないし、結局、欧米の先進的なグローバル企業って問屋に売らせているんじゃなくて、自分たちで売っているんですよね。ただ、自分たちで運ぶのが嫌だから運ばせているとかね、それとか、セールスも自分たちのやり方で自分たちが雇用するのは500人だけど、残りの500人を問屋を教育することによって外部でアウトソーシングしているという、そういう考え方なので、いわゆる全体を把握しながら、コストが安いほうにアウトソーシングするというだけの話なんですね、欧米の先進的なグローバル企業というのは、シェアの高い企業というのは。それを自分たちの戦略、マーケティング戦略に何もかも委ねるという、これがもうそもそもの間違いで、委ねたって何の結果も出ませんよという、市場のことをよく分かっていないので、委ねたら何か素晴らしいことが起こるんじゃないかという、希望観測的な想像が生まれるんだけども、僕が見てきた新興国市場のディストリビューターなり小売は、革新的なマーケティング戦略が出るわけもなく、そんなものはそもそも期待すべきじゃなかったという話だし、期待してはいけないですよね。マーケティング戦略というのは自分が持つべきものなので、彼らから出てくるのは、「Buy One Get One Freeです」ということをしっかりと頭に入れておいてくださいというのが本日のお話でございます。マーケティング戦略は自分たちで考えていきましょう。
今日はこれぐらいにしたいと思います。それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。