森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も、B2Bの製造業向けのお話でございます。マーケットはアジア新興国市場ということで、B2Bの製造業向けのお話をしていきたいと思います。B2Bの製造業はいろいろな製造業がございますので、自分たちの事業に置き換えて私のお話を聞いてもらえればなというふうに思います。
前回、前々回からね、失敗する企業のパターンみたいなお話をさせてもらっていて、プロダクト依存型で失敗をしてしまう、パートナー依存型で失敗をしてしまう、今日のお話はパーソン依存型のお話です。
数多くの企業を見てきて思うのは、やっぱり日本企業ってずっとプロダクト依存型だったし、パートナー依存型だったので、当然ながらこれはパーソン依存型にもなる。どれか1つで失敗するというよりかは、すべてに当てはまってしまっているというケースがあって。その根源は何かと言うと、やっぱりプロダクト依存型であると、もう商品が良いので、ほかの3Pはどうでもいいみたいな、そこまでは言わなくても、置いてきぼりになってしまう、1P戦略というお話をしましたけども。そうすると、なおかつこの「良い」の良いが品質が良いというところの1点に集中されていて、でも、その差が見出しにくくて今苦労しているということになって。
この「プロダクトが良い」ということをベースにすべてが引っ張られてしまうので、結局、戦略が弱くなってしまうんですよね。「商品が良いので戦略要らないでしょう」とまでは言わないけど、それに近いような状態で。結構、社としての戦略が非常に弱くて。でも、じゃあ、現場で働いている、海外事業部であったり、現地の現法に送られていくような人たちの個としての能力は非常に高いんですよね。日本企業の人の能力の高さって、やっぱり非常に高いと僕は思うし。もったいないのは、社としての戦略がないんだけども、個としての能力は非常に高いわけですよね。でも、結局、会社としての戦略が弱いと、個としての能力って戦術なので、戦術で戦略は絶対に補えないんですよね。戦略というのは方向なので、「あっちの方向に進め」という方向を戦略で示す。そこにどう進んでいくかということが戦術なわけですよね。進む方向を指さずに、どう進んでいくかという戦術のところだけでやっていくっていうと、間違った方向にどれだけうまく早く進んでも、これは結局方向が違うので駄目という話になってしまうので。やっぱり戦略が弱いというのは非常に根本的な問題なんですよね。戦術が高いので、局地戦では勝つと、目の前の戦いでは勝つんだけども、トータルで見たときに進んでいる方向が違うので、1回2回勝っても全体では負けてしまうみたいな、そういう状況が結構起きていて。これが非常にもったいないなと。なので、まだまだパーソン依存型、人に依存してなんとかしてやる、「気合と根性で、現法でなんとかしろ、駐在員」みたいな、こういうお話。戦略と予算は与えないと、現地で人の力でなんとかするみたいな、こういう戦い方をしている企業がまだ少なくない。
あと、マーケティング力と営業力という、この2つの力の定義がちゃんと理解されていないので、なかなか新興国市場でうまくいっていない。どういうことかと言うと、営業力って顧客と商談して受注を獲得する能力なんですよね。一方で、マーケティング力というのは売れる仕組みをつくる能力で、新興国の事業ってどっちが必要かと言ったら、マーケティング力なんですよ。なぜならば、何もない、チャネルもない、流通の信頼、顧客の信頼、すべてがない状態でスタートする、もしくはすべてが弱い状態でまだ事業を拡大させていっているというのが新興国、アジア新興国の状況だとすると、売れる仕組みをつくるようなことをしに行かないといけないんだけども、とにかく営業頑張れみたいなね。営業力、顧客と商談して受注を獲得する能力が営業力ですから、この営業力がうまくワークするのというのは、あらゆる土台がちゃんと整備されている先進国の状態を指すんですね。先進国はチャネルもある、顧客もいる、すべてが整備されている状態で営業強化ボタンを押すから、ドーンと売上が上がると。ただ、仕組みがまだできていないのに、そこでいくら営業ボタンを押しても、これ、効果は出ないということで。このマーケティング力、仕組みをつくる、売れる仕組みをつくるんだよと、こういう能力が非常に重要になってくる。だから、戦略なんですよね。戦術じゃないんですよね。営業が戦術だとしたら、マーケティングというのは戦略なので。なので、そこがなかなか人に依存をしてしまっていると。先進グローバル企業が一番やらないことは人に依存しない、人が辞めても回る仕組みをつくるということは非常に重要で、プライオリティがそこにあるので、いかに仕組みをつくるかということが大変重要になってきますよというお話でございます。
皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。