森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、フィリピンの市場についてお話をしていきます。対象はFMCG、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーです。B2Bの製造業の方は、皆さんご自身の事業、インダストリーに置き換えて聞いていただければなというふうに思います。
前回お話をしましたが、フィリピンの小売市場、23兆円ぐらいの市場規模で、だいたい1万店弱ぐらいの主要な近代小売に対して80万店の伝統小売がありますよという話をして。フィリピン市場で重要となるポイントは、3大小売の力、影響力が非常に強いよと、財閥系の3大小売、あと、主要等が3島に分かれているので、3島を横断するディストリビューション・ネットワークを築いていかないといけないということと、あと、伝統小売が他のASEAN以上に消費者にも業界にも行政にも地域全体で必要とされている、非常に伝統小売のヒエラルキーというか、必要性が非常に高い国であるということ、3つがあるので、この3つをバランス良くくみ取って戦略をつくっていかないといけませんよというお話をしましたねということで。
まず、この3大小売なんですけど、財閥のお話をしましたけど、フィリピンってもともとスペイン系の財閥と中華系の財閥というのがあって、もう7~8割の経済はこの財閥が占めていると言われていて、スペイン系の財閥はもう大半が勢力を失っていて、今はアヤラ財閥だけが結構目立つ存在になっていて、不動産とかをやっている、結構マンションとかね、新築のマンションを買おうとすると、メトロマニラでアヤラ財閥がやっているみたいなケースが多いですけど、そこぐらいで、ほとんどが中華系の財閥ですよと。
中華系財閥の中心はやっぱりフィリピン最大の財閥のシー財閥というね、2019年、コロナ前に、シーさんというフィリピン一の大富豪、アジアでも上位トップ10とかに入っていたと思いますけど、ヘンリー・シーさんがお亡くなりになられて、資産はそのヘンリー・シーさんの6人の子どもが引き継いで、シー家は依然としてフィリピンの大富豪なわけですけども。どれぐらいかな、シーさんは3兆円ぐらいあるんじゃないかと思いますけどもね、非常に大きい。他の財閥に比べても、頭が1つ抜きん出ていると。ここのヘンリー・シーさんが始めたのが、もともとシューマートという靴屋さんで、それがSMというスーパーになっていったという。BDOという看板、いっぱいフィリピンに、メトロマニラに行くと見ますけどね、紺色のバックに黄色い文字でBDOと書いていますけど、バンク・デ・オロという銀行なんですよね。フィリピン最大の商業銀行、それもこのシー財閥が持っていますし。あと、不動産最大手のSMプライムとかね、こういうのもシー財閥だし。あと、ファーストリテイリングが合弁でユニクロをフィリピンで展開していますけど、これもSMグループでやっているので。言ったらね、不動産も持っているし、一番良い立地の不動産の情報を早く得て、そこを自分たちで開発して、そこにSMを入れますみたいな、だから、流行らないわけがないみたいなね、そういう財閥なんですよね。またね、このヘンリー・シーさんってどういう人かって言うと、日本で言うところの松下幸之助みたいな、本田宗一郎とかね、もう尊敬されているんですよね、フィリピンの国民に。やっぱり彼は一代で富を得たことによって、フィリピンにその富をだいぶ還元したんですよね。そういうこともあって、ヘンリー・シーさんをフィリピンの人たちは誇りに思っていると。自分だけが私利私欲でお金持ちになっていったという感じのイメージはまったくないので、フィリピンが誇る大実業家みたいな、そういうイメージがありますから、当然SMの印象もいいですねということで、SMが非常に強いですよと。
あと、ロビンソンズ。ロビンソンズはね、これはルスタンズとかも確かロビンソンズが買収を何年か前に、ここ10年ぐらいの中でやっているので、ロビンソンズがあります。ここも小売、食品、航空、それから、不動産、石油、繊維、通信、なんでもやっているゴコンウェイ財閥というところで、非常に強いですよと。シー財閥ほどではないけども、大きな中華系の財閥です。ピュアゴールドだけが財閥ではないんですよね。これは実業家のルシオ・コー氏が率いていて、いわゆるタイクーンという存在かなというふうに思いますけども、そんな財閥ですと。こういったね、非常にフィリピンでも強い人たち、グループが経営をしていますから、非常に小売の交渉力が強い。スーパーマーケットの推計売上規模もピュアゴールドとSMが…。SMのほうが大きかったんだけど、最近ちょっとピュアゴールドのほうがもしかしたら売上は大きくなってしまっているかもしれませんけど。SM、ピュアゴールド、それから、ロビンソンズ、あと、ガイサノっていうところが4番手にありますけど、だいぶ下なので、近代小売、スーパーというのはそんなところ。
コンビニエンスストアもね、セブンイレブンが3,250店舗ぐらい、あと、インドネシアの、これは楽しみだと思いますけど、アルファマートが、今、1,000数百店舗ぐらいまで出店をしてきています。この辺がやっぱり1つポイントかなと。あと、ミニストップはまだ450~460店舗ぐらい。
あと、フィリピンは、これは重要な、そうだ、ポイントなんですけど、これも重要なポイントなので、3つのポイントに加えてもいいかもしれないですけど、日本よりもアメリカを見ていますということで、公用語がタガログ語と英語なわけですよね。フィリピン人は英語をしゃべりますから、ASEANで一番上手に英語をしゃべりますから。英語をしゃべるということは、情報源がやっぱり英語圏の情報源を一番多く取り入れる。アメリカのベース基地もありますし、アメリカとの歴史的な背景も長いので、基本的にはやっぱりアメリカのポップカルチャーとかが若者なんかを中心にまず英語で入ってきている。彼らのパーティーの楽しみ方とか、ドレスの着方とか、イベントのやり方とか、結構、米国の流れを継いで、それが若干フィリピンっぽくなっているみたいな感じがあるので、ASEANの中ではとってもアメリカを向いていますよと。だから、アメリカのものが一番良いと思っている。インドネシアとかはね、日本があって、韓国があってみたいなそういう流れがあって、ほかのASEANもそうですけど、タイとかもね、そこに韓国のポップカルチャーがガーッと伸びてきたので、韓国が先にいっちゃって、日本は2番手みたいな状況も一時期ありましたけども。今もあるのかもしれませんけど。でも、フィリピンはアメリカを向いていると。なので、コンビニの話からなぜアメリカの話に飛んだかと言うと、トリートとかシェルセレクトというガソリンスタンドの併設店、これが結構多いんですよ。マレーシア同様なんですけどね。
あと、忘れてはいけないのが、これはコンビニではないんですけど、ドラッグストアなんですけど、マーキュリードラッグというのがあって、これが1,000数百店舗あるんですよ。1,000数百店舗あるんですけど、結構、半分がドラッグ、半分がコンビニになっているという店舗が非常に多くて、コンビニカウントすべきだろうなというところで、このマーキュリードラッグなんかも非常に重要ですよと。
まあまあ、この3大小売の影響力がまず強いということを、ちょっと今日はそこぐらいのお話で、次はね、伝統小売のお話をしていきたいなと、あと、主要3島、伝統小売を含めた主要3島でどうやってディストリビューション・ネットワークを築いていくか。伝統小売に関しては、いろんな地域や消費者や行政から守られ、また、近代小売と伝統小売も密接な関係にあるんですよね。これは競合する関係ではなくて、むしろ共存している関係で、非常に面白い流通構造があるので、その話をしていきたいなというふうに思います。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。