森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、フィリピン市場のお話です。対象はFMCG、食品・飲料・菓子・日用品・文具等の消費財メーカーです。前回ね、3大小売の解説をしたんですかね、財閥とかタイクーンの話をして。非常にね、財閥が経済に与える影響が7~8割ということで、それは財閥が保有している小売グループ、3大小売、ここをいかに獲っていくかということがすごく重要。
輸入品棚と通常のメイン棚とあって、輸入品棚にいくら商品を置いてもね、売れる、はける、セルアウトする数がもう決まっているので、そこは全然意味ないですよと、いかにメインの棚を獲るかということはすごく重要で。やっぱり小売交渉力が非常に強いので、「良い商品です」みたいな、「日本では大きい会社です」みたいな話だけだと、なかなか最近入りにくい。15年ぐらい前までだったらね、「何でもいいから入れてくれ」みたいな話だったんですけど、日本の商品でも平気で棚落ちしますから、半年間売れなかったらね、バンバン棚から落ちていくので。リスティングフィーもね、1SKU数千円、これはモノとかメーカーによっても違うんですよね。もちろん欧米の先進的なグローバル企業はもっともっと安いし、日本企業になれば高いし。これもね、交渉次第なので、それによって変わってくるわけですけども。リスティングフィーを払ってね、最初に数百万、数千万積んでいろいろやってるのに半年売れなかったら棚落ちするって、当たり前なんですけどね、棚、スーパーの棚って常にぎちぎちに埋まっていて、何かを置くということは何かを出さないといけないので、そうしないとスペース空かないので置けないですよね。そうすると、たくさんのSKU置こうとすると、やっぱり売れるものを、バイヤーはね、当然置きたいと。リスティングフィーを取っているもののね、棚代を取っているものの、売れないものを置いていたってね、商品のあれにはつながらないので、そういう意味ではそこはシビアに見られるので、4P、マーケティング、ターゲットに対する4Pがちゃんと最適化された状態で3大小売にお金、リスティングフィーを払わないと、散々払ってやったんだけど半年で棚落ちをしたなんていうメーカーをいっぱい見てきてますからね、そこはなかなか厳しい世界ですよと。日系企業でやっぱりすごいな、立派だな、このストアカバレッジといい、近代小売におけるSKUの獲り方といい、というのはね、やっぱりグリコのポッキーはすごいなといつも思いますけどね。そんな厳しい市場であるということが1つですよね。
もう1つの、伝統小売に関してなんですけど、伝統小売はね、80万店以上あると言われていて。やっぱりフィリピンの伝統小売ね、コロナ禍のときもそうでしたけど、一番消費者にも、業界にも、行政にも守られた存在で、フィリピンから伝統小売って、これはなくならないなというのは、僕もう、確信に変わったという。もちろん伝統小売のデジタル化によってね、非常に便利な存在になるというね、そういうのはもちろんありますけど。やっぱりね、コンビニよりも便利な存在になるというのはどこかのエピソードでも過去に話してますけどね、フィリピンにおけるこの伝統小売はね、やっぱり守られていて。どういうふうに守られているかと言うと、例えばね、コロナ禍のときに、小規模事業者ローンみたいなものを伝統小売のオーナー向けに行政は散々やったんですよ。散々やって救われているしね。高利貸しとかが多いというのもあるんですけどね、フィリピンね。そういうのに金を借りてしまうと、もう回らなくなって、最後は自滅みたいな話になるので、そういう意味からもあれですけど。行政の支援が入ったということもそうですし、そもそもピュアゴールドとかが伝統小売向けのサービスを展開しているって、これは面白いですよね。日本で言うと、イオンが駄菓子屋向けの、もしくは商店街の父ちゃん母ちゃんのお店向けにサービスを提供しているみたいなね、商品を供給しているわけですよ。ピュアゴールドなんかに行くと、一般のお客さんのレジと、いわゆる伝統小売のオーナーさんのレジ、もしくは伝統小売のオーナーさんが商品を買うレーンとか、10個20個が1袋になっているとかね、小分けされるように、小分けして売れるように1パックになっていたりとか、入り数、グラム数が少なくなったものがセットになっているとか、そういうのがあって、フィリピンのピュアゴールドに行くと、このおばちゃん、なぜこんなに大量にかごを、3個もかごに大量に商品入っているって、あれはだいたい伝統小売のオーナーさんで、地域の伝統小売、向こう何軒の伝統小売のね、仕入れも一緒にやってきてくれるみたいなね、そういうケースもあるので。この構造はね、非常に面白くて。だから、近代小売で入ってないと、伝統小売で売れないんですよね。伝統小売のオーナーは必ず「ピュアゴールドで売れている?SMで売れている?」と、いかにこの3大小売で存在感を出すかということが、伝統小売に入るポイントで。これもね、我々は何回も実験しているのでね、もう分かっているんですけど、伝統小売のオーナーもね、気がいいのでね、1回頼めば半分以上の確率で置いてくれるんですよ。2回、3回頼めば80%の確率で商品を買ってくれます。ただ、それで売れなかったら敗者復活戦が難しいので、闇雲にそういうことをしないほうがいいというのは1つあって。やるときはね、小さく生んで大きく育てるというね、エリアを絞って小さくやっていく、実証実験的にね。「これ、やったけど売れなかったじゃないか」ってね、何年経ってもいまだに言われますから。また、じゃあ、「やって売れる理由は何なんだ? 前回と何が違ったんだ?」みたいなね。中途半端な値段、中途半端なグラム数、中途半端な製品で、近代小売での存在感も中途半端なまま伝統小売をやって、結局、売れないから、伝統小売にね、1回入ったものを返品受けるなんて、ちょっと汚いのでね、基本的には受けませんから。そうすると、伝統小売のオーナーからは、「もう二度と取り扱わない」と言われてしまうということなので、ここはね、4Pをちゃんとしっかり組んでからやるということが重要かなと。
フィリピンね、コンビニも少ないんですよね。ガソリンスタンド併設型、アメリカ的なので、ガソリンスタンド併設型もありますけど、でも、それでも3,500店舗とかね、全部合わせて。一番多いコンビニでもね、セブンイレブンが3,000数百店舗、500なかったと思いますけど、そんなレベルなので、タイの1万4,000店とかと比べると全然少ないわけですよね。なので、ちょっとね、なかなか伝統小売がこのままデジタル化していくと、フィリピンのコンビニももっともっと厳しいんじゃないかなと僕は思っていて。どう考えてもね、伝統小売のほうがやっぱり地域に浸透してて。最近、インドネシアのアルファマートなんかも進出してるんですよね、フィリピンに。アルファマートなんかも、コンビニが伝統小売向けのサービスを提供しているので、商品供給ね、基本的にはね、フィリピンの伝統小売は、たぶん、ASEANの中で一番最後まで生き残るというか、基本、僕は伝統小売はどの国でも生き残ると思っているので。なぜならば、デジタル化の波のスピードのほうが速いんでね。インドネシアだって447万店で、ベトナムだって60万店、タイも20万店、フィリピンも80万店、それらが衰退していくスピードよりも…。数十年かかるわけですよ、全部なくなるのにね。それよりも、デジタル化によってね、決済から仕入れから、すべてがデジタル武装してしまったときに、コンビニよりもさらい便利になるわけですよね。なので、そう考えると、僕はフィリピンの伝統小売もなくならないと思うので、非常に重要かなと思います。
今日も時間が来てしまったので、これぐらいにして、最後ね、主要3島のディストリビューション・ネットワークみたいなところの、ちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。