森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、日本の製造業、B2CでもB2Bでも構いません、日本の製造業が新興国市場でどうやったら成果を上げられるのかということについて、前回に引き続き、お話をしていきたいと思います。
僕がこの20数年見てきて、「日本企業の最も大きな弱点というか、過ちというものは何なのか」というふうに問われたら、「それはインプットの少なさだ」ということをお答えするという話を前回しました。つまりは、情報量があまりにも少な過ぎる、調査をしなさ過ぎる。特にB2Cが消費者のインサイトを調査するとかっていうことはそれなりにやるから、市場環境に関してはそれなりに分かっているんだけども、市場環境の中でも流通環境、あと競争環境、こういったものに関しては本当にインプットが少ない。戦略とか仮説みたいなのというのは、インプットをいかに自分たちの経験で化学反応を起こして仮説もしくは戦略というものにアウトプットしていくかということなので、そもそもインプットが少なかったらアウトプットも少ないというか、レベルが低くなるわけですよね。レベルの低いインプット、量の少ない、レベルの低いインプットで。もちろんそういう企業というのは経験値がないわけですから、少ない経験値でアウトプットを出そうとすると、当然レベルの低いアウトプットになると。それが実際にアクションとして取られるのでアウトカムがなかなか出ないという、この非常に悪循環な状態に陥っているという。
今までって、アジアも含めて新興国市場ってあまり主戦場ではなかったので、そこに予算って割かれてこなかったんですよね。欧米のためならお金をかけるけど、新興国はどうせ大したマーケットにならないからそんなにお金使えないよねという流れもあったので、確かにそこに調査費を割くなんていうことはできなかった、そう思うんですよね。ただ、企業によっては、結構な有名企業なのに、お金をかけて調査をするという習慣が社内になくて、結局、担当者が手探りでいろんなことをやっているんだけども、当然、調査は調査屋、餅は餅屋の仕事で調査は調査の専門の人がやる仕事なわけで。そうすると、やっぱり大したインプットというのは入れられないので、労力と時間だけはかけたんだけども、大したインプットが入らないと。けど、そもそも上がそんな予算、予算というものが会社にそもそも存在しないので、それを誰かが前例を覆してやろうなんていうことはなかなか組織の中で起きなくて、いつまで経っても担当者とか担当チームでわーわーやっているんだけども、やっぱりちゃんとしたインプットにはならない。そうこうしているうちに、担当が替わりました、部門が替わりましたと。担当が替わったら自分のロールから外れるわけだから、そのことを真剣に考えるなんていうことはもうしなくなるので、また次の新しい担当者が一からやっていくと。それで、なんとなく「これはまずいな」と真剣に考え始めた頃にはまたローテーションで、部門替えでまた新しい、というのを繰り返している企業も少なくなくて。
15年ぐらい前から振り返ると、企業名までは言いませんけど、同じ企業の違う担当者が同じレベルの相談を僕のところにしてくるという企業さんはたくさんあるので。たくさんと言ったら言い過ぎかもしれないですけど、少なくない。だから、やっぱりずっと同じ課題のところで足踏みしてしまっていると。そんなのを調査して、自分たちに足りているものと足りていないものを明らかにして、足りていないところを補っていくという方向に進んでいけば、もうとっくに進んでいるのになという状況の会社は少なくないので、やっぱりそこはもったいないなという気はします。
1兆円を超えてくるような会社はバンバン調査をするんですよね。数千万単位でバンバンやっています。数千億後半の企業もそんな感じだと思います。数千億前半の企業も数百万とか1,000万、2,000万ぐらいの調査はやっぱりやる傾向があると。一番が数百億~1,000億ぐらいのところの規模の会社がなかなか調査をしっかりやってインプットを増やすという習慣が社内に根付いていないので現場が苦労しているというような、そういうイメージがやっぱり多いんじゃないかなと。なので、そこはもったいないな、そういう企業に良い企業というのはいっぱいいるし、製造業ってその領域、製造業でなくてもその規模の社数が一番大きいわけですから、数百億~1,000億、2,000億ぐらいまでのところがやっぱり大きいわけなので、そうすると、やっぱりもったいないなと。
どれだけ高度な仮説をつくれるかなので、仮説が高度でなければ、やっていることのレベルが他社に比べて低いわけで、新興国市場って競争なので、いかに競合からシェアを獲るかと。自分たちのシェアを上げようと思ったら競合のシェアを下げないといけないので、そうすると、ひとりよがりで前に進んでも駄目で、いかに競争力を高めるかと。競争力を高める上ではやっぱり競合の実態を分からないといけないので、競合の可視化をしっかりするということはもう本当にすごく重要な要素。なので、ぜひね、この競争環境を可視化するということを心掛けてもらえたらなというふうに思います。
今日も時間が経ってしまったので、これぐらいにしたいと思います。また皆さん、次回お会いいたしましょう。