東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続きどういった話を?
森辺:引き続きハラル・ジャパン協会の佐久間理事長にお越しいただきまして。前回、前々回と色々とハラルに関するお話やハラル協会に関するお話をお聞かせいただいたと思うのですけど、前回少し終盤でお話いただいたハラルにまつわる日本企業の取り組みの状況みたいな、エピソードみたいなのを、インドネシアなんかすごく大きいじゃないですか。マーケットも大きいし、今前回佐久間さんがおっしゃられていたチャイナプラスワンで2012年度ぐらいからインドネシアが急激に伸びて、またあの国は親日国で。けど9割ぐらいイスラム教徒ですよね。なので、ハラルが非常に中心になってくる国だと思うので、何かインドネシアの日系企業の取り組みの状況みたいなお話をお聞かせいただけますか?
佐久間朋宏(以下、佐久間):その前にやっぱりみなさん多分同じように思っていると思うのですけど、どうもマレーシアとインドネシアを同じイスラム圏で1つにしているようなのですけど、実は似て非なる物と。よく研究されたマーケッターの方とか事業会社の方はよくわかるのですけど、マレーシアはどちらかというと3000万人の人口に対して2000万人のイスラム教徒。1人当たりのGDPがもう1万ドルを超えるような先進国の仲間入りの企業。でもここは国の宗教がイスラム教ですので非常に厳格に運営をされていると。この辺を覚えておくと、3000万人しかいないということです。
かたやインドネシアはみなさんご存知のように2億4000万人いて、約2億人がイスラム教徒であると。ただし、1人当たりの所得は米ドルに直すと3500米ドルぐらい。まだ日本で言うと1960年から70年代ぐらいの平均的でいうと日本であると。ただし、ジャカルタだけで言うともう1万ドルをやっぱり超える、日本のものを十分買える。ただし、平均的に言うとまだまだ。そしてもう1つ、国の宗教がイスラム教じゃないので必ずしもハラルではないというところが今の特徴だと思うのですけど。
最近インドネシアからの問い合わせって私どもの協会も非常に増えていて、やはり1番のニーズがインドネシアに輸出したいというニーズがあるのですけど中々それは難しいと。どういうことかというと、世界で3番目のインドネシアに世界中の会社が輸出したいわけなのですよね。そうすると、どうしても輸出してくるとものが余ってくる。そうすると向こうが規制をかけるということになるので、日本のものだけが優先的に入るわけではないと。また、食品でいうとMMナンバーとか特殊なものがあったり、輸入枠があったり、中々難しいという事情で輸出については中々成功事例が正直言うとあまりたくさんは見受けられない。ないしは、大量にものを売っているというのを中々見受けられないのですが、こと進出、工場を作ったり現地でパートナーを見つけて販売しているところが非常に実はうまくいっている会社があるのです。
その中にまず食品だけで言うとみなさん多分分かっていると思うのですけど、もちろん味の素やヤクルト。そういうのは当たり前なのですけど、シキシマパン、PASCOだったり、そんなところはもちろんですけど、みなさん、ポカリスエットの大塚製薬分かりますよね?ポカリスエットがハラルで180億持っているのですよ。やっぱりポカリスエットをラマダン、ちょうど今年も6月28日からラマダンがはじまるのですけど、1日、昼間太陽がのぼっている時間帯は食べない、飲み食いしないわけなのです。その最初の一口目を水とナツメヤシという文化からポカリスエットとナツメヤシと。そういう文化を作ったということで、非常に大塚製薬はマーケティングにたけていて、180億ぐらいを売ったというそんな事例もあるのですね。
森辺:大塚製薬のポカリスエットともう1個別の会社ですけどリポビタンD。あれだけは本当に世界中。
佐久間:ハラル。これはハラル対応で現地化しているからやっぱり安心して飲むことができる、食べることができるというので非常に良い例だと思います。それから、パン屋さんなんかで言うと普通日本だとヤマザキパンが1番でシキシマパン、PASCOが2番という。そういう順位なのですけど、ことインドネシアで言うと逆転して、やはりPASCOの方が先に進出してシェアを築いているから、あとから来ているヤマザキパンはまだ追い越せないという。そういう部分では日本の必ずしも順位と、インドネシアの順位が一緒ではない。資生堂さん辺りも昨年ぐらいからハラル対応の化粧品を作られようとしていますし、そういった部分では日本の必ずしも順位でない部分がインドネシアで通じているということで面白いですよね。
森辺:それが世界人口の4分の1から比較したら日本の人口なんてたかだかしれているし、これから減っていくということを考えていくと番狂わせみたいなことがグローバルレベルで全然実現可能だということですよね。
佐久間:特にインドネシアは先ほど森辺さん言われた、本当に親日というところで看板が日本語表記というね。必ずしも日本人がやっていないというところが悲しい現実なのですけどね。中国、台湾、韓国の企業がやっているというケースがありますけど、でもやっぱり日本を大切に親しみのあるものとして使ってもらえる。日本が一時期英語で看板を作ったのと一緒で、日本語をそうやって使っていただけるというのは非常に嬉しいなと思う反面、我々本物の大企業であっても中小企業でも進出していくチャンスというのがこれからOEMという方式も、ハラルの営業という方式もありますから、インドネシアということにおいても、もちろんマレーシアを含めてチャンスが出てくるのではないかなと思います。
森辺:そうすると、さっきの話だとマレーシアはどちらかというと本当に厳格、国家の宗教なので厳格にハラルを、ハラルに従って運用して、なおかつ富裕層が多いわけじゃないですか。先進国入りをしてと言ってもいいと思いますけど。その中でより付加価値の高いもので、なおかつ厳格にハラルの教えに従っている、そういう商品が向くというイメージ。
佐久間:そうですね。マレーシアは今すぐの消費地であり、ハラルのものを生産するなら比較的OEMを含めて、もちろんタイという候補、シンガポールという候補もありますが、マレーシアはハラルというものについては優位性が。やっぱり40年の運用と実績、ハラル認証が出来て40年ですから、この運用の実績でマレーシアを選ばれるという優位性もあると思いますが、やっぱり消費地、コンシューマー、ローカルしたときのコンシューマーの爆発ということで考えると、インドネシアのパワー、またはバングラディシュのパワー、またはその他のエリアのイスラムのパワー。アフリカなんかにも5億人いますからね。やっぱりそういったところを含めてマーケットを考えると、必ずしもASEANだけではないけどインドネシアってのも1つ面白いところではないかと思いますね。
森辺:さっきのマレーシアとインドネシア、同じハラルでも違うのですよというのが非常に面白いなと思っていて、僕らの分野のマーケティングで言っても全く違う市場で。おっしゃる通り2億数千万のいわゆる1人当たりGDPが3500のマーケットと3000万人の1万ドルというと、全く違っていて。特に輸出ビジネスとかというとお客さんが現地適合化を商品の価格もそうですし、市場もそうですし、できないのであればマレーシアのほうが向いていますよということでマレーシアをやられるケースってのも非常にあって、インドネシアになると現地にしっかり腰を据えないと中々マスマーケットを取るってのは難しいので。
佐久間:マレーシアは輸出ということに関して言うと必ずしもバツではなくて、三角ないしは一部の商品によってはマルということがあるので、商品によってやっぱ我々ないしは森辺さんのような会社に相談をしてアドバイスをもらうというのは重要だと思います。
森辺:インドネシアで他に面白いところは?
佐久間:食品の事業ばかりだったのですけど、多分みなさんがビックリするような話だと思いますけど、食品以外の話を少ししたいと思います。マンダムってご存知ですよね?マンダムの会社が売り上げの半分、利益の6割をインドネシアのハラル事業で稼いでいるというのは多分みなさん中々知らないのです。だからマンダムイコールハラルのビジネスで儲けている会社なのですね。多分マンダムは整髪料、もちろん整髪料です。インドネシアのローカルに早くから浸透して、髪の毛につけるものもハラルですからこのハラルということをうたってより市場を取ったという。これは良い例だと思いますね。今は工場を増設して倍の生産能力にして近くの工場だとか、インドネシアの国内の需要だとか海外、インドネシアから見た国外に販売を。
森辺:輸出をね。
佐久間:輸出を増やそうと、中東も含めてね、増やそうという計画をしていますので、マンダムとか。それからみなさんの知っているようなボディーショップ。いわゆる植物性由来のもの。そういうものというのはハラル云々よりも元々認証ありきじゃくて使ってもらいやすいものなので、この植物性を大切にしている会社さんなんかは非常にインドネシアで今伸びていますね。フランスなんかのロクシタンとか、そういうところなんかも非常にシェアをとって頑張っています。こういうところは日本の化粧品、健康食品、または医療も含めた部分で僕は伸びしろがあるのではないかと思いますね。
森辺:マンダムなんてインドネシアにいると、インドネシアの企業と間違えちゃうぐらい浸透していますもんね。
佐久間:本当にすごい企業です。
森辺:10商品ぐらいで多分No.1。
佐久間:No.1です。
森辺:整髪料だけじゃなくて、マニキュアとか。
佐久間:そうなのです。爪につける、今森辺さんがおっしゃられたマニキュアとか最近化粧品にまでハラルが浸透しつつありますので、この2億4000万人を狙っていくという戦略はこれから所得も増えていますから、非常に大事じゃないかなと思います。
森辺:特に日本で健康食品を作っている会社さんとか、コスメでもいわゆる昔ながらの老舗大企業コスメティックカンパニーから、そうじゃない本当に1つの付加価値を追求しているようなベンチャー的な会社もあると思うのですけど、そういう会社なんかも全然まだまだ順狂わせのチャンスがあるということですよね。
佐久間:ただしインドネシアも多分みなさんも、リスナーの方も勉強されているのですけど、中々まだ規制が非常にあってですね。ミニ中国的な要素があるので、現地のパートナー探しとかそういったところをやらないと、こちらからラブコールを送っても中々売れるわけではないので、現地パートナー探しをやはりしっかりした進出コンサルとか現地のパートナーと組むと。そこは重要だと思います。そこは非常に重要だと思います。
森辺:あと少し製造業から離れるのですけど、インドネシアでラーメン屋さんの進出がちょっと前からすごいじゃないですか。インドネシア人が結構来て、日本で750円のラーメンが向こうで、1050円で売れているとかいうニュースを多分リスナーの方も多く耳にしていると思うのですけど、ああいうラーメン屋さんもやはりハラルをしっかり取られてやっていると、そんなイメージなのですか?
佐久間:実はこれは真逆なのですよ。九州の豚骨系のラーメンが比較的進出していますので、やっぱり豚骨ラーメンなので圧倒的にジャカルタ近郊は、富裕層は華僑ないしはカトリック系の方が多いので、彼らをまず狙いにいっていますので、どうもハラル対応というのは遅れているようです。
ただし、日本から進出している丸亀正麺。トリドールさんのようなうどんとか蕎麦のような会社は従業員を、イスラム教徒を雇うことによって朝から晩まで行列できるぐらいの。つまりうどんはそもそもハラルだろうと。それに天ぷらがあってもハラルでしょと。そんな難しいものは、ちょっとつゆぐらいだと。そういうことで従業員を、イスラム教徒を使うということでハラルということをイメージさせると。そんな戦略で非常にうまくいっていて業績も良いと聞いております。もちろんCoCo壱番屋さんもハラルのカレーで進出されたり、これから日本の企業はもっと出て行くと思うのですけど、まだまだ飲食でいうと実はハラル対応ということよりはどちらかというと今の現地のアッパー層に対しての胃袋をどう満たすかというところのマーケティングにどんどん集中しているようです、今スタートの段階は。
森辺:中華系の華僑を狙うと。
佐久間:まずスタートを狙うというところが。
森辺:なるほど。分かりました。そうしたら、今回早めなのですけども、次回インドネシア以外にまた別のイスラム圏の他の国の話なんかもぜひ引き続きお聞き出来ればと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いします。
佐久間:よろしくお願いします。ありがとうございました。