森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺一樹です。今日は、前回ね、とある会社の役員さんから、「どうしたらアジア新興国の事業がうまくいきますか」と、「うまくいかない企業とうまくいっている企業の差は何ですか」という質問を受けて、そのお話をしたんですけどもね。それを第1弾として、今日は第2弾ということでね、もう1つね、その方とお話したことがあったので、そのお話をちょっと今日はしたいなと思うんですけど。
前回ね、情報の解像度と粒度と鮮度ですよという話をしたと思うんですよね。それがやっぱり良いといろんな判断が早くできるので、勝ち筋が見えれば誰だって判断するので、日本企業が判断が遅いというのは、決して判断そのものが遅いんじゃなくて、情報がないんですよと。シェアの低い企業とシェアの高い企業の持っている情報を見比べてみるとね、僕が今までのキャリアの中で見てきた何千社という会社を比べるとね、もう全然、100倍ぐらい違うという話をしましたと。
もう1つは、やっぱりマーケティングを自社が主導してやるということがものすごく重要で。一方でね、もう真逆の対極のお話で、マーケティングを完全に任せるというね、この2つの考え方があるんですけど。まずね、大手は、結論から言うとね、マーケティングを完全に自前で、自社中心でやっていくというのが絶対に必要で。シェアの高い企業というのは大手が多いんですよね。これら大手のシェアのアジア新興国市場でシェアの高い企業の中身を開いて見てみると、マーケティングの主軸は全部自社、自社がマーケティングをすべて掌握した上で部分的に他社を活用しているというね、こういうケースが多いわけですよね。いわゆるこの領域に関してはここが専門家なのでここに委ねるとかね、あと、この領域に関してはディストリビューターに任せるとか。でも、それは任せてるんだけど、モニタリングだけはしっかりしているんですよね。KPIを決めて、こことここのKPIに関しては収集をしながら、状況はモニタリングをしっかりしていくと。自分たちの不得意領域に関しては、完全に任せるというよりかはね、大枠で把握をしながら不得意だから任せるというね、任せたとしてもそうですよね。シェアの低い企業というのは、全部任せると。つくるのは自分たちでやるけど、売るのはよく分からない、だから、任せますみたいな、ディストリビューターに丸投げです。万に一つうまくいったらいいですけど。でもね、その万に一つうまくいくというのはね、サステナブルじゃないんですよね。ある一定の売上規模まで来ると、そこでコンフリクトが起きて止まってしまうんですよ。ここで初めてメーカーとディストリビューターのコンフリクトが表面化して、うまくいかない。もっと成長したメーカー、このままを維持して利益率を高めていきたいディストリビューターみたいなね、こんな話はよくある。合弁もそうですよね。合弁の話なんて、日本企業とね、合弁先の企業の生産拠点を活用したいとかね、生産設備の投資を半分ずつにしたいと。そして、向こうがすでに持っている販路を活用したいみたいな、こんな理由で組んでいくわけですよね。蓋を開いてみたら、販売に関してはもう完全なる丸投げ。マーケティングが全部丸投げになるわけですよね。こんな例でうまくいっている会社があるんだったら教えてほしい。何かしら問題をやっぱり抱えている。欧米の先進グローバル企業でそんなことをしている例というのはないので、基本的には自前。
ウィンウィンの考え方が、僕、違うと思うんですよね。ウィンウィンというのは、僕はあまり好きな言葉じゃないんですけどね。あり得ないんですよね。永続的にウィンウィンなんていうのはあり得なくて。抑止力にも似ているのかもしれないですけども、常にお互いがお互いを必要とする状況をつくり続けられれば、それは長くウィンウィンの状況が続くんですけど、日本企業の場合は、1回がっつり組んでやりましょう、ウィンウィンでと言ったら、感情論の世界でウィンウィンが続いていくようなね、ファンタジーがここにどうしても出てきてしまって。実態がそうではないと。表面的にはウィンウィンなんだけども、華僑の人たちとウィンウィンで事業をやるときに、やっぱり銭金の勘定なしにウィンウィンがずっと続くなんていうのはあり得ないので。ここはね、向こうもものすごく緻密に秤にかけてるから、こっちもやっぱり向こうがウィンウィンと感じてくれるためのことをし続けていかないといけない。そういう意味での任せるなので。話を戻すと、やっぱり主軸を自分たちに置く、マーケティングの主導を自分たちで取るということはすごく重要。これは1社の例外もなく、シェアの高い企業はマーケティングの主導を自分たちでしっかり主導しているというね、主軸をしっかり自分たちで持っていると。その上で誰と組むとか、その上で誰を使うとか、こういうケースが非常に多いですよね。だから、われわれのようなコンサル担当の活用の仕方も上手ですよね。この領域に関しては大枠では分かっているけども、中身は分かってない、スカスカですと。じゃあ、使おうと、SPYDERを使おうと。それで、部分的に任せていくというね。なので、主軸をね、大企業は自分たちで取るというのが1つ重要かなと。
じゃあ、中堅中小企業はどうですかと言ったときに、自分たちで主軸を取ろうと思ってもね、それだけの経営資源が社内にないというケースというのがやっぱりあって。特に人。そうだとしたら、もうその部分を完全に任せる、海外事業部を、そのものをもうアウトソーシングする、自分たちで海外事業部を引き入れるリーダーも社内にいない状態で、どうやって優秀な海外事業部員を雇うんだ? そんなことを諸々考えていくと、その部分をがぼっと外に出すというのも、僕は1つの考え方だと思うので、うちの2割のね、中小企業のお客さんいますけど、そういうかたちでお付き合いをしている、そして、自分たちがやってきたよりもはるかに速いスピードで海外売上比率が上がっているというね、こういう事例がたくさんあるので、それも1つ考え方だと思うんですよね。
でも、最終的にその会社が大きくなっていった段階ではやっぱり自前で主軸を握っていくということはすごく重要なので。ただ、そもそも経営資源がないのに主軸を握るって、マーケティングを主導でやるってね、これは物理的に無理なのでね、それは段階を経てっていう話になると思うんですけど。でも、大企業はやっぱり、とにかく主導するということが僕は重要だなと思うので、シェアの低い企業とシェアの高い企業の絶対的な差をお話するならば、シェアの高い企業というのはマーケティングを主導していると。マーケティングを、じゃあ、主導するためには何が必要かって、前回の話で、情報なんですよ。情報のない会社がマーケティングを主導できない、競争環境や市場環境を知らない会社はマーケティングを主導できないので。だから、調査が重要だと。なので、彼らはそれだけ調査に投資をするというね、こういう構造になっていますから、ぜひ参考にしてみていただければと思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。