森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、ベトナムのお話をしていきたいなというふうに思います。対象はFMCG、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカー、文具なんかも含みますかね、になります。
ベトナムの市場ということでね、前回このVIPの市場全体のお話と、ベトナムの市場に日本の消費財メーカーが抱えている課題、この若い胃袋をどうやって獲るかというところにやっぱり大きな課題があって、つまりは伝統小売の攻略にそれはつながっているんですよと、いかに66万店の伝統小売を獲るかみたいなところにつながっていますというお話を前回したんですかね。
ベトナムの小売市場規模がおよそ23~24兆円ある中で、近代小売の数って主要どころで弊社のカウントで8,200店舗とかね、8,300店舗とかね、そういうレベルなんですよね。一方で伝統小売が66万店あって。そうすると、8,000店舗とか8,000数百店舗でどれだけ日販売ってもね、現実的な売れる数がありますから、やっぱり大したボリュームにならない。そうすると、やっぱりどうしても伝統小売へのディストリビューションというのがすごく重要になってきて。タイとか、マレーシアとか、シンガポールに比べると、やっぱり1人あたりの所得、消費者物価指数、諸々見てもやっぱりまだまだ低いのでね。そう考えてくると、結構この価格のところってすごく重要になってくるわけですよね。本当に中間層でボリュームを獲ろうということになるとね。結局、ASEAN、VIPなんかは特にそうなんですけど、先進ASEANの戦略と新興ASEANの戦略、先進ASEANというのはシンガポール、マレーシア、タイ、新興ASEANというのはベトナム、インドネシア、フィリピンですけど、これはまったく市場が違うので、首都だけ見たら近しいところはあるけども、これは全体で見たときにね、やっぱり市場が違うので、戦略を大きく変えていかないといけないということを考えると、どうしても日本のありのままの戦略をベースにということよりも、やっぱり考えていく。だいたい日本の消費財は高い。高いから近代小売が中心になる。近代小売の中でも日系のにおいのする近代小売が中心になる、例えばイオンとかね。ローカル系のね、例えばベトナムのウィンマートとか、コープマートへ行っても、結局、輸入品棚で埃をかぶっているみたいなね、こういうケースも少なくないわけですよね。ベトナムにいる日本人とか、外国人とか、富裕層だけ狙うんだったら、別の日本の地方都市を狙っていてもいいじゃない? そのほうがたぶんハードルが低いですよ、みたいなね、そういう状況でもあるので。基本的にウィンマートとか、コープマートとか、ゴーとか、メガマートとか、イオンとか、ロッテマートとか、こういうところの主要な棚に並べていくということをやりつつも、やっぱり…。あと、コンビニね、コンビニも、まだウィンになりきってないビンマートプラスとかね、サークルK…。といっても、もうビンマートプラスで3,000店舗ぐらいで、コンビニはもうほとんど数百店舗とかね、100店舗200店舗とか、そういうレベルなので、あまりあれじゃないかもしれないですけど、でも、地域の伝統小売に与える影響というのはあるので、ある程度近代小売をやりつつも、伝統小売をどうやって獲っていくかということはすごく重要で。
この伝統小売をつくっていく上でね、ベトナムの大きな戦略を組み立てるときに考えなきゃいけないのが、1つが南北問題というのを考えていかなきゃいけなくて。首都は北のハノイなんですよね。ハノイから南のホーチミンまでだいたい1,600キロぐらいあるわけですよね。このダナンって真ん中にあるんですけど、リゾート地ですけど、その上のフエというところに高い山脈があって、そこを越えるのが昔から大変でね。僕はこれを道路でずっと車で走ったこともありますけど、そんなに道も良くない中で、南から北にとか、北から南って、結構大変なんですよ。商品を運ぶだけでも大変だし、コストも上がるしね。そういう物理的な距離の問題と。あと、南北戦争の名残りというかね、北の人間が南で活躍するのと、南の人間が北で活躍するのと、やっぱり前者のほうがまだマシで。勝ったのは北なので、北が強い影響力がある。一方で、南のほうが市場としては大きいんですよ、ホーチミンのほうがね。でも、南の例えばディストリビューターが北で成功するとかっていうのはすごく難しくて、北は北、南は南でやっぱりディストリビューターも使い分けないといけないし。セールスだってね、南出身の人間を北でセールスさせてもあまり効果が出ないけど、南でセールスさせたら効果が出るとかっていうこともあるので、そういうことも考えていかないといけない。南北問題が1つありますよと。市場的には、5割が消費財メーカー、だいたいホーチミン、カントー周辺のこの南の下の部分で、上がね、北がだいたい3割で、ダナンで10%、その他で10%みたいな、こういう構成なので、どこから先にやりますかっていうことは考えていかないといけない。僕は、南、ホーチミンから下を先にやるっていうので良いと思うんですよね。
あと、伝統小売の66万店の攻略をする上ではね、ディストリビューション・ネットワークをつくっていかないといけないんだけども、ディストリビューターがセールス機能を持っていないということが結構最大の難儀なポイントになっていてね、消費財メーカーの。つまりはどういうことかと言うと、ディストリビューターというとセールスをするのが一番の仕事で、運んだりとか、納品したりとかっていうのは別に物流会社がやったらいいじゃんとかっていうのが。日本だってそうなんですけど。ベトナムで言うところのディストリビューターって、ほとんどが佐川とかヤマトみたいな、あんなにきれいじゃないですけども、いわゆる小さなストッキスト、インドのストッキストみたいなのに似ているかもしれないですけど、いわゆる運ぶのが仕事で、セールスするのはメーカーの仕事だと思っているわけですよ。もちろんセールス機能を持っているディストリビューターがないということではないと。いくつか当然あって、大手のところは持っていますよね。PGがずっと使っているとか、ネスレが使っているとかね、「北のプータイ、南のメサ」と言われるようなね、2強の大きなディストリビューターもあるので、そういうところは持っていますと。ただ、じゃあ、そんな大きなところがね、日本の消費財メーカーが行ってうまくいくのかって言うと、僕は必ずしもそうじゃないと思っていて。結局、こういう大きな欧米の先進グローバル企業と付き合っているところというのは、欧米先進グローバル企業はね、「ベトナム全市場を獲るんです。シェア2割3割獲るんです」ということが戦略の軸になっているので、投資も相当やるわけですよね、プロモーション投資も。なので、人も出す、お金も出す、口も出すということで全部出す中で、「取りあえずやってみてください。うまくいったらちょっとずつ出していきます」みたいなスタンスで関わっていくんだとすると、まずもってやっぱりうまくいかない。なぜならば、彼らはもっと重要なクライアントがいるので、そんなスタンスで来るようなお客さんだと今だと断られてしまうかもしれない。仮にやってくれたとしても、やっぱりうまくいかなくて、「プロモーションフィーがないからだ」とか、「なんとかが、人がいないからだ」とか、「セールスをもっとやってくれ」とか、そういう話になってしまうので。でかいディストリビューターとやるということはね、彼らが期待する想定の売上とか利益に見合ったビジネス、見合った事業をやっぱりやっていかないとうまくいかないですよね。まだ導入期で小さなビジネスであれば、やっぱり中堅規模ぐらいのところをつかまえてやっていく。エリアも絞る。絞っていくということはすごい重要で、「ホーチミンの何区と何区しかやりません。そして、何区と何区に強いディストリビューターとしかやりません」みたいなね、それぐらい絞って絞ってやっていくということがすごく重要で。セールスはやっぱりね、なんだかんだね、結局、自分たちで回すしかないので、非常に難しいですよね。でも、うまく探せばね、中堅でもね、セールスあれなところもあるかもしれないし。輸出でやっている場合とね、現地生産・現地販売でやっている場合でも、現産している場合は、もう自分たちでセールスをマネージしてやっていくしかない。たぶんこれが一番の早道なんですよね。ものすごい大変ですけどもね、雇っては辞めて、雇っては辞めて、ということを繰り返しながら、徐々にノウハウを蓄積して、蓄積したと思ったら駐在員が帰任してしまって、またノウハウが薄れて、みたいなことをやっていくわけですけども。でも、たぶんそういう方法が唯一の方法なんだろうなというふうに。輸出の場合は、それなりにね、輸出でもセールスをディストリビューターに当て込んでいくという方法はいくつかあるので、また弊社のセミナーなんかでそんな話もできたらと思いますけど。そんなことをやりながらディストリビューション・チャネルをつくっていくというのがベトナムですかね。
詰め込んでしまって2回で終わらせてしまいましたけど。すみません、だいぶ時間オーバーしてしまいましたけども、ベトナムは以上にしていきたいなというふうに思います。1月21日に、ベトナム、インドネシア、フィリピン市場セミナーをやっていますので、ちょっとこの放送がそのあとになってしまったらあれですけど、これからも弊社のSPYDERセミナーで詳しく解説をしていきますので、ご興味ある方は弊社のホームページから、この番組の概要欄からも見れるようになっていますので見てください。じゃあ、次回ね、またインドネシアのお話をしたいなというふうに思います。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。