森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、B2Bの製造業向けのお話をしていきたいなというふうに思います。B2Bの製造業は非常に広いです。ネジをつくっている会社から、部品、装置、いろいろな会社がありますけど、皆さんの事業に置き換えて考えていただければなというふうに思います。ネジをつくっている会社と装置をつくっている会社は、同じB2Bの製造業と言ってもね、戦略も戦術もマーケティングも変わってくるので、私がここでお話することは、必ずしも皆さん全員に合致するものではない場合も、もちろん共通していることがたくさんあるんだけども、ない場合もあるので、細部に関しては、なので、皆さんの自分たちの事業に置き換えて考えてもらえたらなというふうに思います。
今日はね、パートナー依存型の失敗事例についてお話をしたいなというふうに思うんですが、前回プロダクト依存型の失敗事例ということでお話をしましたけど、多くのB2Bの製造業が陥っているこのいわゆる過ちの1つにプロダクト依存型があって、このパートナー依存型というのも非常に大きくて。パートナー依存型ってどういうものかと言うとね、大きくは、売ることのすべて、もしくは大半をパートナーに委ねるということですよね。はっきり言うと、「自分たちはつくる人なので、売るのはパートナーさん、お願いします」という、こういう考え方ですよね。これ、製造業って、つくるという仕事と、つくったものを売るという、この2つが両輪で回って初めて収益が出たりシェアが上がったりするんですよね。それを「つくる」ということだけをするってね、日本国内では絶対そんなことしていなくて、両方やっていて。もしくは、今までの80年代90年代2000年代ぐらいまでは、基本的に日本企業しかつくれなかったから、良いものさえつくっていれば黙っていても買いに来るという市場はあったと思う。ただ、中国の企業でもアジアの企業でもつくれるような時代になってしまうと、「売る」という行為を営業という観点ではなくて、だけではなくて、マーケティングという観点で一緒にやらないと、これはやっぱり良いものだけつくっていても売れないんですよね。パートナーだけでは売れない。結局、パートナー依存型って、パートナーに売ることのすべてを委ねてしまう。
ただ、本来すごく重要なのって、「誰と」売るかということよりも、「誰に」売るかということのほうが圧倒的に重要にもかかわらず、とにかくパートナーということで、大手が良い、実績があるところが良い、とにかく大手でとにかく実績のあるところ、「誰に」売りたいのかということがぼんやりしたまま、とにかくでかいところとパートナーシップを組んで売ってもらいたいという、こういう気持ちが先行していくんですよね。ただ、必ずしも大手が良いかと言うと、これはね、製造業側、メーカー側の、プリンシパル側のステージによって全然違う。参入初期にそんな大手と組んだって、結局、大手ということは、自分たちよりも、これから新規で参入する自分たちよりも重要なクライアント、プリンシパルをたくさん抱えているということなんですね。そんなところと一緒にやったって、結局、どれだけの経営資源を割いてくれるのかと言ったら、未知数ですよね。そうすると、自分たちの今の現状に合ったサイズのディストリビューターのほうが良いというケースだってあるので、基本的には「誰と」売るかということよりも、「誰に」売りたいんだということを徹底的にまず考えるということはすごく重要で、その「誰に」売りたいという、この売りたい相手に売れる相手と売るのがベストなんですよね。にもかかわらず、とにかく大手、とにかく実績みたいな、こういうパートナー選定をしてしまっていて、ずるずるパートナーに依存していくという、こういう、パートナーというのはディストリビューターのことを指しているんですけど、こういうケースが非常に多くて。
特にB2Bの場合は、バイネームで「どの企業に売りたいの?」というのはだいたいもう出てくるんですよね。その企業名が全部一覧で出てきて、ターゲティングのリストとして、そこに売れるディストリビューターと組む、パートナーと組むということはすごく重要で。今、その企業とね、ターゲット企業と取引がないディストリビューターやパートナーが、これから新規でそこに行くって、これは相当大変なことで時間もかかる話なので、やっぱり今、既存で自分たちが売りたい相手と取引があるところにお願いをするということが本来の最大の優先順位なんですよね。なおかつ経営資源をしっかり割いてくれるということはすごく重要で。
特にB2Bの場合は必ずしもね,B2Cだと、まず首都から行きなさいとか、大都市から行きなさいとかって僕はお話していますけど、基本的には産業集積地とインダストリーなんですよね。産業集積地ってどういうことかと言うと、自分たちのつくっているものが使われる産業がどこに集積されているか、必ずしも首都にその産業が集積されていなかったりするわけですよね。例えば、ある都市の工業区にそういった生産地域が、分からないですけど、半導体なら半導体、自動車なら自動車、何でもいいんですけど、そういうものの産業が集積しているので、そこに、集積しているところがマーケットなわけですよね。だから、必ずしも、タイだったらバンコクではなくて別の地方の地域だとかね、別にバンコクでなくても、どこでもいいんですけど。
ということと、あと、インダストリーですよね。B2Bの製造業の場合、自分たちの商品、製品、部品が4つぐらいのだいたいインダストリーで使われていて、一番大きいインダストリーはどこで、一番小さいインダストリーはどこでみたいな優先順位をつけて、インダストリー全部を攻めるのはいいですけども、Aのインダストリー、Bのインダストリー、Cのインダストリー、Dのインダストリー、これ全部ディストリビューターが変わってくるので、基本的にはインダストリーベースで考えていくということもやっていかないといけない。
そういうことを考えていくと、やっぱりB2Bの製造業にとって重要なのって、「誰に」売るかということが一番重要で、「誰と」売るかなんていうのは、その「誰に」売れる相手と売るべきなんですよね。だから、パートナーに依存するような思考でパートナー選定をしていくと、大きな過ちをおかしてしまうということになりますよというお話でございました。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。