森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、日本の製造業、B2CでもB2Bでも構わないんですが、「製造業が新興国市場(これもアジアに限らずです)、新興国市場で思ったような成果が上げられないときに何が最も大きな要因になっているのか」ということを問われたときに、僕が今まで見てきた中で「ここです」ということをお話をしていきたいなと。逆にそこを改善すれば日本の製造業というのはまだまだ新興国市場でシェアを伸ばすことができると僕は思っていて、今のこの仕事をしているわけなんですけど。うまくいかない要因は何で、そこをどういうふうに改善すればうまくいくのかということについて、ちょっと事例を交えながらお話をしていきたいなというふうに思います。
日本の製造業の弱点は何ですかと言ったときに、戦略上のね、マーケティング戦略上の弱点は何ですかと言ったときに、僕はもう、インプットの少なさだと思っていて、やっぱり圧倒的に日本の製造業は新興国市場で戦う上で、マーケティング戦略上のインプットが少な過ぎる。これは特に市場環境に関してはある程度理解はしているんですよね。ただ、市場環境の中でも流通環境に関してはやっぱり理解が浅いし、最もインプットが少ない部分って競争環境なんですよね。今、自分たちが分かっていることだけを情報のすべてとしてアクションを取るので、失敗のレベルが低いというのを僕はすごくこの20年見てきて感じるんですよね。こんな失敗であれば事前に調べておけばしなかったはずだというケースというのが多くて、だから、致命的な要因でシェアが上がってないかと言うと、非常に単純な要因なおかつ改善がしやすい要因なんですよね。
インプットが足りてないというのは、言ったら情報が足りていない、調査をしていないということなんですよね。B2Cの企業であれば、消費者の需要度がどうだとか、インサイトがどうだみたいな話はやるんですけど、消費者側じゃなくて産業側、いわゆる流通とか競合の調査・可視化みたいなところが本当に弱くて、その前提にはね、「自分たちは日本企業だし、良いプロダクトをつくっているんだと、高い技術力を持って、そして、日本での大きな実績があって。欧米の先進的なグローバル企業は大き過ぎるからあまり競合ではないと、ローカル企業は品質が悪いから台頭してきたと言っても、やっぱりわれわれはわれわれの独自路線でしょ」という言ってガラパゴス化していくわけなんですけど、結局、商品のガラパゴス化とマーケティング戦略におけるガラパゴス化の2つがあって。よく、「とにかくやってみましょう」「走りながらやりましょう」みたいな、こういう会社が結構あるんですけど、日本の製造業の場合、「やってみないと分からないんだから、とにかくやる」と、人を送り込んでやるんだけども、この「とにかくやる」「走りながらやる」って一見聞こえは非常に良いんですよね、チャレンジングな感じがするし。ただ、そもそも「とにかくやろう」とか「走りながらやる」というのは、もともとはシリコンバレー発の僕はフレーズだと思っていて、いわゆるいまだかつて誰も実現したことがないとか、誰も見たことがない世界に突っ込んでいくときに「もうやるしかないから、とにかくやる。走りながら考えろ」って、これは非常に良いと思うんですよね、0→1を生んでいく、前例がないことへの挑戦に対する話。一方で、新興国市場における製造業のマーケティング戦略の失敗事例なんて、先駆者がたくさんいるわけで、いっぱい転がっているんですよね。いっぱい転がっているにもかかわらず、それを拾って分析しなかった結果、同じ過ちをそこでおかしてしまったというケースが非常に多くて、これはもったいないよねというのが非常に多い。
これっていわゆる仮説の精度なんですよね。物事を起こすときというか、アクションを起こすときというのは、人間は必ず仮説を持っていて、企業も当然仮説を持って、その仮説に向かってアクションを取っていくわけなんですけど。この仮説が、先進グローバル企業の仮説と日本の製造業の仮説を比較したときにやっぱり著しくレベルが低くて、低いレベルの仮説に対して進んでいっているので、いつまで経っても追いつかないみたいなところがやっぱり多くて。じゃあ、なぜ仮説が低いのかと言うと、インプットが少ないからなんですよね。仮説ってアウトプットですから、戦略とか仮説というのはアウトプットで、たくさんのインプットを入れて、ここで経験値と混ぜ合わせることで高度な仮説とか戦略がアウトプットとして出てきて、それを実行するからアウトカムとして成果が、結果が出てくるということになるわけなんですけど。そもそものインプットがやっぱり少な過ぎるというのが非常に大きい。ここさえしっかり改善すれば、まだまだ日本企業というのは新興国市場で僕はシェアを伸ばせると思っているのでこの仕事をやっているわけなんですけど、とにかくインプットだと思います。
まだ話したいことはいっぱいあるので、次回その2ということでインプットの話をしていきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。