東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今日は素敵なゲストをお迎えしているのですけれども。
森辺:ハラル・ジャパン協会の佐久間理事をお招きしております。佐久間さん、どうぞよろしくお願いいたします。
佐久間朋宏(以下、佐久間):よろしくお願いします。
森辺:佐久間さん、ハラル・ジャパン協会ということなんですけども、今回ちょっとハラルの話を中心にお話をお聞かせいただこうかなと思っているんですけども。多分リスナーの中には「ハラルって何?」という方も大勢いらっしゃると思うので、ハラルと呼んだりハラールと呼んだり色々な呼び方があると思うんですけど、協会のご紹介の前にハラルっていったい何なのかというところから、協会の名前にもなっていますがお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
佐久間:ハラルないしはハラールということなんですけど、英語読みだとHALALなんですけど、ハラルと言ったりハラールと言うわけなんですけど。イスラムというのかイスラームというのか一緒ですから、基本一緒のことです。ハラルもハラールも一緒です。これはイスラム教の宗教の用語になりますので、もちろんあるんですけど、多分みなさん食べ物にすることのことを考えられると思いますけど、実はイスラム教の方によってハラルないしハラールはライフスタイル全般で、やっていいこと、つまり許されたもの、許されたことという意味なんですね。つまりどういうことかと言うと、たとえば時間を守るとか、約束を守るとか、人のお金を盗まないとか、こういうことが実はハラルなんですね。
森辺:日本で言うと道徳の授業みたいな、そういうものですね。
佐久間:道徳、許されているものということは多分そういうことで。その中で多分みなさんが多分一番よくご存知なのが食べ物でいう、豚がダメだとか、アルコールがダメだとか、そういうところを多分断片に知っていると思うんですよね。こういうことを一応ハラールなのですけど、もう少しだけ正確にですね、聞いていただける方にお話しますと、豚がダメではなくて、豚由来のものが一切入ってきちゃダメということなので、ゼラチンもラードもショートニングも乳化剤も、いわゆる動物系に入っているものはもちろんダメですし、豚の毛を使用した食品に触る刷毛だとかカプセルだとか、そういうものもダメなんですよね。
森辺:なるほど。では豚肉を単純に食べてはダメですよというだけではなくて、豚由来のものは全てダメだということなわけですね。
佐久間:それからよくみなさん間違われるんですけど、じゃあ鶏肉が良いのですか?牛の肉が良いのですか?羊の肉が良いのですか?というのですけど、この肉もいわゆるイスラムの処理に乗っ取った方法で屠殺した肉じゃないと食べちゃだめだと。ここにも実は制約があるという。こういうことなんですね。
森辺:その屠殺の方法が、たとえばどんな?
佐久間:イスラムの方法の屠殺というのは、もちろんイスラム教徒の人が食べる前に神聖な命をいただくわけですから、儀式をすると。簡単に言うとそういうことなのですが、お祈りをしながら鋭利な刃物でこの頸動脈というのですかね。こういうところをいっきに切って血液を出して楽に屠殺をして、それから血を十分、血を実は食べるというのはイスラムではハラームなので。ハラルの反対のことをハラームと言ったり、ノン・ハラルと言うのですが、血抜きをしてそれでいただくと。そういうことがイスラムの処理の屠殺方法と。これは鳥も牛も羊も同じようなことでやっているということでございます。
森辺:なるほど、そうか。それで日本に結構最近オリンピックに向けて観光客が増えているじゃないですか。よくレストランなんかで、これは何だ、何だというようなことを言っているのはまさにそういうこと。
佐久間:そうですね。豚肉が入っていなければ良いというわけではなくて、他の肉も制約がある。これが実はイスラムもハラールにおいての根幹のところだという風に思います。もう1つはみなさんがご存知のアルコール。このアルコールの定義は、実はいくつかあってですね。イスラム教はもちろん1400年前に出来た世界宗教ですので、非常に長い歴史の間に国や民族や宗派によってですね、ちょっとずつ差異はあるんですけど、基本的にアルコールですね、飲むアルコールについては1滴も入っていてはダメだと。この飲むアルコールっていうところがポイントなんですね。つまり、ワインだとか日本酒だとか味醂だとか、または醤油や味噌がアルコールを添加したものであれば、これも食べちゃダメだと。ここが実はポイントなのです。
消毒のアルコールについては認証団体の先生によって許されたり許されなかったり。または工業用アルコールについても、残留濃度の基準によって、マレーシアではいくら、インドネシアはどれだけ、それから中東ではどれだけということで、アルコールの濃度についても基準があるということなんですが、飲むアルコールについては1滴もダメだと。この基準だけは変わらないと。この2つでだいたいハラールの食べ物についての60点から70点ぐらい取れればと。こういう風に覚えていただくと良いかなと思います。
森辺:銀座なんか行くと、もちろんレストランのウェイター、ウェイトレスもハラルのことはある程度分かっていて、ノーポークとお客さんに言っているのですね。ノーポークと言ってもお客さんがしつこく質問しているんですよ。多分しつこく質問しているのはノーポークなのは分かっているんだけど、屠殺の方法はどうなのだとか、そういうことを気にされている。
佐久間:少しギャグのような話なんですが、豚肉がダメだと言ってベーコンを出したお客さんがいるのですけど、ベーコンも豚由来で出来ているんじゃないかと。またソーセージを代替えに出すという、本当に笑い話があるのですけど。要は豚由来が何から出来ているかというのを日本人はあまり深く考えていないんですよね。それからさっきの言った他の肉なら何でも良いのではなくて、屠殺方法に制約があるので、ほとんどのレストランやホテルや旅館ではストックがないと。そうなのです。
森辺:ラーメンだってラードを使っていたらダメですし。
佐久間:ラーメンは実はイスラム教徒の方が食べたいNo.1なんですね。特に観光客の方は1番で。焼肉も食べたい、しゃぶしゃぶも食べたい、天ぷら、それからもちろん寿司。こういったものが食べたいんですけど、ラーメンはNo.1です。
森辺:そうするとそこも鶏ガラのスープだったら鶏の屠殺の方法がちゃんとしているかどうかとか。
佐久間:厳格にハラールのチキンで料理した、調理したスープだとか。または魚介類でダシを取ったもので召し上がるとか。そういうことをしないと本来の意味のハラルラーメンというのからは遠いかと思いますけどね。
ただ日本に、今日の話で言うと日本に来ている今の方っていう、インバウンドというコンセプトで言うと、そんなに厳格な方が日本に来ているわけじゃないので。イスラム教を守りたいというよりはむしろ日本を楽しみたいと思って、日本が非イスラム国家だと思ってきているわけですから、その辺は柔軟に対応していただけるのが良いので、そんなに心配する必要はないかと思います。むしろ情報開示のほうが重要になるんじゃないかなと。うちはこういう風に作っていますよ、こういう材料で作っていますよ、それでよかったらどうですか?というアプローチの仕方が、日本におけるイスラム教徒対策ということについては良いんじゃないかなと、そんな風に思っています。
森辺:そうですね。インバウンドだとすると、ある程度前提で来ていますから若干の融通はというか、フレキシブルな思考は持ってもらえるかもしれない。
佐久間:人が人と対応しますので、コミュニケーションをするということはできますけど、こと輸出だとか、進出だとか、海外生産ということで言うと、ある程度ハラールのことをきちっと理解して、ないしは物によってハラル認証があったほうがより売れる、ないしはもっと売れるというコンセプトでは、ハラール認証というのは勉強して日本の企業にとって損はないかと、そんな風に思っています。
森辺:逆にアウトバウンドのほうが、現地のどっぷりな、要はマスの人たちを狙うわけですから、そこのほうがやっぱりハラルというのは非常に重要になってくると。
佐久間:そうですね。今まで日本の企業というのはどちらかというと現地に進出した場合、まずローカルを狙うというよりはどちらかというともう少しアッパー層を狙う。そうするとですね、比較的東南アジアであっても中東であっても、アッパー層イコールキリスト教だとか華僑、いわゆる仏教徒である可能性が非常に高かったので、今までイスラム教徒対応しなくても良かったという風に今考えてきたと思うんですが。今実はローカルにやはり入っていく中でイスラム教というのをどうしても避けて通れないと。そうなったときにハラール対応ないしは、その中の代表なのがハラール認証を取得するということを考えた企業というのが今非常に多く、またそういう企業が今伸びて株価なんかでもね、反映すると。そんな時代になってきたんじゃないかと思うんですね。
森辺:ハラル人口って、ものすごいですものね。
佐久間:今世界人口が約71億人と言われています。その約4分の1の、18億5000万人くらいから19億人がいまイスラム教徒だと言われていますので、この4分の1のマーケットをね、無視するのか、無視しないのか非常に大きなところだと思います。
森辺:インドネシアなんか行くと、全部の製品についていますもんね、ハラルの認証マークが。
佐久間:やっぱり、そもそもハラルマークというのは非常に重要なのは、実はイスラム教徒の方にとって成分を見なくても食べられますよっていう、安全な品のマークなのです。つまり、日本が昔JASマークやJISマークを推奨してきたように、イスラム教徒にとっての安全、安心のマークが、実は彼らにとっての手に取ったり、食べたり、または肌につけたりする上で1つの尺度になっていると。そういう点において、マーケティング的には非常に重要なマークとなっていると思います。
森辺:そうすると、どちかというと食品、豚みたいなイメージがあるのですけど、結局アルコールがどうのこうのと言うのだったら、飲むアルコールではなくて除菌ワイドみたいなのがあるじゃないですか。結構日本は荒れて装置産業なので安く作れるし、ものすごくたくさんの種類の除菌ワイドが出ていますし、手のアルコール消毒も非常に商品としても多いので、ああいういわゆる食品に関係ないような技術さんも、ハラル認証みたいなところをしっかりと考えて海外展開していかないと躓いてしまうと、そういうことなんですかね。
佐久間:今私どもの協会に非常に問い合わせが増えてきているのが、以前はやっぱり食品関係のことでメーカーさんが中心だったんですが、今はですね、化粧品とか生活用品ですね。それこそ今のアルコール除菌だとか、それから水のフィルターだとか、それから石鹸、シャンプー、リンスといった、そういう生活用品。そして化粧品、健康食品、こういった方が非常に幅広いジャンルで今問い合わせをいただいて、海外に進出してみたい、ないしはインバウンドでお土産として持っていっていただけないかなと。そんなニーズをですね、我々の協会のところに問い合わせが来たり、勉強したりすると。そんなことがあるので、まさに今森辺さんがおっしゃった通り、食べ物だけじゃないというところが、やっと日本の企業も気付き始めたのかなと。そんな風に思っています。
森辺:確かに化粧水なんかアルコール入っていますものね。
佐久間:ただし、ああいうのの成分がリチルアルコールやミチルアルコールといった工業成分ならば、最終残留濃度であったり、ある規制の範囲内であれば使用しても良いと、そういうことも勉強さえすれば、ある程度。アルコールが入っているからダメじゃなくて、少し勉強すれば色々な角度でアプローチができ、場合によってはハラル認証を取得して売り上げを拡大すると。そんなことも可能じゃないかなと、そんな風に思っています。
森辺:さっきちょっとお話にあったと思うんですけどもね。ハラルの概念に対する臨機応変にやる層もいますよということだったんですけど、これってどうなんですか?時代と共に徐々に臨機応変になってきているのか、何か日本も昔ダメだったのが今よくなっていたりとか、時代と共に変わっていったりっていうのはあるじゃないですか。でも、今言っているハラルは習慣とか道徳とか常識とかっていう問題の中に宗教が関わっているので、そんなに急激に変わるということはないと思うんですけど、どうなんですか?変わりようというのですかね。
佐久間:まず1つ、私ども宗教の学者じゃないので1400年前からずっと追っかけてきているわけじゃないし、根っこの部分をきちっと我々は勉強しているわけではないのですけど、1つだけ言えるのは1400年前に無くて、今あるものがたくさんあるので、常にその宗教の中で使って良いもの、または食べて良いもの、そういったもの、ハラルについての概念で言うと日々変わってきていると。そういう風に思っていただければ良いと思いますね。その中で、たとえば昔なかった遺伝子組み換えのことだったり、たとえば携帯電話の電磁波がハラムなのかハラルなのかとか。そういったことが議論されるわけですけど。やはり1番はですね、日本人も昔は宗教心あったなと思いますし、イスラム教徒の方もやっぱり経済が発展して所得が増えてくると、少しずつ外部の情報が入ってくると。少しずつ、宗教心というのは少し薄まっていく傾向にあるかなと。そんな風に思いますけど、このハラルというのはきちっと勉強していただくと、非常にこれから日本の企業にとって有効じゃないかなと、そんな風に思っています。
森辺:なるほど。ありがとうございます。じゃあ、今回お時間がそろそろ参りましたので、また次回も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
佐久間:どうも、よろしくお願いします。ありがとうございました。