森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回まで、日本企業がアジア新興国市場でうまくいかない、日本企業のうまくいかない要因って何なんですかっていう話を2回3回ぐらいに分けてやってきました。1つ大きく感じるところはインプットの少なさ、質の悪さ、つまりは調査を全然やっていませんよねということをお話をしてきていて。だから、持っている情報量が圧倒的に少ないし質も悪いので、情報というインプットをもとに立てるアウトプットとなる仮説のレベルが低いと。その低い仮説を検証するということがいわゆる戦略の実行をするということになるわけなんですが、結局そもそもレベルの低いことを、もしくは間違ったことをやるわけなので、実際にそれを実行しても、アウトカム、成果、結果としてもあまり良いことになっていないよねと。なので、一番最初のボタンがやっぱりちゃんとかかっていないというのが非常に大きな要因ですという話をしてきていて。とにかく走りながらやるとかっていうのは、シリコンバレーのベンチャーでいまだかつて誰もやったことのないことを0→1でやるというのは、これは非常に良いと思うんですよね、とにかくやってみるという。ただ一方で、アジア新興国市場の展開においては欧米の先進的なグローバル企業がさんざんかつて失敗をしてきていて、そして今があるわけで、日本企業の失敗事例もさんざん転がっているのに、そこにすべて蓋をしてね、とにかくやってみよう、自分たちは自分たちなのでみたいな、そんなのはまったく通用しないですよねというので、いかに調査をしっかりやって、仮説の精度を上げるかということが成功する確率を上げていくって、基本的には確率論だと僕は思っているので、その確率をどれだけ上げるかという。今まで20数年見てきたこの失敗事例というのは、基本的には「こんな失敗だったらやる前から分かっていたのにな」というような失敗がやっぱり9割以上だと思うので、基本的には調査は重要だよねという話を前回はしました。インプットが足りないよねと。
どういうインプットを詰めればいいのかという話もしてきたのかな。もう1つ、今日お話したかったのが、前置きがまただいぶ長くなりましたけど。(笑)今日お話をしたかったのは、中長期での将来予測というか、目指すべき場所の再認識であったり、共通認識みたいなところがやっぱりぼんやりしていて、考え方のベースが積み上げになっているので、基本的にはもうすでに出てしまっているところなんていうのは去年の積み上げの数字をやっていく、やり方に関しても今までやっている、もうすでにあるやり方をさらに上塗りしてということになっていくわけなので。根本的に間違っているところを抜本的に改善するみたいなことはなかなか着手がしにくくて、当然、中途半端に売上がついてしまっていると大きなリスクは負えないので、それはそれで非常によく理解ができますと。そうこう言っているうちに自分の担当が3年4年で替わるとか、駐在が日本に戻って入れ替わるとかっていうと、また今のやり方おかしいのではないかなと、これは変えないといけないのではないかなと思っていたものが、次の人に引き継がれて。いきなり引き継いでね、引き継がれて変えなきゃいけないと引き継がれているので、じゃあ、すぐに変えましょうという話にはならないので。問題に気付くのにやっぱり3年ぐらいかかるわけですよね、自分自身で問題を実感するのに。実感して、じゃあ、変えようって、なんとなく行動を始めて4年目、5年目で帰任になってしまったら、それは同じことが数十年繰り返されるみたいなね。そうこうしているうちに現地のパートナーとかディストリビューターもやりかけみたいな状態で人がどんどん変わっていくから、途中でもう、日本企業はこんなものかなというふうに思ってしまっているようなパートナーであったり、ディストリビューターみたいなものも当然出てくるわけで。
すでに出ている企業、うちのクライアントももうすでに新規というのは本当に数%なので、すでに出ているという企業がほとんどですと。そんな中で戦略の再構築とか販売チャネルの再構築をしていくときに、3年5年10年とかで少しちょっと中長期で、3年とかって言うと短期ですけど、5年10年ぐらいの、なんとなく競争環境とか市場環境がどうなっていくのかっていう、3年なんていうのはかなり厳密に想定値を立てて、5年ぐらいまでもそこそこしっかり立てながら、ただ一方で10年後の世界ってなかなか読み切れないし、あんまりガリガリやっても意味がないんだけども、何か目安を持ちながら、3年に1度ぐらい更新をかけていく、アップデートしていくみたいなね、ことをやっていかないと、なんとなく正しいと思って新興国でやってきたのに、自分たちが正しいと思ってやってきた方向とかスピードとは違った方向に新興国市場が進んでいたりとか、自分たちが正しいと思ってやっていたスピードよりも速いスピードで成長するというケースがやっぱりあって。なので、やっぱり入り込んで今の目の前のことをやると、周りも見えにくくなるので、僕は3・5・10ぐらいで毎年とは言わないですけど、2~3年に1回ぐらいは、この5年10年先のなんとなく目指す姿をアップデートするみたいなことは、やっぱりしっかりやっていくほうが良いと思います。その上で今やるべきことを逆算するということはすごく重要なので。見ていると、やっぱり積み上げだし、基本的にゴールの設定ってそんなになくて、前年度やったことをプラス110%やろう、チャレンジ115%みたいなことを繰り返しやっているということなので、目指すべき姿ってどこなんだっけという、今負けていても、この時点で勝っているほうが良いのか悪いのかみたいなところも含めて逆算をするということがすごく重要で。
ちょっとこの辺の話をもう1回、もう時間がきてしまったので今日はこれぐらいにしますけど、また次回続きをお話できたらと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。