森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、調査の重要性ということで、インプットの大切さについてお話をしていきたいと思います。
日本の企業のアジア新興国市場の展開において、これはB2CでもB2Bでも構わないんですけど、うまくいっている企業といっていない企業の差って何なのかって言うと、もうインプットの量と質ですと、調査しているか、していないかですと、日本企業はあまりにも調査をしなさ過ぎですよという話を前回からしてきていて。
僕、20数年前の最初の会社、調査会社だったんですよね。香港で友人と設立をした会社があったんですけど、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブという、通称SDIという会社で。その会社が非常に良い会社で、もう売却をしてしまって、中堅のコンサル会社に統合して今はもうなくなってしまったんですけど。その会社、当時、2000年とかっていうと、本当にまさに中国市場の内需の獲得に動きだしたみたいな、そういう時代で。けど、今まで中国に駐在で送り込まれていた人たちって生産管理とか品質管理の人たちで、中国国内市場のことなんていうのはほとんど知らなかったんですよね。なぜならば、いわゆる工場勤務で工員を相手にしているので、いわゆる中国のマーケットと言っても、中国人と言っても、工員を相手にしている、一般の人ではなくて、相手にする中国人というのは工場に勤めているような人たちだけだし、基本的には日本人同士で日本食料理屋でご飯を食べて、そのあと日本人カラオケでその日を締めくくってみたいなね、朝は日経新聞を読んでみたいな、そういういわゆる中国にいながら日本の社会に、コミュニティにいたので、ある特定の分野では中国のことをよく分かっているんだけども、それ以外のことではあまりよく分かってないということに気付いて、そして、その中国の内需、マーケットですね、そういうものを調べる調査会社にこのSDIという会社は進化していって、そのうち、中国だけではなくて、ASEANとかね、新興国全体を調べるようになって、そんな会社だったんですけど。
やっぱり思うのは、調べるってすごく重要だなと。われわれも全然知らなかったんですよね、初めて調べていくので。今ね、この20数年調査ばっかりやっていたら、このスパイダーという会社も強みのベースにあるものというのは産業調査ですから、それがベースにあって戦略提言をしたり、販売チャネルの構築をしたりということなので、調査が全部のベースなんですよね。僕のキャリアは。そんな中でやっぱり調査をしている会社としていない会社というのは大きい差がやっぱり当時からありましたし。調査をすることが癖になっている会社というのは、どんどん、どんどん、インプットが増えていくと。インプットが増えていくと、生み出す仮説のレベルが高いんですよね。だから、仮説を実行しても、仮説が外れるということがなくて、要はずれるということはあるんですよ、仮説が。仮説というのは外しては駄目で、ずれるのはいいんだけど外しては駄目。失敗する企業というのは、仮説がないという企業と、あと、仮説を外すという企業なんですよね。あと、もう1個が、仮説を外してその理由が分からないという。これって調査していないからなんですよね。調査をしている会社は、仮説の精度が高いので、仮説が外れることはまずなくて、でも、ずれることは必ずある、往々にしてあると。このずれの調整をしながらまた次の仮説を立てて、繰り返しゴールに向かって突き進んでいくと、これが戦略実行のあるべき姿なんですよね。インプットがやっぱりしっかりしている会社というのは、このサイクルが非常によくできていて。競合がどうやってシェア30%をつくっているのか、競合の販売チャネルってどうなっているのか、ディストリビューターってどういうクラスのディストリビューターを使っていて、そこにはどういう人員がいて、自分たちの自社営業ってどうなっているの?と、何人のスーパーバイザーと何人のセールスをどう使ってどう回しているの?みたいなことは最低限やっぱり知らないといけない。
もちろんそれは情報だけ知っていたら成功するかと言うと、もちろんそうではないけれども、情報を知るということはたぶん成功の可否の、僕、6割ぐらいはもう情報で決まっていると思って、インプットで決まると思います。これを誰がどうやるかということが非常に重要だとするとね、「どう」というところが情報なんですよね。参考になりますから。他社はこうやっていると、その情報をつかむと、じゃあ、どうやるかの「どう」のところは、半分は競合他社を事例に参考になるけども、「誰が」なので、これが非常に難しいところで、われわれもできる限り体系化をしていこうと思って日々やっていますけど、やっぱり本当に最前線の部分って体系化しにくい、センスみたいなところがどうしても残るんですよ、最後。だから、同じことをやっているのに、Aさんがやったから失敗したけど、Bさんがやったら成功するということは全然あって、それってやっぱり最終的にはそこの最後の人によるセンスみたいなところがね、極力そこを排除していかないといけないんだけども、残っていったりはするので。あと、もう1つは、同じようなことをやっているように見えて全然違ったりということもあるので。
ちょっと話が逸れましたけど、でも、いずれにしても調査ってやっぱりすごく重要で、僕がこうして皆さんに何かをお伝えできる立場のお仕事をさせていただいているのも、やっぱり、じゃあ、僕と皆さんの違いってなに?と言ったら、情報量がやっぱり非常に大きいと思うんですよね。20数年ひたすら調査をずっとし続けてきていて、そのインプットの量がやっぱり非常に大きいし、そのインプットをベースに実地をやって、そこから実体験を手に入れていくという。なので、そもそものやっぱり情報がないと、なかなか成功をつかんでいくというのは難しくて、日本企業に足りていないのは情報なのかなと。
とにかくやってみるというのはね、これは新しい産業の、0→1を生むみたいなね、こういうときに使うべきお話で、とにかくやってみるみたいな。もうすでに失敗事例があったりとか、成功事例があるようなものね、こういうのってとにかくやっては駄目なんですよね。まず調べると。だって、どうしたら失敗するのか、どうしたら成功するのか、ケーススタディが出ているわけだから。シリコンバレーでイノベーションを生むようなベンチャー企業がね、とにかくやってみるというのは、これは前代未聞の挑戦をしているから、とにかくやってみるという話で。前代未聞の挑戦をするんだったら、とにかくやってみたらよろしいと思うんですよね。ただ、アジア新興国市場でマーケットシェアを上げるなんていうのは、別に前代未聞の話ではなくて、たくさん失敗事例がある。その失敗事例も見ずしてとにかくやってみる、これは大きな間違いですよと。とにかく調査が重要であると。失敗をしたときの損失を考えたら調査費用なんていうのは微々たるものなので、ぜひもっともっと調査をやってもらえたらなというふうに思います。
皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。