森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、僕の日々の仕事の中で「これは非常に重要だな」というふうに感じることを皆さんにシェアをしていきたいなというふうに思っています。日本企業のアジア新興国市場の展開において「ここってすごくポイントとなる部分だよね」ということをちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。
ちょっとね、言葉を選びながら、クライアントの話でもあるので、言葉を選びながらなので少しちょっとゆっくりお話をするかもしれませんけども…。僕の仕事の9割は、新規の国に参入する際の参入戦略をつくるというよりかは、もう9割方はすでに進出をしているという企業のために、出ているんだけども、数十年前に出ているんだけどもうまくいかなないと、もしくは鈍化してきている、もしくは今までは日本とか欧米の市場を優先的に見ていて、あまりアジア新興国は重要じゃなかったんだけども、ここにきて非常に重要になってきたので、今までの成長スピードじゃなくて、さらに桁違いの成長をしたいから再参入戦略をつくるみたいな、そういう仕事が非常に多いわけなんですよね。そのときに、依頼されるのは本社なんですよ。本社の経営企画の担当役員さんとか、海外担当役員さんなんかからお声掛けいただいて、「現状、今こうなっていて、こういうふうにしていきたい」ということを経営の観点で見るわけですよね。だから、必ずしもうまくいかせるということだけが求められていることではなくて、そもそも客観的に見てこれってうまくいくの?いかないの? どれぐらいうまくいくの?いかないの? いつまでだったらうまくいくの?いかないの?みたいなことを判断をしていく。依頼をしてくる海外担当役員の方は、もしくは社長さんは、それをベースに自分たちで経営判断をしていかないといけない。撤退をするのか、さらに投資をするのかっていうことを考えていくわけですから、そういう視点でわれわれは仕事をしていきますと。当然、現地法人とも関わっていくわけですよね。現地法人にもそれぞれ社長がいて、駐在員がいてと。そのときにやっぱり日本側の温度感とか視点みたいなものと、現地法人の視点と温度感っていうのは結構違っていて。よく、昔、OKYとかね、「お前が来てやってみろ」みたいなことを現地法人が、本人を目の前にしては言えないけども、酒の席でそう言うと。本社から「こうすればいい、ああすればいい」と言うんだけど、「おまえが来てやってみろよ」ということ、愚痴を言うみたいなことを結構言われていた時期がありましたけど、それはそれでそういう観点はそういう観点であるんだけども。
一方で、やっぱりその現地法人で長くいればいるほど、真実が見えにくくなってるっていうケースがほんとに多くて。つまりどういうことかと言うと、問題のボトルネックがどこにあるかとかいうことを見い出していくときに、もしくはここを強化をしていくといいんじゃないかとかっていうことを見い出していくときにね、再参入戦略をつくる上で、現地法人の人たちはそれなりにやってきているわけですよ、10年20年そこに駐在している人たちもいるわけなので。そうすると、その人たちが持っている答えって、そんなに大きく逸れるっていうことはなくて。要は何を言いたいかと言うと、結構、問題って、日本側が考えている問題もそうだし、現地法人が見ている問題もそうだし、われわれが客観的に見させてもらう問題っていうのはだいたい同じ方向なんですよ。いわゆる右上だったら、もう右上のここ、45度のここが問題ですと、ここを改善すると上がっていきますみたいな、だいたい枠は一緒、これが、いや、左下ですなんていうね、全然あさっての方向の回答が出てくるっていうことは結構稀ですと。だいたい問題っていうのは同じようなところにあるんですよ。あるんだけども、何が違うかって言うと、その粒度と深さなんですよね。要はつまりは、おそらくここに問題があるんじゃないでしょうかと。ここのわれわれの仮説はこうなので、ここをもう少し深堀っていきましょうと。そうすると、きっとあるべき姿っていうのが見えてくるというようなことがあったときにね、現地法人の視点で言うと、「いや、もうそれはやったんで。さんざんやりました。それでも駄目なんです」と、「これもやりましたと、それでも駄目なんです」と。だから、現地法人からすると、「いや、自分たちは全部やったんだ。やったんだけど駄目だったんだ」ということを言われるケースっていうのが非常に多くて。でも、そのやり方とか、誰がやったかによって、成果なんて全然変わってくるので。基本的にどこまでやったかなんですよね。やったはやったでいいんだけども、「いや、そのやり方じゃ無理だよね。なぜならば粒度と深さが浅いから、粗いから」っていうことになっていると、そういう問題がほとんどで。結局、「全然違う方向を向いていました、私たち」なんて、そもそも違う方向を向いて何十年も現地で走り続けていたら、それはもう能力ないじゃんという話なので、そんなことはまずないんですよ。ちゃんと正しい方向に走っているんですよね。ただ、その走り方の粒度と深さが甘かったっていうケースがほとんどなので、そこを見直すっていうことが大半なんですよね。うまく伝わっているか、ちょっとあれなんですけども。
なので、まとめると、問題自体はおおよそ皆さんが考えているところに問題はちゃんとあって、それが検討違いなことっていうのはそんなに、稀ですと。なんだけども、じゃあ、それを正しい方向に向けるためのやり方、粒度とか深さが全然甘いと。そこを競争環境を見たときにね、競合がどこまでの粒度で、どこまでの深さやっているのかっていうことなんですよ。そうすると、ブレークスルーするっていう話なので。ちょっとやったぐらいじゃブレークスルーなんかしないんですよね。ある一定のところまで突き抜けるから初めて成功のところにふっとこう切り替われるだけで、進んでいる方向が正しかったら最初からふっと行くかっていったらそうじゃなくて、途中のところまでは暗いんですよ。「あれ? これは本当に正しいのかな、自分たちがやっていることは合っているのかな?」と、そう悩むんだけど、突っ切ってしまうと、そこに初めて光が射すっていう、そういう状況なので。なんかね、中途半端なところで止まっちゃってて失敗になっちゃってるんだけども、そこを突き進むっていうことがあれで。分かりやすい例で言うと、消費財のストアカバレッジを数十万店レベルまで上げるっていう、この1点に集中をする。これ、セルアウトしなかったら、数十万店レベルまでずっと継続的に持続的に上がっていかないので、基本的にはストアカバレッジをどれだけ上げるかっていうことだけを考えていけば、ストアカバレッジを上げるために戦略・戦術を全部集中させるということをすると、そこが吹っ切れるので。「いや、やったんです。ストアカバレッジを上げるために頑張ったんです。でも、上がらないんです」みたいなところでやめてしまうから、ブレークスルーしないという、そういう問題がほとんどなので、何て言うんですかね、そういうことです。
ちょっと頭を整理してね、もう1回ぐらいこの話をしたいなというふうに思います。今日は長くなってしまいました。すみません。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。