森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、タイの小売市場のお話をしていきたいと思いますが、前回、前々回とタイの小売市場の話をして、今日で最後にしたいなというふうに思います。FMCG、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財向けのタイ小売市場のお話です。ということで、今日はタイの近代小売に関する考察と、伝統小売に関する考察をしていきたいなというふうに思うんですが…。前回、前々回とお話した通り、タイの近代小売というのは急速に成長していて、僕がシンガポールに住んでいた80年代90年代なんて、タイなんて言うと、もうだいぶちょっと覚悟しながら行く、バンコクと言ったらもう覚悟しながら行くみたいな市場だったので、家族でね、バケーションでどこかタイのプーケットとかね、ビーチリゾートに行くみたいなあれではタイというのはありましたけど、バンコクと言うと、なかなかちょっとね、当時のシンガポールからはだいぶ違う国だったので、今みたいな先進的なイメージというのは本当にそんなになくて。そんな市場が一気に急成長したという、そんなイメージを持っています。
タイの小売市場についてお話をすると、もともとはやっぱり外資の進出が積極的にあったんだけども、大手企業と、外資の大手と地場の企業の競争が激化して、結局タイの近代小売市場というのはCPグループとセントラルグループを中心とした財閥系のコングロマリット企業による買収が進んでいったんですよね。なので、結局、今はこの2社の傘下でほぼすべての主要な小売は、近代小売はいるということになっていると。タイの食品を取り扱う近代小売なんかは、約6割ぐらいの市場をCPが握っているのではないかというような声も業界内からは聞こえてきますので、基本的にはもうCPの力が非常に強いですよと。
これはASEANどこも一緒なんですけど、パンデミックを経て、オンラインがやっぱり2倍3倍になっているんですよね。なので、こういった近代小売も急速にDX化を進めてオンラインショッピングに対する利便性を高めていっている。これはそのサイトで買って、デリバリーを例えばグラブがやったりとか、そういうことを非常に重要視しているので、オンラインも非常に伸びましたねと。
近代小売は5割強ぐらいあるのでね、タイ。店舗数も、セブンが1万3,000店舗あるのであれなんですけど、全体で1万7,000店舗ぐらい、主要な近代小売というのはあるので、やっぱり非常に大きいと。日本から輸出でやっても、日系の小売だけ相手にしていたらなかなかこれは大きな金額になりませんけど、言ったように、セブンとか、ロータスとか、ビッグCとか、こういうところで存在感を示せると、それなりに大きな金額にはなっていくので、輸出でも全然やれる国であるというのがタイの特徴ですよね。
伝統小売はね、これはなかなかデータを、店舗数を発表しているところがないんですけど、いろんなところのデータを持ってきて推計すると、だいたい弊社では45万店ぐらい存在するのではないかなというふうに考えています。45万店って結構大きいので、ここの攻略をどうしていくかっていうことは非常に重要で。タイはあまりにも近代小売の影響力がでかいので、基本的に近代小売を攻めるときは、近代小売と直接、僕らは交渉していて、近代小売に中間流通を紹介してもらって、そこを使う。なぜならば、息のかかったディストリビューターがあるんですよ、CPだって、セントラルだって。そこを小売側に紹介してもらうと、もう中間流通マージンはこれぐらいでやれという話になるので、無駄なコストを取られなくて済むと。これだけ小売が強いと、彼らの小売マージンって非常に高いですから、中間流通をまともに払っていたら利益が出ないということになるんですよね。なので、僕はそのやり方が一番適していると。
ただ、このCPとかセントラルと話をするというのも非常に大変なことで、アポを取ることすら、たぶん大手の消費財メーカーであっても容易ではないという市場なので、そこも乗り越えていかないといけない。ただ「良い商品を持っています。どうですか」みたいなスタンスで会いに行っても、跳ね返されておしまいで、逆にそんな悪い印象を与えるんだったら会わないほうがいいみたいなね、敗者復活戦をするのは大変なので。なので、それなりに、どれぐらいの投資をしようと思っているのか、どういう戦略で、何を実現するのかということも考えてやっていくということは必要になってくるかなというふうに思います。
あと、最後ですね、タイは伝統小売に関してはデジタル化が非常に進んでいるので、デジタル化がこれからどうなっていくかというところは1つちょっとポイントかなというふうには思います。これはタイだけでなくて、ほかのインドネシアとかベトナムなんかもそうなんですけど、伝統小売に関してはこのデジタル武装、これで一気に利便性が上がっていくと思うので、そんなところも1つポイントになるかなというふうに思います。
以上です。皆さんまた次回お会いいたしましょう。