森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回の続きですね、インドネシアの小売市場ということで、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品等のFMCG周りの製造業向けのお話でございます。前回、インドネシアの市場はハラルと伝統小売が重要ですよというお話をしました。国民の87%以上がイスラム教徒であるということと、伝統小売の数が圧倒的に多いと、447万店ありますよということで、伝統小売の攻略とこの2つがインドネシアでは非常に重要になってくるというお話をしました。
今日はね、この伝統小売について少しお話をしていきたいんですけども、447万店あって、この伝統小売が今後どうなるかというのが多くの方の興味なんだと思うんですけど、今までの議論では、基本的に伝統小売というのは近代化していくと、近代化の波に飲み込まれていずれは淘汰されるというのが大方の見方だったんですよね。ここ5年ぐらい前まではそういう見方が主流で、日本企業の中には伝統小売が近代化されるまで本格的に市場参入するのは待つなんていう、よく分からないことを言っている企業も10年前には結構いました。特にコンビニに変わっていくと、取って代わっていくと、アルファマートやインドマレットになっていくのではないかということをインドネシアでも言われてきていて。
でも、ここに来てどうかと言うと、ここ5年のインドマレットやアルファマートの出店スピードと、その前をさらに遡って5年とか見てみると、やっぱり出店スピードが落ちているんですよね、コンビニの。なおかつ伝統小売が447万店ももうあったら、これ…。実際に、じゃあ、10年ね、過去5年とか10年どうなっているかと言うと、だいたい年間で平均すると3万店ぐらい減っているんですよ、伝統小売447万店から毎年3万店ぐらい減っていますよと。でも、その3万店減っていると言っても、これは447万店あったら全部なくなるのに150年ぐらいかかってしまうわけですよね。逆に、倍のスピードで、6万店毎年なくなっていったって90年近くかかるわけで、3倍のスピードでなくなったとしたって50年ぐらいかかるわけですよね。そうすると、やっぱりそれだけの時間存在し続けるということは、なくならないのと等しいということがまず1つ。数の原理から言ってもなくならないですよということと、あと、伝統小売は確かに淘汰はされていっているんですよ。いわゆる伝統小売と言ってもピンからキリまであるので、小さい規模の伝統小売というのはやっぱりどんどん、どんどん、淘汰されていく。
ただ、一方で、じゃあ、生き残っている伝統小売ってさらに便利になっていくので、例えばデジタル化によってね、デジタル武装によって、顧客との決済が全部QRコードでスマホでできますよ、お店の店長は売れ筋の商品をスマホで注文できますよ。そうすると、中間流通事業者だったり、ディストリビューターさんが今までの汚い現金を回収しながら商品を届けていたという業務がなくなるので、基本的には注文が入ったら決済自身はオンラインで行われて、商品を配達するだけですと。そうすると、わざわざディストリビューターが配達しなくても、ゴジェックのバイクで配達させたっていいわけですよね。そういう世界がもう始まっていて、これを僕は「伝統小売のデジタル武装」というふうに呼んでいるんですけども。伝統小売がデジタル武装すると、確かに447万店は350万店ぐらいに減るかもしれない、何十年かけて。けど、生き残った350万店というのは、今まで以上に便利な存在として新しいニューリテールみたいな姿になって生まれ変わるので、何ならコンビニよりも便利なんじゃないかと。われわれが思っている以上に、われわれの歴史上、コンビニと伝統小売、つまりは駄菓子屋が共存し合った時代なんてないんですよ。もちろん被った時代というのはあるんだけども、共存して生き続けた時代なんていうのはなくて、基本的に駄菓子屋が淘汰されて小売の近代化が始まってコンビニなったと。ただ、今この瞬間も伝統小売と近代小売は共存し続けていますよね、インドネシアの市場で。そうすると、伝統小売の、インドネシア人にとっての伝統小売というのは、本当に生活の中に入り込んだ大切な存在になっていて、これはね、なかなか消すことはできない。
また、日本の小売の近代化がどういうふうに起きたかと言うと、1番は道路インフラですよね。全国津々浦々、道路が整備されて、道路が整備されたから、物流が発達したというね。これなくして、モノが物理的な物体として存在している以上ね、ワープでも発明されない限り、基本的には交通事情とか道路事情とか物流事情というのはめちゃめちゃ重要で、小売だけが単体で近代化するなんていうことはないわけですよね。あらゆるインフラ、水道・ガス・電気だって全部そうですよね、これが津々浦々、近代化するから、初めて小売も近代化できる。インドネシアの国土交通省の都市計画なんかを広げて10年20年見てみると、日本のような感じには全国津々浦々ならないんですよね、主要6島あって。ということは、やっぱり伝統小売というのは依然としてある程度の影響力、ある程度の強い影響力をこれからも残しつつあるということだと僕は思っていて。デジタル化の理由、数の原理の理由、いわゆるインフラの理由、そういう社会や地域と深く結び付いているという、こういう4つ5つぐらいの非常に大きな要因によって、これからも伝統小売は生き続けていきますよと。そうなってきたときに、やっぱり伝統小売を攻略するということは本当に重要ですよというのがインドネシアでございます。
今日もちょっと時間が来てしまったのでこれぐらいで一旦切りますけど、また次回もちょっと第3弾ということでインドネシアの小売市場のお話をしていきたいと思います。皆さん今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。