東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今日は101回目にスパイダーってのはどんな会社なの?ということで振り返りをしてもらったと思うんですけども、もう1つ我々森辺さんも聞かれるんでしょうけど、意外とホームページとかセミナーとか色々お客さんに言われるのが、そのチャネル構築とか販路構築が出来るのは分かったんだけど、いったいどの国が得意なの?とか、どの国だったらできるんですか?みたいな話を、全部の国でできるわけがないでしょ、みたいな言葉が含まれると思うんですけど、スパイダーとして今注力している国ですとか、都市がどこなのかっていうのを教えていただきたいんですけど。
森辺:基本的にチャネル構築って大石先生もおっしゃっている通り、アーキテクチャを作るようなものなので、国が違えど作りかたは同じなんですよね、基本的に。枝葉の違いはあれど基本的には一緒なので、どの国でもと言えばどの国でもなんですが。今このスパイダーという会社がもっとも注力しているのは、フィリピンとインドネシアと中国ですよね。
東:フィリピン、インドネシア、中国の3カ国。その3カ国に限定はしていないでしょうけど、注力しているっていうのは何か理由があるんでしょうか。
森辺:まず中国なんですけどね、結局昨今の日中問題でかなり大手は違いますけども、準大手ぐらいから下、中小中堅になるとASEANシフトみたいな動きがあるじゃないですか。かなり長く続いていますけどもね。
東:中国の撤退セミナーとかも今。
森辺:流行っていますよね。けど、本当に儲かっている人たちは中国から撤退なんかしなくて、中国で、ダメで日中関係も悪くなったから撤退セミナーを聞いて撤退をしてASEANに行くんだけど、中国でダメならASEANでもダメなのですよね、その企業はね。中国はあれだけ大きい市場をやらないなんていうのは、もう選択肢としてあり得ないので、中国は1つの市場ですよと。中国の中にも言ったら国が20カ国あるみたいな国じゃないですか。
東:1つの省で1億とか。
森辺:ですよね。そうすると我々の会社は中国っていうのを上海国とか北京国とか大連国とか中景国とか四川国という風に見ているから、中国だけでも国はたくさんあって、その大きな市場というのが1つですよね。
フィリピンは将来性に非常に大きな期待をしていて、HSBCが出している最新の将来予測でASEANの中で最も1人当たりGDPないし、GDPが高くなる国という風に言われていましてね。それは私自身も行っていて感じることなんですよ。一定期間、数年間日本が占領していた時代がありましたけど、基本的にはやっぱりアメリカの一都市みたいなイメージが僕はやはりすごく強くて。英語も非常にうまく話しますしね、フィリピンという市場は日系企業にとっては非常にやりやすい市場、マーケットとして見たときに。だから、そういう意味ではフィリピンというのは将来期待値も込めて力を入れていますよと。
あと親日のインドネシアですよね。ここも人口が2億以上と非常に大きな市場で将来性も高いので、インドネシアで。インドネシアとフィリピンって近いではないですか。片やインドネシアは生産拠点がたくさんあるのです。マーケットとしてもジャカルタ中心に栄えていますよと。このインドネシアからフィリピンって貿易協定を結んでいてね、関税も非常に優遇されているので、インドネシア、フィリピン。インドネシアからフィリピンに輸出をしてマーケットを狙うというのは戦略として非常に多くの企業が取られているので、そういう意味でもフィリピンもインクルードしているという意味で、そこは特に力を入れています。
得意、不得意でいうと結局新興国とかASEANとか中国、インドと言われるようなところって、何かしら過去に色々な案件をこの13年間でやっているんですよね。当然欧米の市場だって常時10%ぐらい案件があってやっていて、我々の会社は中国、ASEANが強いというのが1つ前提としてあって、中でも力を入れているのは3カ国で。そうすると力を入れている国って、情報の収集も行く頻度も取り組みも濃くなるわけじゃないですか。だから、そうするとどんどんノウハウが積み重なっていて、強いとか詳しいとか、そういうことになっていくのですけど。そういう意味ではここ2年ぐらいはそうですね、その3カ国に特に力を入れていますかね。
ただ、企業さんのグローバル戦略を作れなんていうご依頼がきたときに、フィリピン、インドネシアを含めたASEANの参入戦略とかってのを作っていくわけじゃないですか。フィリピンだけで作るというのはありますけど、基本的にはASEANの中でどうするのだという話なので、まちまちですかね。
東:ちょっと話を戻して、中国なんかはやっぱ中国からASEANにシフト、チャイナプラスワンとか昔は言われていましたけど。それってASEANにシフトしつつも中国に力を、さらに力を入れている企業と、どちらかというと引いている企業、結構はっきりと分かれてしまっているといのが多分今の現状だと思うんですけど、やっているところは結構うまくやっているじゃないですか。課題は色々あるなりにして、売り上げが立っていないかというと、売り上げは伸ばしてきていると。ただ、色々な問題は抱えながらもやっているっていう印象があるのですけど、やっていないところはスーッと引いてしまっているような企業さんも多く、一方で見受けられると。この現状ってどうですかね?
森辺:よく中国にしっかりと根を下ろしてやられている一部上場の大手の企業さんね。こういう会社さんとお話をすると、日中関係のゴタゴタ。それはちょっと工場であれがあったりとか、デモでどうのこうのとかね、出荷、輸出入がややこしいとか、そういうのはあれど、そんなのは昔から中国デフォルトであるわけじゃないですか、色々な問題がね。そうすると彼らは全く気にしていないわけですよ。
それで今の日中関係の問題が彼らの既存ビジネスに何かしらの致命的な影響を与えているかというと、与えていないのです。中国を日中関係のせいでASEANに流れる企業の多くはね、そもそも日中関係の悪化が御社のビジネスを悪化させているのではなくて、もっと別のところに中国ビジネスの要因があって、日中関係は別に関係ないですよね。中国空軍の飛行機が自衛隊機に30m近づいたということが、おたくのビジネスにどれだけ関係あるのとかと、よく突き詰めたら絶対関係ないはずなので、もっと別のマーケティングに問題があるとかね、戦略に問題があるとか、そういうところに問題がある話で。本当にちゃんとやれている会社というのは日中関係を理由にはしていないんですよね。だから、そこを見間違えちゃうと非常に大きい市場を失うのではないかなというのがすごく感じます。
東:今撤退セミナーとかで流行っていて、撤退するのは良いのかもしれないですけど、逆に撤退したら二度とその企業は戻ってこないんじゃないかなという気も一方ではするのですけど、戻ってこないとすると開拓して中国の市場を知っているという話になるじゃないですか。それが日本企業にとってなんだかんだ一番近い国ですし、その辺の損失ってのは1つあると思うのですけど、森辺さんはどう思いますか?
森辺:一昔前、80年代に出た会社が撤退して90年代に出るとかね、90年代に出た会社が失敗して2000年代に出るというのは、いっぱいあったじゃないですか。けど、この2014年に撤退して2020年にもう1回出るかというと、無いとは言いませんけど、かなりやっぱり以前とは事情が違うような市場が形成されているという風にどうしても思えてちゃいますよね。あと、さっきの話ではないですけど、北京に出てダメだ。撤退ではなくて、そもそも北京で本当によかったの?というところから見ていかないと、中国ってさっき言ったように国の中に何カ国も何十カ国もある国なわけだから、参入都市を間違えているから成功に結びつかないというケースも往々にあるではないですか。
東:都市で成功している企業は都市で見ていますもんね。
森辺:だいたい都市で見ています。
東:古くからいうと、サントリーさんなんかは上海では圧倒的だし。
森辺:だから逆にいうと北京でダメだから重慶いこうとかね。上海ではダメだから広東いこうとか。そういう発想に本来はなるべきで、その国全部吹っ飛ばしてASEAN行こうっていうのはちょっと違うのではないかなという気がしますけどもね。
東:中国から流れていってASEANに行っているわけですけど。
森辺:ここ2、3年は本当そんな勢いがすごいですよね。だからそこはもう少し日中関係の悪化が本当に中国現地法人の売り上げが上がらない要因ですかというのをしっかり見ていかないと、いけないと思いますけどもね。それでダメだからASEANに行ってもASEANで同じことが起きるので、そこは1つポイントだと思いますけどね。
東:最初に森辺さんが言われたチャネル構築というのはアーキテクチャであって、たとえば今注力している我々、3カ国、中国、インドネシア、フィリピンでも基本的には根幹の部分は一緒ですよという話しですよね。枝葉の部分は環境とかによって違ってくるかもしれないけれども、根幹の部分がどう一緒なのかというところが多分グローバルマーケティングで言えばチャネルづくりというのは一緒だってのは我々は理解していますけど、多分お客さんから見た別々なんじゃないのというような、多分疑問があると思うんですけど。
森辺:基本的にチャネルづくりの多分定義とか概念が、我々と普通の企業さんとで異なっていると思うんですけどね。日本の多くの製造業さん。製造業のためのチャネルづくりなんですけど、製造業は作ることが仕事だから、販売は代理店に任せて後おしまいという、そういういわゆる海外チャネル戦略なわけですよね。いかに良い代理店、彼らパートナーという風に言いますけども、パートナーを見つけるか。財閥系のパートナーと組んだので、ここと組んだらあとは彼らがやってもらうと。我々は技術です、生産です、品質ですということでやられるんですけど、それはチャネルづくりじゃないんですよね。
結局良い代理店をつくる、良いパートナー、代理店を探す、良いパートナーを探すとこれは絶対必要なことなのですけど、良い代理店をチョイスするということと、もう1つマネージするというこの2つがすごく重要で、これが共通だと言っているんですよね。どの国に行っても良い代理店を選びます。選定します。その選んだ代理店をいかに教育、管理していくかという、この2個セットはどの国行っても一緒なのです。チャネルづくりが。メーカー自身がその国でこの2つをやらないと商品というのは絶対に流通しなくて。
なぜ商品の販売がうまくいかないのか。たとえば、フィリピンで一番大きな財閥と組んでいるのに、二番目に大きな財閥と組んでいるのに中々うまくいかない。その要因というのは一番良いところと組んだので後よろしくお願いねという、そこが最大の要因です。マンダムにしろ、フマキラーにしろ、ピジョンにしろ、何にしろ、はい任したからおしまいということは全くやっていなくて、彼らがなぜうまくいっているかというのは代理店の選定とこの管理、育成。ダメなら切り替えるということを常にやっている。これがチャネルづくりなんですよね。
東:管理、育成という部分はチャネルのマネージメントという部分になるのですかね。
森辺:そうですね。そこをずっと継続してやっていくから商品が流通をしていって、日本の代理店とか販売店の感覚でアジアとか新興国の代理店を考えたらうまくいかない。レベルが全然違うからという。なので、ここが変わりませんよと言っているところなのですよね。
東:レベルが違うというのは、日本の代理店のほうが優秀だということですかね。
森辺:優秀だと。要はみなまで言わなくても代理店としての使命、ミッション、やるべきこと、全て理解して彼らが動くわけではないですか、日本の場合は。後方支援みたいなことをメーカーがやるわけなので、ルート営業をしておけばある程度物が流れたりするのです。けど、中々そうならないというのがアジアというか海外ですよね。たとえば、同じ競合のメーカーの製品を1つの代理店が扱っていたときに、日本だとこっちの顔もあるしこっちの顔もあるしと、利益を度外視した部分でもう1つの目を持って考えたりするじゃないですか。こんなのは日本だけで、世界に行ったらどっちが自分たちにとって金銭的にプラスかということしか見ませんから。たとえばそうなったりとかね。それを色々なことをしながらうまくマネージしていかないといけないというのはチャネルづくりなんで。
東:そうすると、日本だと意外と昔から付き合いがあるところで結構踏み込んだ付き合いが出来ているところが多いじゃないですか。一方海外って新たにパートナーを見つけて管理、マネージメントをするときに、どこまで踏み込んでいいんですかみたいなことを結構私も聞かれるのですけど、どこまでの踏み込み具合が分からないと。だから管理できないという状況が起きているのも1つだと思うんですけど、森辺さんはたとえばどこまで踏み込むべきかみたいなところで、簡単な話を。
森辺:めちゃめちゃ踏み込みますよね。どこまで踏み込むかと言ったら、代理店と契約したら、たとえば最低でも半年、1年は自分の席をそこに設けてもらうくらい踏み込まないとやっぱうまくいかないし、選ぶときに売り上げ100億の代理店。自分たちの商品の値段を考えたら、どんなに売ったって5000万だとするではないですか。そうしたらその代理店がその5000万にどれだけ力を入れるかなんてだいたい見えているわけじゃないですか。その中でその代理店に力を入れさせないといけないというのは別のことをいっぱいやっていかないと当然力は入らないし、もっと言ってしまうと本当に100億の代理店を選ぶのが良いことなのかというとそうじゃなくて、売り上げ3億の代理店を選ぶほうが実は小さいけども良かったりするわけですよね。
だから、それで選択も変わるし踏み込み度合いも変わるし、その代理店の社長の性格もそうだし、社員のレベルですよね。自分たちの製品を担当する社員がどういう社員なのか、そんなことも全部細かく見ていって、その上で数字で見えてくることと自分が感性として感じること。これでやっぱりバランスを取ってマネージメントの度合いは調整することが多いですよね。
東:分かりました。チャネル構築というのは基本的にはこの3カ国で一緒だということ。
森辺:そうですね。どの国でも結局は繰り替えしになりますけど、選定と管理、育成。これが一緒ですよと。これをやらなかったら商品というのはうまく流れないよということですかね。
東:分かりました。今日は森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。