森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回、前々回とね、日本企業の、日本の製造業の新興国市場における弱点とは何なのかということについてお話をして。それはインプットの少なさ、低さ、レベルの低さですよと。インプットが少ないので、仮説として出てくる、もしくはマーケティング戦略として出てくるアウトプットのレベルも低いんだと。その低い仮説や戦略をいくら実行しても、良いアウトカムにはならないよねということをお話をして。いかにこのインプットを増やすかということをやらないといけないですよというお話をして。「とにかくやってみる」とか、「走りながらやるとか」って、もう前例があることをとにかくやってみるなんていうのは、こんなにばかげたことはなくて、どうせやるんだから仮説を高めてやったほうが絶対に良くて。いまだかつて誰も実現したことのないようなことにチャレンジするんだったら、とにかくやってみるというのは僕は大賛成だけども、製造業の新興国市場の失敗事例なんて、先進グローバル企業が散々経験してきていることで、それを拾わずに同じ失敗をするというのはあまり賢くないということなので、とにかくインプットを増やしましょうねと。
市場環境に関してのインプットはそこそこあるんだけども、競争環境に関するインプットがとても少ないですねと。その中で競合をしっかり調査をする、競合調査も、自分たちの現場の営業マンが現場で拾ってくるような情報なんて競合情報ではなくて、競合情報の中でも流通に関係する、チャネルに関係する情報というのは僕は非常に重要だと思っていて、そこにプロモーションが両輪で回っていくので。プロダクトとプライスが両輪で回るように、チャネルとプロモーションが両輪で回るんですけど、このチャネルに関してね、競合が、例えばどういう規模のディストリビューターを何社使っていて、日々どういうことをさせているのか、みたいなところのぶつけ合いなんですよね、シェアって。
そもそも自分たちは理由なき1カ国1ディストリビューター制ですみたいな、ディストリビューターのグリップ効いていません、お任せしていますみたいなね、定期的に訪問しています、でも、訪問すると見せたい小売の現場だけ見せられてとか、見せたい、会わせたい、ディストリビューターが会わせたい顧客にだけ会わせさせられて、本当にメーカーが見なければいけない、うまくいっていないところには連れていってもらえませんみたいな、そういう状況のメーカーさんというのはたくさんあって。向こうは業界トップ何位のディストリビューターを何社使っていて、こっちは業界何位かよく分からないディストリビューターを1社使っていますみたいな、こんな競争をしていて勝てるわけがなくて。
そういうことも数値で比較していないんですよね。だから、自分たちのディストリビューターの競争力をどれぐらい把握しているかとか、自分たちの競合のディストリビューターと自分たちのディストリビューターの競争力を点数つけるとどういう感じですかということに対して答えられる企業というのは本当にわずか。基準値がそもそもないので、自分たちがシェア2割獲りたいとか、10%獲りたいとかっていうときに、どれぐらいのアウトレットでどれぐらいの回転数をやらないといけないのかとか、B2Cだったらね。B2Bだったらどのインダストリーのどの顧客にどれぐらいの頻度で買ってもらわないといけないのかというところの基準値が甘くて、それをするためには何社のディストリビューターが必要で、セールスマンが何人必要かという、そのところがやっぱり甘々になっていて、よくよく計算したらこれでは絶対に何年かかったって一生その目標を達成できないですよね、という状態になっている企業がかなり多い。
だから、うちの会社でも、問い合わせである調査とかプロジェクトって、お客様の販売チャネルの診断をするという、この診断が1つ、あと、競合を調査するという、この2つでほとんどなので、大半がこの2つの依頼なので。特にこの5~6年はやっぱりそれが顕著で、そこを高めていかないと、なかなかやっぱりこれからさらに高度な競争になっていったときに、日本の製造業に勝ち目がないでしょうし。これってやっぱり自前でできるような話ではないのでね、もちろんうちでなくても外資のコンサルファームもたくさんあるし、日本のシンクタンクもいっぱいあるし、自分たちが合うところにお願いをしたらいいと思うんだけども。とにかく自分たちのインプットを増やすということをやる。そうすると、具体的になるんですよね、戦略とか戦術が。何が足りていない、これが足りていないから、これをこういうふうに補いましょうということが明確になるので。何かよく分からないんだけど、何となくここが駄目だって分かっているんだけども、うまくいっていませんみたいなね。新商品を出してなんとかしましょうみたいな、いやいや、流通に問題があったら、新商品をいくら出しても何ともなりませんよという、そういうことも多くあるので、とにかく競合の販売チャネルと自分たちの販売チャネルを比較するということからまずは始める必要があると。
ここで負けていたら、どんなに製品で勝っていてもね。唯一無二なんですと、うちの製品は。もうこの製品はうちにしかつくれないとか、B2Bだったらね。もしくは圧倒的にB2Cでもバズりました。でも、バズったぐらいではもう一過性なので、やっぱり瞬間風速で流行り廃りになってしまいますよね。だから、もう本当に唯一無二で。結構、難しいんですよ、この商品でないと絶対駄目だなんていうのはね。消費者から見ても、企業から見ても、やっぱりそんな圧倒的な商品って少なくて、代替品が必ずあって、この商品でもいいというケースというのはあるわけなので。だから、チャネルを強化しないといけなくて。いや、もう、この商品でないと絶対駄目なんだというものをつくれたら、チャネルも値段も何もかもどうでもいいわけなんですけど、なかなか現実にはそうはならないので、やっぱりチャネルをしっかりと可視化すると、インプットを増やせば日本の製造業はまだまだ新興国の市場でやれるというふうに思っています。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。