森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は何のお話をしようかなということで…。
先日、とある方とお話していたときに、とある会社の経営者に、経営陣の方に、「森辺さん、新興国事業ってどうしたら成功しますかね」という漠然とした会話をしていて。僕は、いろんな観点でどうしたら成功するのかってお話ができると思うんですよね。これは10ぐらいの、たぶん重要な観点があって、その観点で細かくお話をしていくということはもちろん1つあると思うんですけど。でも、じゃあ、どれか1つ根底となるものの大前提の話をしていくと、やっぱりシェアの低い企業とシェアの高い企業の根本的な違いって、情報の解像度と粒度と鮮度、これがやっぱりシェアの高い企業は良いですよね。一方で、シェアの低い企業というのはそれが悪い。これは、僕も研究者じゃないので、統計を取ってきたかと言うとそうではないし、その要因を研究してきたかと言うとそうではないけども、でも、自分の25年近いキャリアの中で何千社という企業とお話をしてきてね、何千社という企業をご支援してきて、その中でやっぱり感じるのは、シェアの高い企業は総じてやっぱり情報をしっかり持っているというね、情報収集にしっかりとお金が使える、投資ができる、予算が割ける、こういう企業はやっぱり強いですよね。
10年前の課題をいまだに別の担当者が同じ課題を言っている企業というのはね、やっぱり情報収集が、何だろうな、お金をかけずになんとか社内でやろう、やらせようと言ったらいいのかな、そういう風土、文化なんですよね、上がね。現場は情報が必要なので、血眼になって情報を収集しに行きたいですよね。だって、自分たちがやるのにね、情報がなかったら勝てないじゃないですか。でも、自分たちで情報収集してもやっぱり限界があるので、われわれのような専門家に情報収集の依頼をお願いすると。もちろん予算をつけたいわけですけども、その予算がね、上に言っても「そんなもの自分でやれ」みたいな。いや、本当にあるんですよ。大きなね、何千億の企業でも、そういうの全然あって。さすがに1兆円を超えてくるとそういう企業はないですけど、数千億前半とかって言うとね。後半もないですかね。数千億円の後半もないですけど、数千億円前半とかって言うと全然ある。数百億なんかもう、めちゃめちゃありますから。1千億前後の会社なんてめちゃめちゃあるので。そういう、そんなことしたことないし、そんなふうに何かを組み立てたことがないわけですよね。なぜそうかと言うと、つまりはやっぱり国内重視でやってきたという歴史が1つあって、国内でそんな新たに情報収集なんて要らないじゃないですか。市場環境、競争環境、ある程度分かっているので、何か収集するって、B2Cの会社が消費者の需要度調査とか認知度調査をするみたいな、そういうレベルの話で、戦略を組み立てるための情報収集なんてね、まず国内だとやらないので、国内がメインの企業は、特に海外の場合、情報収集のクセ付けがね、調査をする、調査にお金を出すということがやっぱりできてないんですよね。
あと、海外と言っても欧米が中心であったとかね、あと、生産拠点として海外展開をしているという企業、マーケットとしてというよりかは生産拠点。確かに海外売上比率もあるんだけども、買ってる先は日系ですとか、国内でそもそも商談が完了しているとか、もしくはその企業しかつくれないからとか、その企業から買うことがもう決まっているので、他社と戦ってとか、そういう状況になく売れているケースというのがあるわけですよね。特にB2Bなんかはあって。そうすると、当然、調査なんていうことは出てこないので、やっぱりそこがね、特にB2Bは多いんじゃないかなというふうに思うんですよね。
まず情報。やっぱり情報がないと戦えない。この番組でもね、本当に最近それをよく思うのでね、繰り返ししてますけども、それが1つ目の。何か決めるという立場の人が決められないというのは、やっぱり情報がないからなんですよね。勝ち筋が見えないからそっちに決められないわけですよ。見えたらね、誰だって決められるんですよね、これはね。日本企業がね、判断が遅いとよく言うじゃないですか。僕ね、これは決して日本企業の、日本人の判断力が低いなんていうことはまったく思ってなくて、情報収集力が低いから判断が結果として遅くなる、低くなるというだけの話だと思ってるんですよ。同じ人間でね、なぜ先進的なグローバル企業の判断が早くてね、日本企業が判断が遅いのかって、これだけ優秀な人たちが、これだけ優秀な企業を経営していて、判断が遅いなんていうことはなくて、今まで判断し続けてきているわけですよね、日本企業はね。それは、なぜならば情報がある領域の判断をし続けてきて勝ち続けてきているわけですから、決して日本企業は遅くなくて。なぜ遅いのか、なぜ判断できないのかと言ったら、やっぱりそれはその当該領域、ここで言うところの新興国市場における競争環境、特に競争環境ですね、これに関するやっぱり情報が少ないから判断すべき人が判断できないという悪循環を生んでいるので。シェアを新興国、アジア新興国で上げたかったら、もう情報収集しかないですよね。インプットが増えれば、アウトプット、戦略アウトプットは必ず上がりますから。この戦略仮説アウトプットが高度であれば高度であるほど実践したときの誤差が少なく済みますから、シェアを上げるというアウトカムは高まってくるという、こういう構造ですから、情報収集ですよという話をその役員の方にしたという、そんな話でございました。「なるほど」と、「じゃあ、調査やるよ。森辺君」と言ってくれてましたけどもね。そんなお話でございます。
それでは皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。