森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続き、インドネシアのお話をしていきたいと思います。
前回ちょっとお話しなかったんですけど、インドネシアの市場規模のお話をちょっとしていきたいなと思うんですけど。小売の市場規模ですね、2022年のデータになりますけど、2023年もそう変わっていないので、2022年のデータで恐縮ですが、おおよそ43兆円ぐらいですかね、今の為替レートで43~44兆円ぐらい。ASEAN6の中ではもちろん一番大きい。なぜならば人口が一番多いですから、2億7,000万ですからね。ASEANの、今度お話しますけど、フィリピンがだいたい23兆円ぐらいなので、まあまあフィリピンが半分ぐらいの市場規模。フィリピンの人口が1億強なので、そんなものですよね。1人あたりのGDP、インドネシアって4,333ドルぐらいなんですよね。ただ、これはジャカルタだけで取ると2万ドル近いとかね、そういう数字になるので、平均値で見るってあんまり意味がなくて、ASEANの場合、もう首都とそれ以外とであまりに大きな差がついているので、日本のような感覚ではなかなかちょっと見れないというところがあるので、あまり平均値の話をしても意味がないんですけど。小売市場規模としては43兆円ぐらいありますよと。
前回ね、重要なポイントとしてはハラルの承認がもう絶対ですということをお話をして、今年の2024年10月以降に小売で売られているものにハラル承認をつけるということが義務化されますよと。これが実際にどうなるかというのはね、もうASEANの場合、法規制ができてもね、それに対する罰則がどれぐらいのシリアスな度合いなのかによって、それが守られるか守られないかが決まるので。例えば罰金が安かったら、罰金織り込み済みでそれをやるみたいなね。びっくりしますよね。日本だと行政の指導で、これは駄目ですよと言ったら、もう企業は右にならえって絶対にそれはしないという。やるというのはなんかちょっといかがわしい会社というイメージを持たれるから、はっきり言ったらマイナス効果みたいな話ですけど。結構な大手企業が罰則織り込み済みでいろんなことをするというのが、これはアジア新興国市場。新興国になればなるほどそういう傾向が強いので。タイでもね、アルコール系のものはソーシャルメディアであまり、あまりというか、宣伝してはいけないんですよね、法律上ね。なんですけど、宣伝を見ることがありますと。それって罰金織り込み済みでそれをやっていたりとか、結構、自由の国タイなんていうのはあるので、ちょっとタイは特殊かもしれないですけど、特にかもしれないですけど。そういうこともあるので、ハラルはもうマストですよと。
今、ASEANで売られているものでね、後ろの表示を見てハラルマークがついていない商品なんてないですから、消費財で。だから、ハラルの承認はマストですよということをお話をして。インドネシアでハラルを取るんだったら、マレーシアも一緒にやってしまえばいいんですよね。どうせシンガポールだってハラルマークがついて売っていますから。ハラルマークがついてない商品なんて基本的にASEANで見ないので、ハラルからはもう逃げられないというふうに考えるべきかなというふうに思います。
あと、コンビニの2強問題ね、インドマレットとアルファマート。インドマレットが1万8,300店舗ぐらい、アルファマートが1万5,500店舗ぐらい、合わせて3万5,000店舗ぐらいありますから、もう圧倒的な、これは小売交渉力ですよ。どれだけすごいかということを考える、このコンビニの2強問題というのが1つあって。それ以外に5,000店舗ぐらい、コンビニに関してはもうそれ以外はほんとに桁が全然違うので、数百店とかね、サークルKで500店とか、ファミリーマートで200店とか、そういうレベルなので、基本的にはアルファマートとインドマレットというのが重要になってくる。あと、主要スーパーに関しては、元カルフールのトランスマートとかね、あと、ハイパーマートとか、スーパーインドってね、ライオンみたいなマークでたぶん皆さん見たことあると思うんですけど。あと、Helloスーパー、それからロッテ、これぐらいがだいたいスーパーの主要どころと言われていますよということですね。
もう1つが主要6島問題ということで、前回お話しましたけど、首都ジャカルタとか、スラバヤとか、バンドンがあるジャワ島。それからスマトラ島、ジャワ島の上にあるやつ、上というか、左上にあるやつがスマトラ島。ジャワ島の真上にあるのがカリマンタン島で、ジャワ島の右にあるのがバリ島ですよね、皆さん、観光でたぶん行ったことがある。ジャワ島の右上にあるのがスラウェシ島。ジャワ島から一番右、離れたところにあるのがニューギニア島、半分だけインドネシア領ですけど。こういうふうに6島に分かれているので、ディストリビューション・ネットワークをしっかり組んでいかないといけないというのが非常に重要ですねということで、いかにこのディストリビューター1社に任せて、「はい、完結」というよりかは、ディストリビューション・ネットワークがどういうふうに毛細血管まで行き届いているかということが配荷の質を上げる非常に重要なポイントになりますよということですね。
あと、これら3つのポイントの背景に大きくあるのが伝統小売のお話で、インドネシアってやっぱりまだ8割ぐらいは金額ベースで伝統小売、7~8割伝統小売というふうに考えてもらったらよろしいと思うんですよね。近代小売のほうが主要どころが4万店ぐらい、そのうち3万5,000店がインドマレットとアルファマートという中で、伝統小売の数ってどれぐらいあるのというと、447万店あるんですよね。めちゃめちゃもう多いですと。伝統小売が、じゃあ、淘汰されるのかって言うとね、もうこれは淘汰されないです、僕が思うのは。2015年からこの2020年まで伝統小売の数、ユーロモニターのデータなんかを見て、ここ5年だけでもいいですよ。ここ5年だけでも見ても、だいたい年間に1万5,000店舗から3万店舗ぐらい減っているんですよね。ごめんなさい。平均すると1万5,000店舗ぐらい減っているんですよね。でもね、447万店あると、これ…。すみません。これは3万店ですね。年間、平均すると3万店ぐらい減っているんですよと。やっぱり減っているじゃないかと。いつか淘汰されて近代小売になるんじゃないかという話なんですけど、これはね、僕はならないと思っていて。なぜならば、もう447万店あると、年間3万店減ったところで全部なくなるのに90年とか、100年近くかかるわけですよね。じゃあ、倍のスピードとか、3倍のスピードでいったって50~60年かかるっていう話なので。これはもう50~60年あるということは、なくならないのと一緒で、50~60年の間にいわゆるデジタイゼーション、DXのほうがスピードが速く進む。50年後のDXを考えてください、デジタル。そしたらもう、伝統小売が僕はデジタル武装して、もうすでに始めてますから、より便利な存在に、コンビニよりももしかしたら便利な存在になっている可能性があって、日本みたいに中央集権で、コンビニのフランチャイズ本部が決めたものを各フランチャイジー店舗が同じようにやっていくみたいな、こういう真面目な業務プロセスよりも、インドネシアの人とかASEANの人というのは、その日良ければいいと言ったらあれですけど、そんな上から決められたことをガンガン詰められて数字をやるよりも、自分たちがやりたいことをやりたいだけやれたらいいというね、こういうやっぱり民度があるので、これは中央集権よりも、それぞれ分散型で楽しくやっていきたいというほうが事業としては合っているわけですよね。そうすると、こういう国民性も相まって、そんなにそっちの方向には流れないだろうなと。あと、これは小売だけが単体で近代化なんか絶対しなくて、例えば物流、特にコンビニにとっては、こういう小売にとっては物流は重要ですから、道路のね、高速道路、日本みたいに津々浦々延びないですから。6島に分かれていて、そこをフェリーでモノを運ぶわけですよね。そういう都市計画なんかを見てみると、インドネシアの、じゃあ、ここ数十年で日本みたいに道路が整備されて、渋滞が解消されて、電気・水道・ガス、あらゆるインフラがすべての島隅々まで行き届くかと言うと、そんなことないので、やっぱりこの伝統小売というのは非常に長く、形を変えて、今は伝統と呼んでいますけど、はっきり言って50年後とかって言ったらもっとDXされた伝統小売が広がっている世界が待っているんじゃないかなというふうに思うので、伝統小売をやるということは1つの重要なポイントになってくるということになります。
なので、インドネシアのおさらいですけど、ハラルと、コンビニの2強問題、それから主要6島問題、この3つのポイントの背後には伝統小売という大きい問題があるので、これらをクリアしていくということがインドネシアでは大変重要ですよというお話でございました。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。